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学校給食と行政のあり方を考える

 学校給食は1889年に山形県の鶴岡町の小学校で始まったのを機に全国に広がった。当初は「弱者救済」の側面が強かったが、現在では「食育」などといった、新たな考え方も登場するようになっている。

 今回の記事は「学校給食と行政のあり方」と題し、行政が学校給食に対してどのような方策を取っているのか、また近年少子化が進行している中で、どのように持続可能な学校給食の提供システムを確立させているのかを考察し、学校給食の今後について考えていきたい。

学校給食の法的根拠

 日本の学校給食は「学校給食法」において定められており、その目的は以下の通りだ。

学校給食が児童及び生徒の心身の健康的な発達に資するものであり、かつ、児童及び生徒の食に関する正しい理解と適切な判断力を養う上で必要な役割を果たすものであることに鑑み、学校給食及び学校給食を活用した食に関する指導の実施に関し必要な事項を定め、もつて学校給食の普及充実及び学校における食育の推進を図ることを目的とする。

学校給食法より

 近年の「食」を巡る情勢の変化に対応し、2011年に施行された改正学校給食法で「食育」などの項目が盛り込まれた。給食の提供は「国・地方公共団体の責務」と定められており、小学校・中学校や特別支援学校などの義務教育課程において適用されるものとなっているが、東京都や神奈川県では中学校に対して給食を実施していない自治体もある。

 また、学校給食費は、学校給食を受ける児童又は生徒の保護者の負担になることが明記されている。

給食費未払いとその解決のために

 長い間にわたって行われている給食制度だが、そこには様々な問題が存在する。

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 特に「給食費の未払い問題」は深刻な問題で、貧困のため生活に困窮しているなど様々な事情により、子どもの給食費を滞納している保護者が一定数存在しているのだ。2016年度の文部科学省の調査では、約42%の学校が「給食費を滞納している生徒がいる」と回答している。生徒数にすると全体の0.8%ほどだが、給食費の未納額の推計は全国で22億円にも上っている。

 最近では、特に保育園・幼稚園など未就学児教育において「副食費の無償化」を行う自治体が増えてきた。これは、比較的収入の少ない(未就学児などの)子育て世代を支援するために行われるものとなっており、世帯収入に応じて免除額が決まっている。現在は多くが保育園・幼稚園で実施されているが、小学校入学以降も、低所得世帯は「就学支援金制度」などを利用し補助を受けることができる。このような制度の周知を図っていくことで、給食費の未払いを少しでも防ぐことができるのではないだろうか。

 もちろん、十分な生活を行っているにも関わらず、理由をつけ給食費を支払わない保護者も存在する。今後は、こういった問題の解決にも注力していくべきだろう。

少子化により進められる集約化

 近年では、少子化により各学校に給食室がないという例も珍しくない。

 岡山県新見市では、市内5箇所にあった給食センターを一つに集約した「にいみ~る」を2023年度から稼働させ、市内の全小中学校約1,100人分を供給することを予定している。

 今回の統合は、給食製造の効率化を目指す上で必要なプロセスであり、その他多くの自治体でも検討が行われている。現行の施設や設備も老朽化が進んでおり、最悪給食への異物混入が起こる可能性もあるのだ。少子化が進む日本では、費用対効果を考えたときに、給食センターを集約していくことが最善の策といえるだろう。

 しかし、その裏には「運送に時間を要し、給食が冷めてしまうのではないか」といった懸念もある。実際に、「にいみ~る」からは車で40~50分ほどかかる学校もあり、今までのように温かい給食が食べられない可能性もあるのだ。

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 このような問題を解決するため、今後行政のさらなる制度設計が必要となる。

給食は命をつなぐライフラインになる

 先日、福岡県の5歳児が、十分な食事を与えられず死亡したというニュースが世間を騒がせた。

この5歳児は昨年に保育園を退所していたが、長男・次男は学校に通っていたため給食を受けており、死には至らなかった。このように、給食は命をつなぐライフラインにもなりえる。

 給食は世界にも広がりを見せており、国際連合世界食糧計画(以下国連WFP)は、飢餓や貧困に苦しむ国の子どもたちを救うために「学校給食プログラム」を長い間続けている。

世界では、5歳児未満の子どもの4人に1人が慢性的な栄養不足に陥っているとの調査結果があり、このプログラムにより多くの子どもたちが救われている。国連WFMは、これまでに1,830万人の子供たちに給食を届けた。

 日本発の「給食」。それは、世界を支える原動力にもなっているのかもしれない。
 

引用・参考資料

e-GOV 法令検索/学校給食法(昭和二十九年法律第百六十号)

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学校給食費の徴収状況に関する調査結果:文部科学省

岡山・新見市に新しい学校給食センター「にいみ~る」が完成(KSB瀬戸内海放送)

福岡5歳児餓死 母親が保育園入園を拒絶 知人、虐待発覚警戒か(毎日新聞)

途上国と子どもたちの未来を変える国連WFPの学校給食プログラム

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