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【9月入学断念】早急に次なる一手を!

物議を醸した9月入学問題。安倍総理は昨日、自民公明両党からの提言書を受けて来年からの導入を断念した。一斉休校以降、学びの遅れを取り戻すべく浮上したが僅か2か月で立ち消えに。政府はコロナ感染の第二波に備え検討は続ける考えであるが、これからの導入はほぼ不可能であろう。

今回は見送りが決定的になったことを受け、改めて浪人生である私の視点からこの問題に対する所感を寄稿する。前回と内容が被る所も多いが、バージョンアップ版としてご覧頂ければと思う。

現状での見送りは当然、疑問点がいまだに残る

九月入学導入ならば学校行事や部活動などの失われた大切な時間を取り戻すことが可能だ。さらに一部学校で行われる「8時間授業・夏季冬季休暇の大幅削減」で学生への大幅負担増を阻むことが可能であり学生目線で検討すれば有用な効果を生み出すことは言うまでもない。

ただしそれだけで解決しないのがこの九月入学問題だ。先週私が寄稿した記事でも触れたが学校の在学期間が延びる事に伴い莫大な家庭負担が生じる。文科省の試算では3兆9000億円に上るとされる。内訳は以下の通りだ。

小学校 約13万4000円 中学校 約20万4000円

高校 (公立)約19万1000円 (私立)約40万4000円

大学 (国立)約39万3000円 (私立)約58万2000円

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これでは経済的に困窮する世帯では大きな打撃を受ける。

もちろん全額公費負担になれば私も9月入学導入に異論はない。ただ、そこの負担がどうなるのか。私の確認不足なだけであるかもしれないが賛成を唱える政党や議員、各地域の首長からも明確な説明がなされていない。

課題は他にも生じる。待機児童の急増や、卒業が半年遅れることによる一部企業等での労働力不足など。影響は教育界だけにとどまらないことから各機関との調整や世論の納得が必要だ。

世論の反応も変化が見られる。先週の産経世論調査によると、賛成が5月頭と比較して14%も減少し38%。反対が50%を超え、賛否が僅か1ヶ月足らずで逆転した。9月入学における問題点が浮き彫りになり、反対派が増加したのだろう。

早期導入に難色を示し、早期の九月入学に妥当性なしと結論付けた自民・公明両党の提言を一定は評価したい。ただし、先週の記事でも投稿した通り、上記問題を解決できぬまま見送りに至ったのには政府の責任もある。これら(特に追加家庭負担の公費負担等)を解決した上で9月入学の導入がベストであった。

元大阪市長の橋下徹氏が主張するような「個人能力主義」を根本とする飛び級制度の導入や学習進度別のクラス編成などの大改革を伴う入学制度・時期の多様化という提案もある。もちろん大賛成だ。慎重な議論を踏まえ、世論の合意を受けることができる事を期待する。

では次は「学期延長」に頼らずにどのようにして学習の遅れを取り戻すのか。そして入試はどうするのか。次なる一手を早急に検討しなければならない。

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カリキュラムの削減・持ち越し、入試時期の早期明確化を

不安を抱き続けているのは学生だ。先程も書いた詰込み学習は、必ずしも良い効果が出るとは考えずらい。学習の定着度が著しく低下すると懸念される。9月入学が見送りになった以上、学生の負担を軽減させるためには今年度のカリキュラムの削減や翌年度への持ち越しを特例で認めるしか方法はない。すでに文科省が柔軟に対応してもよいと通達を出したようではあるが、国・もしくは地域単位で明確な方針をいち早く提示するべきである。

受験生にも大きな影響が出る。そもそも出題範囲の学習が完了しないまま入試を迎えることになる。特にコロナウイルスの影響に関係なく授業の進捗に差が伴う科目(文系:日本史世界史等の社会科目、理系:数学IIIや物理など)での学校間格差が深刻化する懸念がある。今年度から実施される大学入試共通テストでは範囲の縮小は時期的にも不可能であるようだ。代替案として選択問題を増やす等の対策を文科省が検討しているという。

加えて入試時期を数週間ズラすなどの対応が政府与党内で検討されているが、いつ受験があるのか、範囲はどうなるのか。これだけはいち早く決定・公表していただきたい。今は受験生や学生の不安を払しょくすることが第一だ。

コロナウイルスの感染拡大、九月入学問題。これらにより今の日本の教育体制の欠点が明確に表れた。この未曽有の危機を乗り越え、教育体制の抜本改革がなされることを望む。

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