【ゼロコロナ戦略】「感染者ゼロ」ではなく〇〇ゼロ?! 立憲民主党の感染症政策を徹底解説

※この記事は、編集部作成の解説記事です。

今年中に必ず行われる衆議院の解散総選挙を睨んで、各党が新型コロナウイルス感染症対策の様々な政策を立案する中、一際目を引くのが野党第一党・立憲民主党の「ゼロコロナ戦略」です。

今年に入ってから枝野幸男代表を中心に提唱し始めていましたが、2月末から3月頭にかけて党として決定し国会で議論するなど、今や党の看板政策となりつつあります。また、立憲民主党は先月行われた衆参の補欠選挙・再選挙で党が推薦した候補が与党候補らを相手に圧勝するなどしており、有権者からの一定の支持・期待を取り付けています。

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この「ゼロコロナ戦略」が総選挙における一つの重要な争点となることが予想されるため、有権者としてこの政策の中身を知らないわけにはいきません。この記事では「ゼロコロナ戦略」の中身と、取り巻く議論について解説していきます。

なぜ「”ゼロ”コロナ」なのか、何が「ゼロ」なのか

政策の中身を解説していく前に、この「ゼロコロナ戦略」という政策の名称について触れておきましょう。

2020年5月、政府は「新しい生活様式」を国民に提示します。この中では国民生活の指針として「ウィズコロナ」を掲げ、社会経済活動と感染対策の両立を訴えていました。

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この「ウィズコロナ」に対比させる形とし、政策の大転換を行うべきだとして立憲民主党が提案したのが「ゼロコロナ戦略」というわけです。字義通り「コロナをゼロにする」あるいは「感染者をゼロにする」という意味ではありません。枝野代表自身も「ウイルスをゼロにすることはできない」と明言しています。

感染者の数を一定水準以下に減らしたうえで、新規感染者の感染ルートを把握して徹底した対策を行うことで、感染の広がりを抑えることが可能としました。

ゼロコロナ戦略とは、「感染拡大の繰り返しを防ぎ、早期に通常に近い社会を取り戻す戦略」です。つまりゼロにするのは「コロナ」ではなく「感染再拡大の可能性」であると言えるでしょう。海外のモデルとしては、台湾・オーストラリア・ニュージーランドを挙げています。

政策の中身については次見出しから解説しますが、このネーミングについては菅首相はじめ与党が「緊急事態宣言による抑え込みには一定の効果がある。コロナとの戦いはそんな生易しいものではない。ゼロというのは現実的には難しい」と批判が上がっている他、立憲民主党内からも「安易なネーミング」「誤解される」といった意見が出ているといいます。

さらに主要な支持母体である労働組合・連合からも「ゼロと言ってはいけない。完全にゼロにはできない」との声が上がっているといい、名前の理由や中身についてはある程度説明が必要になってくるでしょう。

ロードマップと「三本柱」

ゼロコロナ戦略について、枝野代表は以下のようなロードマップを掲げています。

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1. 崩壊状況にある医療や介護などの現場への支援を強化して立て直す
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2. PCR検査を大幅に拡大し、感染症の早期発見を図る
①重症化とクラスター発生のリスクが高い医療機関や介護施設などから、公費による定期的な検査を行う。② 新規の感染者に関して、狭い範囲の「濃厚接触者」に限定せず、幅広く検査を行う。③段階的に、希望者が、誰でも身近で気軽に検査できるシステムを作る。
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3. 保健所の体制を強化するとともに、ゲノム解析の能力を高めて遺伝情報も活用し、早期かつ確実に感染ルートを把握できる体制を構築する
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4. 入国者に対する水際対策を強化し、入国後2週間の事実上の隔離が確実になされるよう、宿泊施設などを確保し提供する
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5. これらによって、感染拡大を抑え込める状況になるまでの間は、事業者と生活困窮者への支援を充実させる

立憲民主党 「zeroコロナ戦略」のためのロードマップ #zeroコロナの日本へ|枝野幸男|note

先ほども解説しましたが、このロードマップを見ればわかるように、順序は「医療支援、検査拡大、感染ルート把握、入国者管理、生活支援」となっていることがわかります。

この手順を踏んで再拡大の可能性がなくなった時点で初めて社会経済活動の再開を行うべきだ、というのが立憲民主党の政策なのです。

そしてこのロードマップ実現のためとして掲げている「3つの柱」が以下です。

この中で枝野代表が「肝である」と言っているのが2番の「感染者の早期把握と封じ込め」で、内容的にもこの項目が最も多いものになります。一つずつ解説していきましょう。

①医療現場を支援し命を守る

ロードマップの中でも一番最初に掲げられているのが医療支援です。

その中でも一丁目一番地に掲げているのが「国が病床確保へ積極的に関与すること」です。現状ベッドの確保は各都道府県ごと状況が異なるため自治体にある程度任せている部分がありますが、これでは不十分とし、国が積極的に関与するべきだとしました。

そのうえで、既に感染者を受け入れている医療機関に対し、減収分と負担増を事前に全額包括払いするとしました。感染者を受け入れても病院経営の不安をなくすことが目的です。また、収入が減った全ての医療機関へ経済的支援を行い、コロナ以外の病気で受け入れ先がないという状況を防ぐことも盛り込んでいます。

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そして最後に、慰労金の医療・介護者従事者への再給付と薬剤師・保育士等への対象拡大を挙げています。これについては、今年はじめの国会冒頭で既に法案を提出しています。

その他に、医療従事者等の復帰支援も掲げています。

②感染の封じ込め

「ゼロコロナ戦略」は「封じ込めて社会経済再開」というメリハリの政策なので、必然的にこの「感染封じ込め」が最も重要になります。

  1. 当面の検査拡大
  2. 宿泊療養・自宅療養における医療・食事等の環境を改善
  3. 出入国管理を徹底
  4. 科学的知見とエビデンスに基づく対策を講ずるため、全ゲノム解析を推進
  5.  ワクチン接種の迅速な実施
  6. 適時適切で平易な情報公開、情報提供を実施

一つ一つ解説していきましょう。

「検査拡大」とはPCR検査などを指しますが、この検査を拡大するとしています。具体的には、医療従事者や介護従事者などのエッセンシャルワーカーに対して無料かつ定期的な検査を行うというもの。さらにこうした人の周囲の人々にも無料検査を行う、といった形での拡大を行うというものです。

より迅速に検査を行うため、保健所の職員増員による強化の他、一日に2万件近い検査が可能な自動化機械や、比較的安価な小型自動検査機械を導入するなど、政府として最新情報を把握すること。さらに大型のものを自治体に配置し、小型のものを医療機関等に提供するなど棲み分けるとしています。また既に私費で民間が実施している検査についても政府が全体像を把握した上で公的な助成や委託を行うべきだとも述べています。

加えて、手軽かつ安価に感染が確認できる技術の開発支援も行うということです。

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感染が確認された時点で、当然自宅ないしは宿泊施設などでの療養を余儀なくされますが、こうした食事環境の改善も掲げています。

そして出入国管理です。

現在国内で広がっている、いわゆる「変異株」の感染について、入国管理が「自己責任」となっていることが一因にあると言われているとした上で、 入国再開時は、当面全ての入国者をホテルで10日間隔離し、1日目、6日目、9日目と言った具合で定期的なPCR検査を実施するとしています。その際まずは1日最大2000人程度の受け入れ体制を確保し、順次拡大していくということです。

また、 ビジネストラック・レジデンストラック再開などのさらなる緩和は、国内外の流行状況を踏まえて判断するとしています。

さらに、科学的知見とエビデンスに基づく対策を行うため「全ゲノム解析」を推進することを挙げました。

これにより全ての感染者の感染経路を、聞き取りだけではなくウイルスの遺伝子を解析することで把握できます。また、変異株の発見を早期に察知できる点や、政策の有効性を確認できることなども利点としてあげられています。ゲノム解析については国内の大学で効率的に実施可能な機械があるものの要請が無いため使用されていないといい、文科省と厚労省の縦割りをなくして積極的に導入するべきだとしています。

この他に、ワクチン接種の迅速化や適時適切で平易な情報公開、情報提供を実施することも挙げています。

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③暮らしと事業を守る

立憲民主党の党としての強みである、家計を重視した政策です。「暮らしを守る」では以下を挙げました。

  1. 生活困窮者(住民税非課税世帯など)への再給付
  2. 子どものいる低所得者世帯への給付
  3. 学生支援(学費半額など)
  4. ひとり親など職業訓練についての給付金の増額
  5. 休業支援金・給付金の6月末まで延長と大企業労働者の昨年4月までの遡っての対象化
  6. 失業手当の拡充
  7. 緊急小口資金・総合支援資金の特例貸付上限の拡大と返済免除措置の対象拡大

この内、生活困窮者への再給付・子供のいる低所得者世帯への給付・学生支援・休業支援金などの延長と対象拡大・失業手当拡充については今年に入ってから各種法案を提出しています。

「事業を守る」では以下を掲げました。

  1. 持続化給付金・家賃支援給付金の再給付、減収要件等の要件緩和
  2. 休業協力金、一時支援金の要件緩和、事業規模に応じた支援の実施
  3. 無利子無担保融資枠の拡大、借入金のリスケ、無利子期間の延長など
  4. 雇用調整助成金特例の6月までの延長
  5. 税・社会保険料の支払い猶予の継続、減免措置の創設
  6. 公共交通機関への支援(その他影響の大きい産業への支援)
  7. 迅速な事業支援のための日本型PPPの創設

この中で最後に挙げられている「PPP」とは、一定の要件を満たせば融資の全額または一部の返済が免除される制度のことです。これらの中にも、既に法案提出済のものや、今後提出を予定している項目も含まれているということです。

特に給付と税金などの減免をセットで行うことは、一般にきめ細やかな支援が可能であると言われており、これらの政策案を政府与党が受け入れる余地は十分にあります。

懸念事項と今後の展望

党として政府に働きかけを行っていくとした「ゼロコロナ戦略」。課題がまったくないわけではありません。

モデルとしてあげた台湾、オーストラリア、ニュージーランドはいずれも国内法で広範かつ強力な「ロックダウン」が可能です。一方日本にはロックダウン可能な法整備がなされておらず、万が一にでも実施しようとするのであれば法改正が必要です。

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立憲民主党の枝野代表は「ロックダウンはできないし必ずしも必要ではない」としていますが、今後感染者数が天井を突き抜けるようなことがあれば、現実問題として議論の俎上に上がることは間違いありません。

また台湾では5月15日、域内で一日あたり185人の新規感染者が確認されており、それまでの累計感染者数(164人)をたった一日で上回ることになりました。いくら個別の感染事例を追って入国者管理を行っても、大規模なクラスターが発生すれば収集がつかなくなる可能性があり、対応が求められます。

まだまだ課題が多い政策ではありますが、与党自民党や他党案とは明確に異なる独自の立場を表明していることは、野党第一党であること以上の強みと言えるでしょう。立憲民主党は国会審議と選挙戦の中で「ゼロコロナ」をどこまで実現できるのか。引き続き注目です。

参考文献リスト:【ゼロコロナ戦略】「感染者ゼロ」ではなく〇〇ゼロ?!-立憲民主党の感染症政策を徹底解説-参考文献

 

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