【ファーストの会】都ファ新党は、なぜ国政進出に失敗したのか

 あまりにも呆気なかった。

東京都議会の会派「都民ファーストの会」に所属する都議らが国政進出を目指して設立した新党「ファーストの会」は15日、衆院選の候補擁立を断念することを決めた。(共同)

都民ファ新党、衆院選の候補擁立を断念:東京新聞 TOKYO Web

 去る7月に行われた東京都議会議員選挙では、事前の予測や憶測をひっくり返して直前で巻き返し、31議席を獲得して第2党に踏みとどまるという辛勝を得た都政与党・都民ファーストの会。特別顧問を務める小池百合子東京都知事が2020年の都知事選で再選圧勝した一方、国政進出が前回総選挙で一度”失敗”し求心力の衰えは隠せない。今回の国政進出は代表・荒木千陽都議にとっても失敗できない戦いだった。

 しかし、今度は実戦前に腰砕けとなった。本稿では第49回衆議院議員総選挙への候補者擁立を断念した”ファーストの会”について、なぜ国政進出に失敗したのか解説していきたいと思う。

あまりに少なすぎた準備時間

 最初に「都民ファーストの会」の国政進出の報道が出たのは、10月1日のことだった。実はこれ以前から永田町を騒がせていたもう一つの新党構想として、2019年の参院埼玉補選で当選し国民民主党会派に所属していた上田清司氏を中心とする「上田新党」が存在したため、国民民主党とこの上田新党、さらには上田氏が接触しているとされた鳩山由紀夫元首相らと都ファによる新たな政界再編が噂されていたのである。

 結果的にはこの上田新党についても、10月13日に断念に追い込まれている。その理由は、声をかけていたとされている現職代議士が他党に入党したことなども挙げられているが、この「ファーストの会」同様、主要な理由はやはり「時間の不足」だろう。

 10月1日には新党について、「10月3日に記者会見を行う」というところまで明かされていた。この記者会見は、告知通り3日都内で行われ、都民ファーストの会代表の荒木千陽都議と、同所属の入江伸子都議、龍円愛梨都議の3名が会見の場に同席した。

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 だがこの場では、「ファーストの会」という党名と国政進出の事実、その他の事務的な情報以外は何も明かされず、公募もこの時点からの開始であり、綱領や代表以外の役員はおろか、基本政策ですら一切発表されなかった。このため当初から「準備不足」という批判にさらされることになる。

 記者との1問1答で、荒木代表は以下の事実を公表した。

  • 小池百合子東京都知事に出馬意向はない
  • 現職の所属都議は原則として都政に邁進
  • 現職の国会議員とは今後協議する
  • 東京を中心に候補を擁立する

 何れもインパクトに欠ける情報で、実のところはこの段階から構想は破綻していたのかも知れない。そして翌日、岸田文雄総理は会見で解散日程について、「19日公示、31日投開票」を発表する。わずか17日の短期決戦。14日の解散から数えても、わずか20日あまりしか残されていなかった。以降、しばらくの間「ファーストの会」は目立った活動を止めてしまう。

 そして15日の国政進出断念。会のプレスリリースには、以下の記述があった。

国政政党に有利な現行選挙制度の下、異例ともいえる戦後最短の日程で公示日が早まったことなどを受け、都民の期待に沿う戦いは難しいと判断し、次の国政選挙にむけて取り組んでまいります。

国政への対応に関しまして – ファーストの会

国会議員・政党との調整不調

 先述の上田新党に参加するとされていた国会議員とその後の動向は以下である。

  • 上田清司 参議院議員 (無所属、国民民主党会派)
  • 笠浩史 衆議院議員 (民進党→希望の党→立憲民主党から出馬)
  • 井上一徳 衆議院議員 (希望の党→希望の党(新)→無所属で出馬、国民民主党会派)
  • 吉良州司 衆議院議員 (民進党→希望の党→国民民主党→無所属で出馬、立憲民主党会派)
  • 柿沢未途 衆議院議員 (民進党→希望の党→無所属→立憲民主党会派→会派退会、無所属(自民推薦)で出馬)

 新党自体が不調に終わったため、何れも異なる道を歩んでいる。この上田新党は、ファーストの会や国民民主党とも選挙区で競合する事が予想されたため協議がされたが、これも不調に終わった。

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 そもそも、与野党に所属している国会議員の中で新たな政界再編を望む動きは少なく、新党構想自体が前議員や非議員を中心としていたことが考えられる。事実、現在日本維新の会の候補予定者となっている議員経験者など、関東周辺の非議員が上田氏との2連ポスターを掲載していることなどが目撃されている。

 さらに上田氏は、直近に行われた市長選挙に出馬し落選した前参議院議員を支援するなどの動きも見せており、情勢が注目されていた。にもかかわらず、不調に終わったのである。

 ファーストの会も同様に、現職国会議員や前議員らとの交渉が進まず、存在感を示すことに難儀したことは想像に難くないだろう。

政策のすり合わせ不足

 前述のように、記者会見の時点では一切政策の発表はされず、会の「立ち位置」を述べるに留まった。

荒木氏は「立ち位置は保守中道」と宣言。「保守本流路線から大きく離れていく政党や、また選挙目当てに左旋回を強めていく野党。この国の分断すら懸念される中で、強い危機感を持って立ち上がらせていただいた。左右に偏らない、国の真ん中をいく」と決意を述べた。

都民ファ、国政新党「ファーストの会」を設立 「小池知事と党名決めた」東京の全25選挙区で擁立目指す:東京新聞 TOKYO Web

 「保守中道」といえば、政権与党である自民党や大阪府政・市政与党である維新、さらに国民民主党などとも重なる部分であり、独自色には欠ける。国政進出の必然性・必要性については説得力のあるものとは言えない。

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 とは言うものの、11日には基本政策が発表されていた。

 多様性を源泉とする保守中道・改革政党であることや、国民一人ひとりの「ファースト」に関する言及ーここまでは記者会見で発表された内容だが、「基本原則」として国民ファースト、地域主権、情報公開、ワイズ・スペンディング、サステナビリティを挙げ、基本政策を公表した。

 それぞれ個別にも様々な政策を掲げ、「女性庁設置」や「若者減税」、「ネット投票」などの独自性を打ち出したものの、標語となる基本政策では他の国政政党と大差ないことがわかるのではないだろうか。

 特に経済・社会保障については抽象的な言葉が並び、実現性に関する検討が十分に行われていない。しかも政策発表は11日で、すでに公示まで1週間を切っていた。ここから候補者公募し、選定し擁立すること自体に無理があったことが考えられるだろう。

召喚に応じない前所属都議

 国政進出には直接関係ないものの、「都民ファーストの会」公認で7月の都議選に当選していた木下富美子都議が無免許運転・衝突事故を起こしていたことが報じられ、同会を除名されたうえ議会では辞職勧告決議が決議。さらには書類送検されたにもかかわらず、現在まで1度も登院していないことも理由として考えられる。

カンニング竹山、無免許人身事故で”雲隠れ”木下富美子都議をバッサリ「辞めなきゃいけないのは当然でしょ」(中日スポーツ) - Yahoo!ニュース
木下富美子都議

 9月には議員継続の意思を表明するなどしていたが、10月4日には都議会議長・副議長名義で「召喚状」が発出される。しかし10月13日の定例会閉会までこれに応じることもなかった。こうした木下都議の一挙一動は全て都内外のメディアが報じる。しかもそれは、都議選の際の小池知事や荒木代表による応援映像を伴ったものだった。

 木下都議に対する議員報酬や政務活動費は現在も支払われ続けている。地元板橋区を始め、都民による憤りと辞職要求は絶えないものの、当選から1年はリコール署名すらできないのだ。都議会ではこの自体を異常事態とみなし、「議会に出席しない議員への対応」を議論するにまで至っている。

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 既に除名済ではあるものの、都民ファーストの会としても無関係とは言えない自体だ。国政進出への大きな障害となってしまったことは否めないだろう。

 なお都議会では12月の定例会でも召喚状の発出を検討しており、ある会派の都議は、これにも応じなかった場合の除名にも言及している。

今後の展望

 都議会をサボる前所属議員に政策の杜撰さ、日程と調整不足。荒木代表にとってはあまりに短い夢ではあったものの、来年には参議院通常選挙も予定されており、今後の国政再挑戦も明言している。

 この短期間にも関わらず、候補者の公募があったことも明かしており、その影響力は今後も決して小さいものではないだろう。引き続き動向が注目される。

 

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Akiおとな研究所 編集長

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おとな研究所 編集長
趣味は短歌、動画編集。不登校経験あり。

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  1. 2021年 10月 23日

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