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自民・山本氏も「現金一律給付」を提言 対象を現役世代に絞って実現すべきだ

国民民主党が最速で「現役世代一律給付」を提案、自民・山本氏も追随

 国民民主党は既に、2020年度3次補正組み替え動議と、2021年度本予算で、現役世代への10万円一律給付(低所得者層には20万円の給付)を求めている。そしてこの動きに続いて、立憲民主党、日本維新の会の一部議員も、現金一律給付を求めるようになった。新型コロナの影響で景気が悪化し、現役世代の多くの人の収入がダウンしている。現役世代に的を絞った現金給付の提案は、とても歓迎したい。

 2021年2月までの現金給付をめぐる政局は、以下の記事などを参照してほしい。

 さらに、3月12日、自民党の山本幸三金融調査会長が、国民民主党案とほぼ同じ、現役世代への10万円給付・低所得者への20万円給付を提言した。現金一律給付を求める動きが、与党内にも広がりつつあることが分かる。

【参考】日銀は「もっと国債購入を」、大型経済対策へ協調必要-自民・山本氏
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-03-11/QPQLB5DWRGG201

 国民民主党や山本金融調査会長の提案する一律給付は、現役世代(15~64歳)に対象を絞ったものである。そのため、「高齢者にも給付すべきだ」などという批判もあるのは確かだ。しかし、筆者は対象を絞るべきであると考えている。それは、「シルバーデモクラシー」、すなわち、高齢世代偏重の財政政策を一転、改める契機になると考えるからである。

「財政的幼児虐待」と呼ばれる世代間格差

年代別の医療・介護・年金受給額の比較データ 現在74歳の人と現在9歳の人とでは総額で8000万円近く開きがある
みんなの介護」より引用
2009年当時のデータに基づく

 国民民主党や山本幸三氏の案では「高齢者だけがもらえないのはかわいそうだ」と主張する人が少なからずいる。しかし、本当にそうだろうか?そのようなことを主張する人は、ミクロに捉えすぎである。

 上の表を見てほしい。2009年当時の世代間格差を表すグラフである。すなわち、年金・介護・医療それぞれのサービスについて、給付を受けるであろう額から負担するであろう額を引いたものである。少しデータが古くなってしまったが、状況は依然ほとんど改善されていない。

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 年金だけで見ても、当時64歳(現在75歳前後)の世代は、生涯を通じ、平均して1000万円以上払った額よりももらえると試算されているのだ。現役世代が、10万円程度を1回もらったとしても、ほとんど改善されない世代間格差がそこにはある。

 最も割を食うのは、若者世代である。20代以下の世代は、2000万円以上の払い損になると予測させている。もちろん、安倍政権下で実施されたマクロ経済スライドの強化に伴い、若者世代の負担が多少は小さくなることが期待されている。しかし、それでもなお、若者世代が大損をするという、大きな流れは一切変わっていないのである。

 このような世代間の不均衡を「財政的幼児虐待」と言う。これまでは、有権者の多数の割合を占める高齢者に遠慮してか、政治が十分この問題に取り組んでこなかった。仮に取り組んだとしても、安倍政権下の年金改革を除けば、(将来世代を含む)国民負担の増加という面でしか取り組むことが無く、今そこにある莫大な給付の妥当性には目を向けてこなかった。

 現役世代を対象とした一律給付については、高齢世代から批判を受けることを、政治家は覚悟すべきだ。それでもなお、国民民主党や山本氏の提案に近い形で、実現させるべきなのだ。これを機に、国民から批判をされても、年金等の給付水準そのものの世代間格差に目を向けてほしい。

年金受給者はコロナのせいで収入ダウンしてはいない

 山本幸三氏も指摘しているように、年金受給者は新型コロナにより収入がダウンしていない。自粛で家にいる時間が長くなり、光熱費が上昇したという指摘もあるが、それでも影響は10万円を超えることはないだろう。いずれにせよ、新型コロナの影響がないか、あったとしても微々たる高齢世代に配るべき理由は、ないと言うべきである。

「自粛への協力を余儀なくされる現役世代」への感染防止協力金を

 もう一つ、「現役世代一律給付」を補強するひとつの視点がある。国民民主党の玉木代表が繰り返し指摘しているように、現金給付は感染防止協力金の側面もあるのだ。ところが、自粛によって経済的ダメージを被るのは現役世代であるのに対し、自粛によって救われる命は高齢世代の命が主だという不均衡がある。厚生労働省によれば、6月以降の国内感染者のうち、50代以下の重症化率が0.3%であり、60代以上の重症化率が8.5%である。死亡率も、50代以下で0.06%と統計的にはほぼ0と言えるのに対し、60代以上では5.7%と、高齢者の新型コロナ死亡率は相対的にかなり高い。

https://www.mhlw.go.jp/content/000699304.pdf

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 命の重さに、年齢は関係ない。命を守るために必要があれば、自粛をしなければならない。しかし、事実として、高齢者の命を守るために、現役世代が自粛に協力をし、現役世代が経済的にダメージを受けているのは、ゆるぎない事実である。特に非正規雇用者や学生アルバイトが、時短営業により大きな収入源を被っている。

 それだけではない。学生は、この1年、行事の中止、対面授業の中止により、「新型コロナ感染防止の観点」という決まり文句で1年間を丸々奪われたのである。さらに、小池都知事は2月、若者に卒業旅行や送別会を控えるように求めた。このような要請によって、卒業旅行や送別会を中止せざるを得なくなった若者も数多くいるだろう。若者世代は、たった1度の青春の思い出を、命を守るために犠牲にしているのだ。これはお金に換算出来るものではないし、後から埋め合わせることは困難である。全国の多くの学生が、命を守るために自粛に協力してくれていることを、私たちは忘れてはならない。

 以上の事実を踏まえて、感染防止協力金としての現金一律給付は、誰に払うべきだろうか?私は、迷わず、現役世代、すなわち働く世代と学生であると答えたい。

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