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“維新”は東京で成功するのか

先日、日本維新の会東京都総支部である「東京維新の会」が次期衆院選に向けた記者会見を行い、候補予定者12名がお披露目された。総選挙では東京ブロックで100万票つまり比例代表で3議席程度獲得を目指す考えだ。

衆院選候補予定者も年明けには数名程度追加で発表し、都内25選挙区中2/3程度で独自候補を擁立し選挙戦に挑むと見られる。

柳ヶ瀬代表は「今の都内支持率はかつてない支持率を誇っている」と具体的数値の言及は避けたものの、次期選挙へ期待を寄せた。

首長選挙にも次々と参入

維新が都内で攻勢をかけつつあるのは何もここ最近始まったものではない。今年の四月には目黒区長選において候補者を擁立。敗北したものの、当初の予想を大きく超える得票数を獲得。続いて夏の都知事選では無名の維新推薦候補が、山本太郎氏に肉薄する60万票超を獲得するなど一定の成果を上げている。

元々、大阪で地盤を形勢した事もあり「都市型」政党である維新は一定の支持基盤を東京で築く事が可能ではないかと思われる。

しかし、懸念されるのは看板政策の気薄さだ。大阪では、「都構想」を旗印に党勢拡大を果たしてきた。それと同時に首長を獲得する事で実績を残し、維新政治を定着させることに成功した。

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東京ではどうか。維新都連の政策集を拝見するに「都と区の役割分担の再編」等の東京版統治機構改革等を柱としている。

アゴラ編集長の新田氏による「維新は東京で「23区再編」論争を仕掛けてみたらどうか」にて提案されてるような改革を提言する事も考えられる。しかし、記事内で解説されている通り23区長バラバラでは都内における議論も進まないだろう。

また、果たして都民が東京の統治機構改革への必要性を肌で感じているのかにも疑問が生じる。例えば歴史的な統治機構の変革を目指した「大阪都構想」議論の発生はこれまでの「府市合わせ」と揶揄された二重行政の弊害や税金の無駄使いの解決を目指す当時の橋下知事と大阪の民の思いが一致した事に起因するものだ。東京でも都と区の役割や財源の再編等の必要性を真摯に訴え問題提起をしていかない限り今後の東京の未来を占う争点になりえないどころか、維新の旗印と化する事は無いだろう。東京の統治機構改革を目指す政党は存在しないために一定のインパクトにはなるだろうが、押しが弱いのではないか。

結局の所、東京において勢力を拡大し成功させるには大阪維新の成功例を踏襲することが最もな近道であると考える。都政や区政において首長を獲得し、改革実績と維新政治を住民に実感させつつ支持を伸ばし統治機構改革に着手する他無いのではないか。

地方から風を起こす

この戦法は日本維新の会初代代表である橋下徹氏の著書「政権奪取論」にも記載されている。如何に弱小と呼ばれる日本の野党が勢力を獲得するには、地方で首長を獲得し、改革実績を住民に肌で感じてもらう。そのような地方での実績がいずれ国政での勢力拡大につながるのではないかと橋下氏は指摘している。このことを「地方から風を起こせ」と表現されている。

実際、大阪では府知事を始めとして府内15自治体において維新系の首長がいる。200人を超える地方議員が首長を支え、府市一体の成長戦略やコロナ対応、全国に先駆けた教育無償化などを次々に実現してきた。そのことが関西全域や日本全国で評価され国政維新の支持率上昇に大きく寄与している。(特に今年春先の支持率急上昇は「吉村効果」と言われ野党第一党の立憲民主党に迫る支持率を獲得した)

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幸い維新には大阪での多大なる実績がある。大阪での成果を武器に、特に子育て若者向けや福祉政策を東京流にアレンジし地道に支持を拡大していくことが最も「東京制覇」への近道なのではないかと私は指摘したい。

よく大阪での事例を持ち出すと特にインターネット上では「関西ローカルの話は通用しない」等批判の声を耳にする。しかし、実際2016年には国政政党「おおさか維新の会」という名称で国政選挙に挑戦した。関西以外での議席獲得には失敗したものの、全国で500万を超える得票数を獲得した。私の記憶では「大阪の実績」を主に持ち出した選挙戦であったがここまでの成果を上げる事に成功したのは、地方での改革実績は全国的に通用することの証左であろう。

また無党派層が半数超を占める都内では「ふわっとした民意」を掴むことが重要である。小池都知事の当選や都民ファーストの会の躍進はここに起因する。似た第三政党にとって東京は優位な戦場であるはずだ。

ともかく、来年の衆院選・都議選に勝利することが一つの大きな転換点になることは間違いない。

東京で維新が成功する事により「維新」勢力が大阪都のツインエンジンとなり、果てには国政においても野党第一党を狙える力をつけていくことが可能となるだろう。道のりは長いとは思うが、決して不可能な事では無いと確信している。大阪で生じた第三勢力が関東でも波及することになるのか。今後の動向が期待される。