ガソリン高騰対策としての「トリガー条項凍結解除」 国民民主党・維新の会案と立憲民主党案の違いは?

 臨時国会初日の6日、国民民主党と日本維新の会は、ガソリン価格の高騰を受けて、「トリガー条項凍結解除」法案を衆議院に提出した。先の衆院選の結果、この両党の議席を合わせると50議席を超えたことをうけて、両党が連携すれば、予算関連法案が出せるようになった。トリガー条項凍結解除法案は、両党が連携して提出する、初の予算関連法案となった。

 ところが、7日、立憲民主党も、「トリガー条項凍結解除」法案を提出した。一見すると全く同じ法案を別々に出したようにも見え、野党が別々に法案を提出することに対する疑問の声も散見される。そこで、今回は、「トリガー条項」について簡単に解説したうえでトリガー条項凍結解除について、2つの案を比較したい。

「トリガー条項」とは、ガソリンの一時減税条項である

 「トリガー条項」とは、旧民主党政権時の2010年、税制改正で導入された制度で、以下の通り、ガソリンが一定期間高騰し続けた際に行われる減税措置である。

揮発油には、製造場から出荷される際に揮発油税及び地方揮発油税(以下「揮発油税等」といいます。)の特例税率(53.8 円/ℓ)が課税されていますが、揮発油の平均小売価格が連続3か月にわたり160円/ℓを超えることとなった場合には、特例税率の適用が停止され、揮発油税等の本則税率(28.7円/ℓ)が適用されることとなります。その後、揮発油の平均小売価格が連続3か月にわたり130円/ℓを下回ることとなった場合には、特例税率の適用が再開されることとなります。

揮発油価格高騰時における揮発油税及び地方揮発油税の特例税率の適用停止等について(国税庁)

 ガソリンの小売価格が、連続3ヶ月にわたり1リットル160円を超えた場合に、20円程度減税するもので、要件を満たしたら自動適用されるという特色がある。ところが、現在、トリガー条項は凍結されている。東日本大震災で、復興のための財源が必要となったためだ。

国民民主党案はシンプルにガソリン高騰を解決、維新も賛同し共同提出

 夏以降のガソリン価格高騰をうけて、トリガー条項に目をつけたのが国民民主党である。国民民主党は、衆院選の選挙戦に突入後、主要政党で唯一、ガソリン価格高騰対策としてのトリガー条項凍結解除を打ちだした。

 そして、臨時国会が始まった12月6日、国民民主党は、日本維新の会とともにトリガー条項凍結解除法案を提出した。

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 その内容は、以下の通り、トリガー条項を凍結する法律の条文を丸ごと削除するものである。

〇国民民主党案の概要(一部抜粋)

次の①及び②の規定を削除すること。
① 東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律第44条(揮発油価格高騰時における揮発油税及び地方揮発油税の税率の特例規定の適用停止措置(租税特別措置法第89条)の停止) (第1条関係)
② 地方税法附則第53条(揮発油価格高騰時における軽油引取税の税率の特例規定の適用停止措置(同法附則第12条の2の9)の停止)

「衆議院法制局」HPより

 このように、国民民主党案は、トリガー条項の発動を妨げる条文を削除するだけの、簡素で分かりやすい法案であり、再度ガソリン価格が高騰した際にも適用されるというメリットがある。ガソリン価格が上がった場合は必ず減税措置が行われるようにするという、極めて単純明快な解決策である国民民主・維新案がベストである。

関連記事:徹底分析!国民民主党衆院選公約 「動け、日本」スローガンに込められた決意を読み解く①

立憲民主党案は、「国民民主案の劣化版コピー」に過ぎない

 立憲民主党は、国民民主・維新が法案を出した翌7日に、独自案を提出した。国民民主・維新案にわざわざ乗らずに、独自の法案を出した以上は、全く違う法案なのだろうと思うかもしれない。

 だが、立憲民主党の案は、国民民主・維新案とほとんど違いがない。それどころか、前日に出た法案の「劣化版コピー」に過ぎないのだ。

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 立憲民主党案は、トリガー条項を凍結する根拠条文の適用を、一時的に停止するものである。極めて複雑であり、とても分かりにくいが、一定の期間が経過すれば、トリガー条項が元通りに凍結されてしまうようになっているのだ。今回のガソリン価格高騰が収まった後、再び価格が高騰したときに、立憲民主党案では、上記の減税措置がなされない可能性が高いのだ。それだけではない。立憲民主党案は期限を区切った以上、ガソリン価格の高騰が収まらないまま一定期間が経てば、問答無用で再び増税されてしまうのだ。

〇立憲民主党案の概要(一部抜粋)

次の①及び②の規定は、揮発油及び軽油の価格が国民生活及び国民経済に及ぼす影響を勘案し別に法律で定める日までの間、その適用を停止すること(※この結果、租税特別措置法第89条及び地方税法附則第12条の2の9の規定(揮発油税等の「トリガー条項」)が適用可能となる。)。

① 東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律第44条(揮発油価格高騰時における揮発油税及び地方揮発油税の税率の特例規定の適用停止措置(租税特別措置法第89条)の停止) (第1条関係)
② 地方税法附則第53条(揮発油価格高騰時における軽油引取税の税率の特例規定の適用停止措置(同法附則第12条の2の9)の停止) (第2条関係)

「衆議院法制局」HPより

 立憲民主党の案は、国民民主・維新案より1日遅れで出されたにもかかわらず、内容が複雑であり、一定期間が経てば、その時点でのガソリン価格にかかわらず、法律によらないまま再増税されてしまうという、「劣化版コピー」のようなものだ。これでは、独自に法案を出す意味がない。

立憲民主党は、当初、事業者支援策のみを打ちだしていた 野党第一党に国民生活を向上させる政策立案能力が欠けている

 立憲民主党は、衆院選の時点では、自公政権と同様、ガソリン価格高騰に対して決定的な対応策を打ち出せていなかった。当初は、トリガー条項に反対していたにもかかわらず、国民民主党案が出された翌日に、トリガー条項凍結の「削除」を「一時停止」に変えただけの「劣化版コピー」のような法案を提出したのだ。

 これこそが、野党第一党が、合わせて50議席程度しかない野党第二党、野党第三党に政策立案能力で劣っているといえる根拠である。もし、立憲民主党に十分な政策立案能力があるならば、自党の案と維新・国民民主の案を虚心坦懐に比較したうえで、両党の案に乗ることができたはずだ。政策立案の能力が不十分でスピードが遅いにもかかわらず、プライドが邪魔をして維新・国民民主案に賛成できなかったようにしか見えない。

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 立憲民主党には、国民生活を良くしようという思いはあるのだろうか。

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