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国民民主「飲食店に懲役」デマはなぜ広がったのか?

 12月2日に国民民主党が国会に提出した新型コロナウイルス特措法改正案には、確かに、6か月以下の懲役を含む罰則が盛り込まれた。しかし、その範囲を巡り、SNS上やニュース記事上で多くのデマが散見された。

 後述の通り、国民民主党案は飲食店に懲役を科すことはないので、東京新聞の労働組合(=東京新聞の記者)は、法律すらまともに読めないか、そもそも法案を読んでいないということになる。

 新聞記者でさえこのようなデマを拡散しているため、一般人の間にもデマが広がっている。

 しかし、国民民主党が12月2日に出した法案では、指示・命令・罰則の対象となる「施設管理者等」(改正案45条5項)に「飲食店」は含まれていない(特措法施行令11条各号参照、令和2年12月2日当時)。なお、改正前の特措法施行令で要請の対象になっていた施設は、①学校、②保育所・介護施設、③建築物の床面積の合計が千平方メートルを超える大学・劇場・(食品売り場を除く)百貨店・ホテル・図書館など、比較的大型の施設である。

  今回は、なぜこのような誤解やデマが広まってしまったのかという点について考えるとともに、今後各政党が政策提案をする際に同様の事態となることを防ぐにはどうすべきかも考察したい。

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法案提出後に特措法施行令が改正されてしまった

 実は、国民民主党が法案を提出した時点では、飲食店が「施設管理者等」の該当「施設」に含まれておらず、仮に特措法45条等を改正したとしても飲食店が罰則の対象となることはなかった。実際に、国民民主党の山尾志桜里党憲法調査会長は、「国民民主党の特措法改正案は、ライブ会場のような大型施設を命令の対象として想定したものだ。飲食店を罰則の対象に含めることは考えていない。」と解説する。

 ところが、年が明けた令和3年1月7日、施行令が改正されて、飲食店等まで、「施設管理者等」の「施設」に含まれてしまったのだ。そうすると、現行の施行令を前提とすると、飲食店も「施設管理者等」となり、上記のデマがまことしやかに聞こえてしまう。しかし実際は、国民民主党案は改正前の施行令を前提とした法案であり、そうであれば、飲食店は罰則の対象から外れている。

 元々飲食店が特措法の「施設管理者等」の対象に含まれていなかったのにもかかわらず、「国民民主党は飲食店に罰則を課そうとしている、けしからん」というデマが広まっていた。そこに特措法施行令の改正で飲食店も対象になったことがあいまって、更にデマが広がってしまった。あわてて玉木雄一郎代表らが火消しに乗り出していたが、国民民主党としては思わぬ痛手を被った形となった。

もっと悪質なデマを流す三浦瑠璃氏

 国際政治学者の三浦瑠璃氏が、このようなことを書いている。

 刑事罰については国民民主党の玉木雄一郎代表が「既に特措法の中に刑事罰はあるんだ」と主張していますが、そもそもの解釈が間違っています。従来の特措法における刑事罰というのは、それこそエボラのような猛威を振るう感染症が拡大し、物資難に陥って国全体が騒乱状態に陥っているところ、例えばヤクザ集団による違法な買い占めが行われ、高額転売の闇市が跋扈したような場合が想定されている。それでさえ、実態を見極め勧告したうえでの懲罰です。家族が心配で会いに行ってしまった、というような個人の行動に懲役を課す発想とはわけが違う。
https://bunshun.jp/articles/-/42895?page=3より引用)

 「家族が心配で会いに行ってしまった、というような個人の行動に懲役を課す発想」と述べているが、あくまで国民民主党の罰則案は、「要請・指示・命令のどれにも従わない、飲食店を除いた大型の施設管理者」に向けられたものである。国民民主党案を批判するのは自由であるが、批判の前提の事実認識すら間違っている三浦瑠璃氏こそ、「そもそもの解釈が間違って」いる。三浦瑠璃氏の不勉強に、驚き、呆れるばかりだ。

デマや誤報の拡散をどのように防ぐか

 このように、政策をめぐるデマや誤報は細部に関するものが多いため、一度広がってしまうと訂正が難しい。国民民主党は、そもそもデマが広まらないようにするため、元から罰則の対象を詳しく説明すべきであった。「罰則」が自分や身の回りに課されるのではないかという不安が、デマの流行を早め、「罰則」という言葉が「飲食店」という対象でないものとともに一人歩きする事態となった。

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 一般的にも、デマや誤報が起こらないようにするためには、事前に疑問や誤解が生じやすいところをチェックし、一般人が聞いて不安を抱かないようにチェックすることが必要である。

 他方、三浦瑠璃氏のように影響力のある者がメディアでデマを流している場合、訂正の要請をした上で、場合によっては法的措置を取っても良いだろう。一般人と違い、社会的に影響力を持つ者は、自己の発言に対し相応の責任を取るべきだからである。ツイッターで見たからデマだと気付かなかった、では済まされない。

 

 

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