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[GDP-1.3%]徹底分析!日本経済の現状と行方① ー日本の経済回復が先進国で最下位なワケー

 今月18日に内閣府が発表した2021年1~3月期のGDP(国内総生産)の速報値は、実質gdpが前期比-1.3%(年率-5.1%)、名目gdpは前期比-1.6%(年率-6.3%)でした。新型コロナウイルス感染症再拡大の影響により、3四半期ぶりのマイナス成長となりました。また、実質gdp以上に名目の下落幅が大きく、gdpデフレーターは前年同期比-0.2%とマイナスに転じている為(10~12月期0.2%)、若干のデフレ傾向であると言えます。そして、現在も新型コロナウイルス感染症は拡大しており、緊急事態宣言による経済活動の制限が続いている為、暫くは厳しい経済情勢が続くというのが大方の見方です。そこで今回は全2回に分けて、日本経済の現状と行方を分析した上で、コロナショックからの再生に必要な経済政策、その後の新しい経済社会を見据えた長期的な経済戦略について問題提起をしていきます。

1-3月期GDPから見る日本経済の現状

 GDP(国内総生産)とは、国内で一定期間に生み出された付加価値の総額です。付加価値とは、粗利(売上-原価)のようなものであり、粗利は所得に結びつく為、GDPは日本国内の所得の合計(GDI=国内総所得)と等しくなります。また、粗利には支出が伴う為、支出の総額(GDE=国内総支出)とも等しくなるので、GDPは以下の式で表すことが出来ます。

Y=C+I+G+(X-M)⇒GDP=消費+投資+政府支出+純輸出

 そこで、日本経済の現状を上記の項目別に分析していきます。ちなみに、マスコミによる報道では年率換算(今期の成長率が1年間継続すると仮定した数値)が頻繁に用いられますが、今般のような変化の激しい経済ショックには馴染まない為、今回は前期比の実質値(季節調整済み)を用いることとします。

 ご案内のように、2021年1~3月期の実質GDP成長率は(2021年1-3月期四半期別GDP速報(1次速報値)資料1 (cao.go.jp)より)-1.3%であり、項目別では、個人消費(民間最終消費支出)-1.4%、設備投資(民間企業設備)-1.4%、住宅投資(民間住宅)+1.1%、政府消費(政府最終消費支出)-1.8%、公共投資(公的固定資本形成)-1.1%、輸出(財貨・サービスの輸出)+2.3%、輸入(財貨・サービスの輸入)+4.0%となっています。実質GDPにおける内外需別寄与度は、内需が-1.1%、外需は-0.1%でした。

 項目別の増減から分かるのは、堅調に推移している輸出を除き、経済活動全体が落ち込んでいるということです。これは、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う経済活動の制約が長期化している結果を如実に表してると言えます。そこで、各項目別の動向について深掘りしてみます。

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個人消費

 まず、個人消費です。以下のグラフ家計調査報告(二人以上の世帯)-2021年(令和3年)3月分及び1~3月期平均- (stat.go.jp)を基に筆者が作成)から、1月は大きく落ち込み、2・3月は回復傾向にあったことが読み取れます。これは、1月~3月の2度目の緊急事態宣言による外出自粛や飲食店の時短営業等の影響によって落ち込み、期間後半になるに連れて自粛の効果が弱まることにより回復傾向にあったと考えられます。しかし、4月25日から三度目の緊急事態宣言の期間に入り、今月末が期限ではあるものの、今月23日から対象となる沖縄県以外の地域は期間が延長される可能性もある為、4-6月期は更なる落ち込みが予想されます。その後は、ワクチン接種が進む中で行動制限が緩和され、GoTo事業等も再開することによって次第に回復していくでしょう。仮に回復が弱い場合には、消費減税やキャッシュレス・ポイント還元といった消費刺激策を打っていく必要があります。

投資

 次に、投資です。設備投資が前期比-1.4%で2四半期ぶりに減少、住宅投資は+1.1%で2四半期連続の増加となっています。設備投資は前期で大きく増加したことによる反動と、他国と比べてワクチン接種が遅れていることによって新型コロナウイルス感染症の影響が長引く中で、新規投資を抑制する傾向にある為であると考えられます。設備投資の減少が続けば供給能力が低下し、潜在成長率の低迷に繋がる可能性がある為、更なる設備投資減税等の早急な対策が不可欠です。但し、一次速報値では供給側のデータが含まれておらず、他の項目に比べて投資は後の修正幅が大きい傾向にあるので、二次速報値時点で大幅に修正される可能性があります。

政府支出

 続いて、政府支出です。政府消費が前期比-1.8%で4四半期ぶりに減少、公共投資は-1.1%で7四半期ぶりに減少となっています。政府消費は、感染への懸念による医療機関受診者の減少や、GoTo事業の停止によって減少していると考えられます。公共投資は7四半期ぶりの減少の為、国土強靱化政策等による下支えが一段落したとみられます。

輸出・輸入

 最後に、輸出・輸入です。輸出より輸入の増加幅が大きかった為外需の寄与度は前期比-0.2%、輸出は+2.3%で3四半期連続の増加、輸入は+4.0%で2四半期連続の増加となっています。輸出は、財・サービス共に増加しており、海外の景気回復が影響していると考えられます。また、半導体不足による自動車の減産によって前期に比べて伸び率が鈍化していますが、4月の貿易統計(報 道 発 表)では大幅に増加している為、輸出の拡大は暫く続くでしょう。

日本の経済回復が先進国最下位である3つの理由

 では、今後の日本経済の行方はどうなるのでしょうか。IMF(国際通貨基金)による世界経済見通し(WEO)(https://www.imf.org/-/media/Images/IMF/Publications/WEO/2021/April/Japanese/WEO-Chart-APR-21-JPN.ashx#.YKj4vmXaDXA.link)によると、2021年の実質gdp成長率が世界全体で6.0%、先進国全体は5.1%、ユーロ圏は4.4%、米国は6.4%、日本は3.3%と予測されています。2022年は世界全体で4.4%、先進国全体は3.6%、ユーロ圏は3.8%、米国は3.5%、日本は2.5%と予測されています。衝撃的なのは21、22年共に先進国の中で日本の伸び率が最下位であるということです。

 要因として筆者は、第一にワクチン接種が遅れていること、第二に潜在成長率が低いこと、第三に変化への適応力が弱いことが挙げられると考えます。

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 ワクチン接種の遅れは、日本の感染者数や死亡者が少ないことの裏返しであるため致し方ない面がありますが、接種が遅くなればなるほど当然経済再生は遅くなります。よって、公平性よりも効率性を重視すべきなのは火を見るよりも明らかです。ワクチン供給自体の見通しは立ってきているので、薬剤師等を含む医療関係者の総動員で打ち手不足を解消していく必要があります。

 日本の潜在成長率の低さは、中・長期的な経済成長の足枷となります。短期的には、財政政策や金融政策といったマクロ経済政策によってデフレギャップを解消することで景気回復による成長が可能ですが、潜在成長率の低迷が続けばいずれ頭打ちになります。IMF予測で日本の22年の成長率が低いことは主にこの潜在成長率の低さによるものであると考えられます。

 変化へ適応力の弱さは、前述の潜在成長率の低迷に繋がります。日本は変化への適応力が弱く、現にコロナ禍で他国と比べてビジネスモデルの転換や、働き方改革といった社会変化のスピードが遅い傾向にあります。これは、テレワークへの抵抗感などのように、日本人には変化を嫌う文化が根強いからであると筆者は考えます。そして、こういった変化への適応力の弱さが、過去25年間の潜在成長率がほぼ0%台で推移しているなど(下記のグラフはhttps://www5.cao.go.jp/keizai3/getsurei/2042gap.xlsを基に筆者が作成)といった日本のジリ貧を招いてきたのです。

 今回はここまでとなります。次回は、潜在成長率の低迷について深掘りしていくと共に、コロナショックからの再生に必要な経済政策、その後の新しい経済社会を見据えた長期的な経済戦略について問題提起をしていきます。

次回:徹底分析!日本経済の現状と行方②-経済復活の鍵は減税と変化を恐れない構造改革-

参考文献

2021年1-3月期GDP(1次速報) (dir.co.jp)                                2021年1~3月期のGDP(1次速報)結果 (murc.jp)

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