「こども家庭庁」への名称変更を絶対に認めてはいけない理由 -こども政策特集【1】

 自民党政治の最も良くない部分が出ている。「保守派の票は固いのだから、配慮しておこう」「どうせ国会で同じ議論をするんだから、先に折れておこう」の繰り返しだ。守られるべき権利が守られず、ないがしろにされる人が出るだけなのである。

 本稿では政府与党が新設を目指す「こども庁」の概要と、同庁の「こども家庭庁」への名称変更が行われていること、そしてそれが絶対に行われてはいけない理由について解説していく。

もともとは「子ども家庭庁」だった

 設置の議論は選挙のたびに行われてきた。2009年の民主党政権交代以来、「子ども家庭省」などの呼称で各党が公約として掲げていたのである。だが、具体的な議論には入ること無く、「選挙の際のお題目」という位置づけにすらなっていた。

 与党自民党の有志議員が「Children First の子ども行政のあり方勉強会」を立ち上げ、その検討に入ったのは今年初頭のことである。中心になったのは自見はなこ参議院議員と山田太郎参議院議員。有識者を招いての勉強会、子供・若者や教員など当事者へのヒヤリングなどを通して、2月から断続的に開催していた。

 その中でも当初検討されていた名称は「子ども家庭庁」だったと山田氏は語る。

もともとは「子ども家庭庁」という議論でしたが、勉強会で虐待サバイバーの方から話を聞いた際に「家庭という言葉に傷つく」と言われたのです。虐待を受けていたり、両親が亡くなられたりしている子どもたちもいる。そうした子どもたちに配慮すべきだというのが大きな理由です。

さらに、幼い子どもでも自分たちを守ってくれるところなんだとわかってもらえるように、象徴的な意味も込めて子どもの「子」の字もひらがなにしました。

<スポンサー>
「名称はこども庁に」仕掛け人の政務官も異議 「ギリギリまでやる」|朝日新聞

同勉強会では、「第6回 虐待と「日本版DBS」について」に虐待サバイバーとして知られる風間暁氏を招く。(日本版DBSについては弊所で後日記事を更新する予定だ)

 公表されている資料で、たしかに「こども庁」への名称変更が提案されていた。

 内容については後ほど言及するとして、これ以降この勉強会では「こども庁」をベースに議論が進んでいく。様々な取りまとめの結果として、3月と5月に政府への要望書提出が実現した。当時の菅義偉首相も前向きな姿勢を示したことから、党内にPTが発足。政府・内閣府にも7月に「こども政策の推進に係る作業部会」が新設され、また9月には「こども政策の推進に係る有識者会議」が置かれて政府主導の検討・ヒヤリングが行われる運びとなった。

 衆院選では「子ども家庭庁」設置を公明党が公約に掲げたほか、立憲民主党も「自分たちが本家だ」として公約に掲げる。また自民党も「子供のための政策のあり方を子供の視点、子供の目線で抜本的に見直し、常に子供を真ん中に据えた『こどもまんなか』社会を目指します」「社会全体で子供の誕生・成長を支えるとともに、虐待や貧困などに対応する持続可能で誰一人取り残すことがない育成環境を整備する」という内容で盛り込んだ。

 そして有識者会議での検討の結果、先月末から今月初旬にかけて、「こども庁」の骨格が示されたのである。

「こども庁」創設の意義と中身

 そもそもこども庁は、厚労省・文科省・内閣府と法務省や警察等の刑事機関に類似のこども政策部署が存在する「縦割り行政」を撤廃して関係部署を統合し、その施策を一元的に行うことを目的としていた。そのため、個別政策はもちろんだが、その組織設計により力点が置かれたことに留意する必要がある。

 また同時に、施策の上では「命」に係る問題や、育ちの「環境」整備が重視されることとされた。こうした骨格となる要素に肉付けする形で、今月の「基本方針」が策定されたと考えていいだろう。

<スポンサー>

 ①こどもの視点、子育て当事者の視点 ②地方自治体との連携強化 ③NPOをはじめとする市民社会との積極的な対話・連携・協働 を基本姿勢とし、内閣総理大臣直属の機関として「内閣府の外局」とされた。各関係省庁への勧告権を持つ専任の特命担当大臣が置かれるほか、事務方トップにこども庁長官が置かれる。また既存の部署統合・移管による定員を大幅に上回る登用を、民間や地方から積極的に行うとした。

 内部は「企画立案・総合調整部門」「成育部門」「支援部門」に分けられ、後者2つで行っていく個別の支援策を、前者で調整していくという運営をとる。

 新規や発展の政策課題としては、未就園児対策や認定こども園の事務、児童館やこども食堂、学童などの子供の居場所づくり、こどもの安全と貧困対策、自立支援なども含まれる。こうした施策は、家庭と教育機関、地域、行政が一体となって取り組むべき課題であり、こども庁はその総合調整と統計管理や情報発信を役割としているというわけなのだ。

 さらに今月に入ってからは、勉強会の頃から検討されていたいじめ防止・不登校支援についても議題に上り、こうした事柄も所掌事務となることが決まっている。(いじめ防止政策とその問題点についても後日取り扱う。)

 政府案では2023年度の早期設置を目指すとしており、財源の議論も含めて来年の通常国会から早速議論が行われ、設置前から実現可能なことを進めていくという。

「こども家庭庁」と改称することの問題点

 以上の基本方針原案が示されたのは今月2日のことだったが、15日になって急転直下、「こども家庭庁」への改称が一斉に報じられた。特に大手メディアは「保守派への配慮」「公明党への配慮」としている。

 後者はいいだろう。衆院選の際に同党が「子ども家庭庁」という名称で公約に掲げていたことはすでに述べたし、立憲民主党も「子ども家庭省」を提唱していたのだから、仮に自民党が「こども庁」でまとまっても、国会で同じ議論が行われることを嫌ったものと見られる。

<スポンサー>

 問題は前者だ。「保守派」とは一体誰を指すのか。

党内の保守派には「家庭」を重視する議員もいる。出席した山谷えり子・元拉致問題担当相は「『家庭』が入って良かった。家庭的なつながりのなかで子どもは育っていく」と語った。木原稔・元首相補佐官は「(名称変更に関して)『伝統的家族観を重視する自民党保守派に配慮』という報道があるが、保守とかリベラルとかいう話ではない」と話した。

「こども家庭庁」への修正、自民が了承 「こども庁」支持する意見も|朝日新聞

 山谷氏の「家庭的なつながりのなかで子どもは育っていく」という見方が、こども庁設置の理念からかけ離れていることは言うまでもないだろう。様々な事情により「家庭」で育たず養護施設で育った子や、暴力・虐待で「家庭」を居場所とすることができない子は決して少なくなく、むしろそうした子たちへの支援こそが「こども庁」の中心的な役割だ。明らかにその配慮が欠如している。虐待やいじめの被害に合うこどもを増やさないためには、「こども」に主体的な権利があることが大前提となるのである。

 「こども」と「家庭」がセットであるという見方そのものには、そうした事情がなく家庭で育つこどもへの支援にも障壁となる。先述のように、予期せぬトラブルや成育環境は家庭だけでなく、学校や行政と様々な団体、地域社会が一体となって見守るべきものだ。「子供のことは家庭の問題」と押し込む意図も透けて見える。

先出の風間暁氏は記事で抗議している。

失望です。子どもたちをはじめ、当事者や専門家の意見を聞かず、大人、それも政治家だけがいる部屋で「こども庁」から「こども家庭庁」に変える話があっさりと決まってしまうのですから。

もし、こども庁から変える理由が、伝統的家族観を重視する保守派への配慮なら、あまりに横暴です。こども庁という名前そのものが、家庭と分けて、子どもという個人を尊重する大人や社会からのメッセージだと思っていました。子どもと保護者は別々の人格です。

<スポンサー>
地獄だった、から…「こども庁」唱えた女性、「家庭」の2文字に失望|朝日新聞

 また俳優の高知東生氏もTwitter上で批判。

 無論、議論の仕掛け人である自見・山本両参議院議員も反対の意思を示している。

 議論の開始時こそ、その実現性や役割が疑問視されていたが、丁寧な議論の成果がようやく出ようとしているタイミングでの名称変更に、落胆の声は小さくない。なおたちが悪いのは、野党立憲民主党も「家庭」の文字を入れる側にいることだ。その妥当性は、改めて各党が考えるべき事柄だろう。「家庭を居場所にできない子どもへの配慮」以上に、虐待の現実を考えれば事態は深刻だ。

署名:家庭単位じゃなく、子ども個人に目を向けてほしい!再度「こども庁」に名称変更を!

<スポンサー>

 年内に投稿予定のこのシリーズでは、「こども家庭庁」で政策課題とされている事柄を解説していく。

 

フォロー・いいね・チャンネル登録での
ご支援よろしくお願いします!

おとな研の”今”を知ろう!

 

<スポンサー>

清水 あきひとおとな研究所 編集長

投稿者プロフィール

ライターページ
おとな研究所 編集長
趣味は短歌、動画編集。不登校経験あり。

この著者の最新の記事

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

コメントするためには、 ログイン してください。

あなたへのおすすめ



ピックアップ記事

  1. 登録されている記事はございません。

スポンサー







Twitter・FaceBook

公式チャンネル

有料コンテンツサイト

スポンサー




スマホでもおとな研

スポンサー




ページ上部へ戻る