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「若者と大麻」議論をするうえで考えなくてはいけないこと

昨日27日、自宅アパートで大麻を栽培していたとして、中越地方在住の女子生徒(19)が大麻取締法違反(栽培)容疑で逮捕されたというニュースがあった。新潟地検長岡支部は同日、同法違反の非行内容で生徒を家裁に送致し、生徒は「自分が使うためだった」と容疑を認めているという。

アパート階段踊り場で大麻栽培 女子高校生を逮捕「自分で使うため」 新潟県警 (毎日新聞)

https://mainichi.jp/articles/20200727/k00/00m/040/243000c

インターネット上を中心に衝撃が走ったが、この類のニュースは決して初めてではなかった。「高校生」と「大麻」という一見何の関係もなさそうな二つの事柄から、この問題の本質を見ることができるかもしれない。

既に今年、同様のことが起きていた

時は、まだ新型コロナウイルス感染症の拡大が序盤だった2月に遡る。今回のような事件が、既に起きていたのだ。

高校1年生に大麻所持の疑い 【情報と多様性の時代で】(おとな研究所)

https://otonaken.themedia.jp/posts/7734358

2月9日、奈良市内に住む公立高校に通う高校1年生(16)と私立高校に通う高校1年生(16)が、大麻取締法違反の疑いで奈良県警良西署に逮捕された。

この事件の経緯は以下の通りだ。

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公立高校に通う生徒の親が8日夕方、「息子が大麻を密売して儲けると言っている」と110番通報し、署員が駆けつけたところ大麻栽培用のプランターや土、電球、加湿器などが発見されたという。

またこの際に生徒が「前日に友人から貰って吸った」と語ったことから私立学校に通う生徒に家宅捜索が入り、乾燥大麻や大麻の種が押収された。

容疑は公立高校に通う生徒が7日での所持、私立学校に通う生徒が9日での所持で、それぞれ乾燥大麻5グラム以上を保持し、パイプなども持っていた。

2人とも「吸うために持っていた」と容疑を認め、入手経路については「インターネットで手に入れたり、大阪で購入したりした」と語った。

一方今月逮捕された女子生徒の容疑は、3月下旬から7月7日までの間、アパートの階段の踊り場で植木鉢に植えた大麻草3本を栽培したというもの。

海外のインターネットサイトを通じて種を購入し、栽培方法もインターネットで調べ、水や肥料をやっていたというのだから、開いた口が塞がらない。

これらの事件は、インターネットという場は便利な面も多い一方で、犯罪の温床にも十分なり得るということを如実に物語るものだ。一般的に、学生生活を送っている高校生は違法薬物に自らの意思で手を触れることは困難である。

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だがインターネットでは、入手や栽培方法まで身近なものにしてしまう。極めてリスクが高く、保健体育科などでの薬物に関する教育でしっかりと確認しなければならなくなるだろう。

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「大麻先進国」首脳も示す懸念

大麻先進国から忠告? オランダ首相、カナダ高校生に「絶対手を出すな」(AFPBB NEWS)

https://www.afpbb.com/articles/-/3194832

2018年にカナダで嗜好用大麻が一部解禁された際、首都トロントで行われた記念イベントに参加したオランダのマルク・ルッテ首相が地元高校生に対して語った言葉が、おそらくこれらの事件には適切なものだろう。

マルク・ルッテ首相 (オランダ)

彼は次のように述べた。

「今日購入できる大麻はずっと強烈だ」

「特に若者には健康に良くない」

「ドラッグに関する最善の策は一切使用しないこと。古くさく聞こえるかもしれないが、あえて言わせてもらおう。絶対に手を出すな」「

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もしやるのであれば、ここから先の麻薬には移ってはならないと心得ておきなさい」

カナダが嗜好用大麻を合法化 G7で初、犯罪組織排除(日本経済新聞)

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO32066280R20C18A6FF2000/

このカナダにおける解禁は世界を驚かせたが、その目的は犯罪組織による不法な取引を防止するために国が管理すること。18歳以上には最大30グラムの乾燥大麻の所持を許可する一方、18歳未満の未成年者への販売や譲渡には最大14年の禁錮刑を科す。

決して未成年者が使うことは想定されていない。

一方オランダは1970年代から大麻の販売が部分的に認められている、いわゆる「大麻先進国」としても有名だ。

そのような国の首相ですら、若者の大麻使用には消極的どころか否定的な姿勢を貫いている。

これは、年齢層の低下が世界的問題になっていることの証左でもあるだろう。

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植木鉢に植えられたアサ(イメージ)

日本の政治議論の中でもたびたび上がる

医療用大麻をどう考えるべきか (Web論座)

https://webronza.asahi.com/science/articles/2016082900002.html?page=1

2016年の参議院議員選挙で、新党改革(同選挙で全議席喪失・解党)が「医療用大麻合法化」を公約に掲げて選挙に臨んでいたことは記憶に新しいかもしれない。特に東京選挙区で立候補していた元女優の高樹沙耶氏は「先進国7か国のうち6か国で取り入れられている」「予防医療にも貢献できる」として、「医療大麻の導入は、40兆を超える医療費の削減になる」とまで豪語した。

元女優、新党改革の高樹沙耶氏「医療大麻で医療費削減を」(産経新聞)

https://www.sankei.com/politics/news/160622/plt1606220074-n1.html

しかしこの翌年の2017年4月、高樹沙耶氏は大麻を隠し持っていたとして大麻取締法違反(所持)で有罪判決を受けている。

高樹沙耶被告 大麻所持で有罪判決後、公園で涙の会見 「逮捕はありがたい」「ふざけた気持ちで大麻に向き合ってない」(産経新聞)

https://www.sankei.com/affairs/news/170427/afr1704270020-n1.html

医療用大麻の合法化はもちろん、嗜好用の合法化を求めることや選挙で訴えることは自由だが、それらは現行法の範囲内で行うべきなのだ。

拙速な判断はできない。十分な議論を

「医療用」を訴える立場の人は逮捕され、若年層の摘発事例も増加。さらに大麻先進国でも懸念が示される。このような状況で、単純な判断は到底不可能だろう。

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医療費の削減や社会政策の自由化は重要なことではあるが、安全性・非犯罪性を確認するということは大前提だ。我が国においても冷静な議論がなされることを強く望む。

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