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【編集部記事】日本維新の会は「減税政党」なのか?

最近ネット上中心の議論ではありますが、昨今の経済状況の悪化などを理由に大胆な減税を求める声が高まっています。

減税に関する議論の中で、「どの政党が減税を訴えているのか」という論点が度々挙げられていますが、今回はそうした議論の中でも、昨年の衆院選で躍進を果たし今夏の参院選でも注目を集めている「日本維新の会」の政策的動向を検証しながら、同党がいわゆる「減税政党」なのかを考えていきたいと思います。

減税政党とは? 

この記事では「減税政党」を”政策目標として国民の税負担を軽減する事自体を目的としている党”と定義します。即ち、減税自体に価値を見出し、減税を行う事が唯一または最重要目標と掲げている政党の事を指します。

これに近い例としては住民税減税が党是の「減税日本」や恒久的な消費税ゼロを目玉公約として掲げる「れいわ新選組」などが挙げられます。本日の記事では「日本維新の会」が減税政党であるかどうかを公約や提出法案から分析していきます。 

日本維新の会公約2021 

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日本維新の会マニフェスト2021 

日本維新の会は2021年の衆院選では「フロー大減税」を掲げる一方・固定資産税の適正化やストック・フロー比率に言及する事によってストック(土地や株式などの資産)に対する課税を強化することに含みを持たせています。

同時に成長戦略に関する項目にタイトルとして「減税と規制改革、日本をダイナミックに飛躍させる成長戦略。」が明記され、長期的な成長戦略として減税を重視する姿勢が表れています。

公約の詳細では法人税や消費税の減税と並行してストック課税の強化を行うものの、維新の会所属議員からは「ネット減税」、即ちトータルで見ると減税になるとの事を強調していました。

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これらの事を鑑みると維新の会は完全な減税政党ではないものの、減税自体には積極的な政党の様に見えます。 

ただし、維新の会は公約内ではフロー減税の手段としてベーシックインカムや給付付き税額控除を掲げていました。これらの手段は税率自体の引き下げではなく、社会保障と税制のハイブリッド制度として現金を納税者に直接給付する制度です。

もし、ベーシックインカムや給付付き税額控除を社会保障とみるのであれば、これらの税制は「フロー大減税」とは感じない方もいるでしょう。

結果として、2021年段階の日本維新の会は納税者に対する払い戻しを減税と捉えるかによって、減税に積極的な政党かどうかとの見方は分かれそうです。 

日本維新の会公約2022 

日本維新の会参院選マニフェスト 

2日に公開された日本維新の会の参院選公約は衆院選公約と同様「フロー大減税」と「フローからストック」を掲げています。しかしながら長期的な成長戦略としての減税は今回タイトルとして抜けており、代わりに『「日本大改革」に向けた税制改革・社会保障制度改革・規制改革』が掲げられています。

これは、維新の会が長期的な経済成長戦略として減税が占めるウエィトが下がったと捉えられる文章です。マニフェスト策定に関わった足立政調会長(国会議員団)も自身のブログで、前回の公約のスローガンや公約の表現に関してこう語っています。 

いわゆる「減税政党」であるかのように誤解され、税体系の構造改革=税構造改革に係る議論を国会で少しでもしようものなら、マニフェストを反故にした等のバッシングが一部ネットで拡がりました。日本維新の会は、(減税日本のような)「減税政党」でもなければ(自民党のような)「増税政党」でもありません。 

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―足立康史衆議院議員のノートブログより https://note.com/adachiyasushi/n/n2028c4a9ce35 

即ち、今回のマニフェスト策定においては維新がまるで減税を第一に掲げるような政党だという印象を与えないような文言設定を工夫した事が伺えます。これは、政策当事者側は維新が減税政党では無いとの認識である事を示しています。

結論として、「維新は減税政党では無い」と言えるのはないでしょうか。 

「国民負担軽減法案」 

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いわゆる「国民負担軽減法案」に関する説明を行う足立康史政調会長 

維新は減税政党ではないものの、景気対策としての減税は政策オプションの一つとして掲げています。

その例として、4月21日に提出された法案『原価の物価の高騰による国民生活及び国民経済への悪影響を緩和するために講ずるべき国民負担の軽減等に関する措置に関する法律案』(通称:国民負担軽減法案)が挙げられます。 

この法案は、ガソリン暫定税率の撤廃・消費税軽減税率を最大0%までの段階的減税・低所得者に対する社会保障料減免・現在23%である中小企業の税率を(国際最低税率の)15%まで減税などの対策が盛り込まれ、大規模な減税措置が取られています。規模感としては各党の物価高対策としては最大級で、大幅な減税も盛り込まれています。 

即ち日本維新の会は政策手段としての減税は柔軟に行うものの、減税自体を政党の党是や長期の経済戦略として絶対視しておらず、フレキシブルな税制運用を念頭に政策立案を行っている党と言えるのではないでしょうか? 

国民負担軽減法案に関する詳細:https://o-ishin.jp/news/2022/04/21/12080.html 

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「減税」ではなく「購買力」重視 

日本維新の会は公約にベーシックインカムや出産費用バウチャー、教育無償化などの政策が盛り込まれ、国民(特に現役世代)の購買力や可処分所得の向上を方向性として目指している事が伺えます。

大阪でも公共事業やハコモノ行政など、政治側による裁量的な財政運用から財源を必需サービス無償化と言う形で住民に戻してきた経緯があります。

国民の可処分所得や購買力向上に繋がる減税や税制改革には積極的ですが、これは目標としての減税ではなく、手段としての減税であり、その区別がはっきりしています。

実際、維新が政権を担う大阪府では地方法人税の超過税率を設定し、増税を行っており、増税に対して絶対反対・減税の絶対的賛成という立場では無い事が主張や行動でも明らかとなっています。

本日の記事の結論としては日本維新の会は減税政党ではない、と言う事が明確に示されたのではないかと思います。 

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