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質の高い教育をみんなに—自治体が設置する「公営塾」の取り組みを探る

 SDGs(持続可能な開発のための目標)4番には「質の高い教育をみんなに」といったものが規定されている。以前記事でも取り上げた「教育の機会均等性」の観点からも「質の高い教育をみんなに」といった目標は大変重要なものになる。

 そんな中、自治体が主導して公営塾を立ち上げたという事例が多くみられるようになった。公営塾を立ち上げることにより、それまでは経済的事由などから私塾に通えていなかった子どもたちにも平等に教育を施すことができるようになりつつある。今回の記事では、その「公営塾」のシステム、運営の在り方について考えていきたい。

公営塾のシステム

 公営塾とは言うが、どのような運営形態で、どのような特徴があるのだろうか。

 まず一つ目の事例として、岡山県和気町の事例を取り上げる。

 和気町では、町内の小学校5.6年生や中学生、高校生に対し、地域おこし協力隊員や地元の大学生などが英語を教える活動を行っている。

 グローバル化が進む社会において、行政が主導で英語教育を「公営塾」で行うというのは、大変先進的な取り組みであるといえるだろう。放課後の特別講座では中国語・韓国語などを学ぶことも可能になっており、生徒がより深い学びに取り組むことができる。

 同町内にある県立和気閑谷高校から岡山大学グローバル・ディスカバリー・プログラム等に合格した生徒もおり、一定の実績をあげているといえるだろう。このような活動が評価され、町内の全小中学校が文科省の英語特区校の認定を受け、独自のカリキュラムを組むことが可能となっている。

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 町自体は人口1万人程度の小さな町だが、このように公営塾をきっかけに町をあげて先進的な英語教育が行われるようになった。今後グローバル化がますます進行していく中で、積極的な外国語教育が必要になってくるから、モデルとして参考にしたい事例だ。

 二つ目の事例は、静岡県川根本町だ。

 先ほどの和気町は「行政主導」の取り組みとなっていたが、川根本町では行政と民間企業が連携して運営が行われている。受講するにあたり、少々費用が発生してしまうのが難点だが、民間企業が運営に携わっていることから、講師の質に関してはある程度保障されているだろう。

 また、個別指導スペース、映像授業スペース、自習室など、生徒それぞれのニーズに応じてブースが用意されている。ノウハウを持つ民間企業と連携を行うことで、このように充実した教育を提供出来るといった側面もあるだろう。

まとめ

 「質の高い教育をみんなに」といった、機会均等性を保証するためには、行政と教育の連携が重要だろう。特に、このような公営塾の取り組みは先進的なものであるから、行政がしっかりその地盤を整えていくことが大切だ。

 さらに、地域との連携も重要だ。講師として、教育に興味がある高校生や、意欲のある高齢者を起用するのも一手だろう。このように「教える側」も自身の経験をアップデートできるようなものにしていくことで、より持続可能な教育体制・地域社会を創ることができるのではないだろうか。

→おとな研究所「教育」カテゴリー

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引用・参考資料

和気町公営塾 ホームページ

3制度をフル活用して、和気町わけちょうは 「教育の町『和気』」へ! ー文部科学省ホームページ

川根本町公営塾 公式ホームページ