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「不登校」と向き合う ⑴|教育特論②

前回より、シリーズ「教育特論」がよもぎ氏と私・Akiの2名によりスタートした。おとな研究所では従来の「教育」カテゴリーでは教育全般に関する事柄や時事記事を取り扱ってきたが、このシリーズでは日本の教育の現状の問題点をあぶりだすと同時に、日本がどのような教育改革をするべきか模索するシリーズにしていく。

私・Akiは、このシリーズで今後しばらく「不登校」問題を取り扱っていく。

教育について考える際、この不登校を問題解決の基軸とするべきだと考えている。様々な理由で学校に行かない人、行けない人にどのようなサポートをしているのか、どのようなサポートができるのかをしっかりと考えていく必要がある。

今回は日本における不登校とその現状について取り扱っていこうと思う。

不登校の「定義」に関する問題点

現状を知っていく前に、「不登校」の定義と、それを取り巻く事情を理解する必要がある。

我が国においては「不登校」について、以下のように定義している。

上の定義は、文部科学省の初等中等教育局長の諮問機関である「不登校に関する調査研究協力者会議」が定めたものである。

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この機関は2016年に公布された「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律(教育機会確保法)」に基づいて設置されたもので、不登校児童生徒の社会的自立を支援する観点から、

  • ①不登校児童生徒の実情の把握・分析
  • ②学校における不登校児童生徒への支援の現状と改善方策
  • ③学校外における不登校児童生徒への支援の現状と改善方策
  • ④その他不登校に関連する施策の現状と課題

について調査研究を行う役割を与えられた。

不登校政策の変遷については次回以降取り扱っていこうと思う。今回はこの定義にスポットライトを当てたい。

とはいっても、この本文については何の異論もないと思う。問題は「年間30日以上の欠席」という定義だ。この定義について、筆者は大いに疑問を持っている。この定義に基づく調査が実態に即しているとは言い難いからだ。

そもそも、「不登校」は「欠席日数」のみを材料とするべきではない。遅刻して登校するケース、早退するケース、登校するが保健室などで休息し教室で授業を受けないケースなどがあるためだ。

公益財団法人・日本財団が、これらのケースを分類している。本記事でも、この分類を参照したい。

上の分類の中で、文科省定義の「不登校」は①-1だ。①-2は30日に満たない欠席である。また「教室外登校」というケースは校門、保健室、校長室、教員室、図書館などには行くものの、所属学級の教室にはいかないというもの。

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ほかに、教室で過ごすが早退や遅刻などで授業に参加する時間が少ない「部分登校」、基本的には教室で過ごすが授業に積極的な姿勢を持たない「仮面登校」がある。この「仮面登校」には、教室にいるものの授業を受けず参加しない「授業不参加型」と、基本的に授業は受けるものの、本心では学校・授業に行きたくない、嫌だと感じている「授業参加型」の二つがある。

単に「不登校」といっても、個々に様々な状況があることがここからもわかるだろう。

これらの状況にある生徒が周りにいた場合、「不登校」だと認識する人も多いだろう。しかし、国の統計では不登校とされない。実態を反映していないデータに基づいた政策が教育機会の平等化に役立つのか、という大きな疑問が残らざるを得ないのではないだろうか。

日本財団ではこれら「不登校傾向にある子ども」を含めた統計を実施している。その結果が以下だ。

中学生に限定したデータではあるものの、文科省調査と比較するとその差は歴然だろう。実に33万人が「不登校傾向にある子ども」であることが明らかになっているのだ。これに文科省定義の「不登校の子ども」を足すと、総数(平成30年度時点の中学生)の13%にも上る。教育政策を考えるうえで見過ごすことのできない数字だといえるだろう。

次の項では不登校の子どもの分類について述べるが、この「不登校」が文科省の定義に基づく「不登校」であるということ、その他にも「不登校傾向の子ども」がいるということを知っていていただきたく思う。

「不登校」の子どもの分析

不登校の児童が増えている、ということは盛んに言われているが、実態がどのようなものなのだろうか。

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上の表からもわかるように、割合は圧倒的に中学生が多い。ただ、増加割合は小学生が群を抜いている。今後は小学校における対応が特に課題になるだろう。

学年別データを見ていくと、その状況はよりはっきりする。中学校3年間が大半を占めており、小学校は学年が上がるにつれ増え、高校は学年が上がるにつれて減っている。また単位制高校が多いことにも注目が必要だ。

さらに上が、不登校になったきっかけだ。要因を「学生生活」「家庭生活」に大別したうえで、学校生活の中身を小さな分類で分けたものである。「不登校」というと、どうしても「いじめ」や「人間関係」を想起しがちな面もあるが、要員の大部分は家庭生活や学業不振によるものであるということがある。

特に小学校においては家庭生活が半数を占めている。中学校ではいじめ、学業不振、家庭生活がほぼ同程度で、高校に入ると進路にかかわる不安や入学にかかわる不安が急増していることも注目できる。

こうしたデータを見ていくと、不登校の実情についてより視覚的にわかると思う。こうした実態に対応するためどのような政が必要なのかについては次回解説していこうと思う。

「不登校」は教育機会の平等・社会における学校教育の役割など、様々な観点で非常に重要な分野となる。今後もおとな研究所の記事を含め、注目をいただければ幸いだ。

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