言語を持たない子供たち

 「言語難民」という言葉を聞いたことはあるだろうか。日常生活においても、学業や就労においても言語は基礎であり重要である。外国人労働者が急増する21世紀の日本において、人々の言語習得をいかに支援するかということが問われている。

「言語難民」

 「言語難民」とは、生活する国や地域が変わり使用する言語も変わったものの、必要な支援を受けることができず、その言語の使用が不自由な状態に置かれている人を指す言葉として使われている用語である。その中でも特に、教育を受ける段階にある小中学生と高校生は、「言語難民」の立場に置かれると大きな影響を受けることになる。

 「外国にルーツをもつ子ども」は、この「言語難民」の状態に陥りやすい。「外国にルーツを持つ子ども」には、以下のような境遇にある子どもたちが含まれる。

  • 外国籍である
  • 保護者の両方またはどちらかが外国出身者である
  • 海外生まれ/海外育ちなどで日本語が第一言語ではない

 2014年度時点で、全国の小中学校及び高校に在籍しながら、日本語が理解できない子どもの数は37,000人にものぼる。このうち、日本語が理解できない状態にありながら必要な支援を受けられていない子どもは7,000人いるとされている。

 この数字については、「日本語指導が必要な子ども」の判断基準が明確でないこと、就学手続きを行なっていなかったり、登校拒否の子どもがいることを考慮すれば、より多くの「言語難民」の子どもが存在していると考えられる。

参考:文部科学省『「日本語指導が必要な児童生徒の受け入れ状況等に関する調査(平成26年度)」の結果について』

https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/27/04/__icsFiles/afieldfile/2015/06/26/1357044_01_1.pdf

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なぜ言語は重要か?「母語」と「第二言語」

 「言語」は子どもの発育にあたって重要な要素である。言語は子どもが周囲の養育者や大人とコミュニケーションを取る手段であるからだ。一般的に、日常会話をできるレベルの外国語を身につけるには1~2年程度が必要だとされている。

 また、勉強したり思考したりするための言葉や、抽象的な概念を獲得するために必要な「学習言語」の習得にはさらに5年から7年もの時間が必要となる。生活言語よりも深いレベルの言語を身につけられなければ、会話はできても相手の心情を理解したり、自分の感情を言葉で発露させることが難しくなり、社会生活に困難をきたしてしまうのである。

 また、「バイリンガル教育」が一世を風靡した頃もあったものの、現在では第二言語を身に付けるには母語の発達が一定のレベルに達していることが重要だというのが通説である。母語の熟達度によって第二言語の伸びが予測できるとする研究結果もある。(カミンズ 2011)

「言語難民」の要因

 では、このように「言語難民」の子どもたちが生まれてしまう要因にはどのような要因があるだろうか。

人手不足

 第一に、人手不足が深刻である。第二言語での生活言語、そして学習言語の発達を手助けするには、一般の教員ではなく「日本語教育」の資格を持った指導員が子どもを教えることが望ましい。しかしながら、日本語教員自体が不足しているのに加え、その多くは海外で高校生から大学生を教えることに従事しており、日本国内で日本語学習を切に必要としている人々のもとには人材が足りていないのだ。

資金不足

 次に資金不足である。日本国内で「言語難民」の子どもたちや、国籍/人種的背景から居場所がないと感じる人々を支援している団体はいくつかあるが、募金やクラウドファンディングで資金を補っており、厳しい財政状況にあることは確実である。政府を主体とした各教育機関での支援を加速させるべきだろう。

機会不足

 最後に考えられるのは、最初の「言語難民」の統計でも上げたような、見落とされてしまったり支援が必要ないと判断されてしまう子どもたちがいることである。言語学習に関する良くある誤解として、「耳で聞いていれば自然と身に付く」という考え方があるが、その言語の環境に身を置いて生活しているだけで言語を習得できるのは、10歳頃までだとされている。

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 「放っておけば覚えるだろう」と支援を受けられず、本人も教室では分かったふりをしているが、実際には授業内容をほとんど理解できていなかった、という子どももいるという。子どもの言語レベルをきちんと見極め、必要な支援を提供するきめ細やかさが必要なのである。

日本社会の未来のために

 就労や婚姻によって日本に移住する外国人はこれからますます増えていくと予測される。そこで子どもたちがスムーズに日常生活を送れるように言語支援をすることは、将来の日本の労働力や、いくつかの言語を身につけたグローバル人材が増えることに繋がるだろう。日本社会の未来を考えても、子どもたちの言語に投資をすることは有用である。

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Alice編集部員

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おとな研究所 編集部員
ジェンダー/セクシュアリティや外国人の権利問題に強く関心を持っています。社会問題についての記事が多くなると思いますが、おとな研究所に新しい風を吹かせることができればと思います。

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