首相公選制は万能薬ではない

首相公選制とは?

我が国の政治体制は近年、弊害が指摘され続けている。官僚支配、決められない政治、既得権に阻められる改革、スピード感の無さ。これらは確かに問題であり、我が国の成長を阻害するものである。これらの問題に対して、多くの識者は現在、国会が議員から総理を選ぶ、「議院内閣制」では無く、大統領制度と同じく、国民が直接総理大臣を選ぶ「首相公選制」が解決策と指摘する。公選で選ばれる首相は、民意の力をバックに、強いリーダシップを発揮する事が期待されている。

しかし私は我が国の国体である立憲君主制との整合性、権力の暴走、そして一般議員のレベルの低さを総合的に鑑みて、日本での首相公選制導入は危険すぎると考える。

立憲君主制国家の主旨、日本の国体に反する

公選で選ばれた総理は元首ともみなす事が出来る。それは「国民の総意である国民統合の象徴」である天皇陛下の専権事項を奪う事となり、国家権力と国家権威を分離する立憲君主制の主旨が崩壊する。既に他の立憲君主より権力が無い天皇陛下が唯一保持している象徴的地位まで奪いかねない

現憲法下での天皇陛下と総理大臣の上下関係は明確にはなっていないが、内閣の大臣の親任式では、大臣が陛下より深く頭を下げる、そのような内政及び外交の一般的な手続きを鑑みると事実上陛下が内閣より「上」の立場に居る事は暗黙の了解となっている。これを首相公選制にすると、反天皇主義の人間が当選すると、公選の元当選した「民意」を背景に、この様な前提や了解が崩れる事は容易に考えられる。結果として皇室の権威が下がる事は十分あり得る。

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国会とのねじれが生じる

選び方にもよるが、選挙結果によっては選出される首相と与党が異なるケースは十分にあり得る。例えば、2012年の総選挙では占有率61%で衆院選に圧勝した自民党は比例代表では27.7%の得票しか得ていない。首相公選制が導入されれば、決選投票が導入される事であろう。決選投票で日本維新の会や未来の党、みんなの党が同一の候補を支援する事に合意できれば、議会与党と選出首相が異なる勢力になっていた可能性は十分ある。実際に行政府のコントロールは多大な権力と利益がもたらされるので、公選制がとられている現在の知事選に見られるように「相乗り」が多発する事態は容易の想定できる。

また、決選投票が無かった場合は、国民28%のみの信任を得ている人間が総理となる事となる。こんな結果は首相公選制の意図に反するし、首相公選制の意図である「強い民意」とは言えないだろう。

結果として、議会とのねじれが生じた場合、米国の議会のように党議拘束を外さない場合、本当に「何も決まらない政治」が訪れる。実際に多発した「ねじれ」と理由にイスラエルで一時期導入された首相公選制度は2001年に廃止されている。

議院内閣制の伝統から生まれる独裁

ねじれが生じていない場合、議院内閣制の権力を立法府から独立させると、一般的な大統領制よりも権力が集中する事となる

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一般的な大統領制度は;

  • 立法府が実際に立法を行い、それを行政府が施行する
  • 予算編成、宣戦布告等国家の根幹に関わる大権の決定権は議会が有する
  • 議会を解散する事が出来ない場合が多い
  • 立法府と行政府は対立概念となっている

これに対して、議院内閣制(ウェストミンスター制度)は:

  • 立法の事実上の代表が行政府をコントロールする
  • 結果として行政府が立法する場合が多い
  • 議会と行政府は一体でないといけないので、国家大権は行政府に置かれているが、事実上立法も認めていることとなる。
  • 立法府の信任が無い行政府は権力を失う
  • 立法府と行政府は一体として協調を憲法上要請される

首相公選制を現在の日本で行うと、任期4年の独裁者を認める事になる。議院内閣制の権力を持った行政府の長が立法から独立し、独自で重大な決定をゴリ押しできる。党議拘束があるので、議院内閣制での一番重要な「行政府の選出」が奪われる以上、そして一般的な大統領制の権力が無い日本の立法府の存在意義がなくなる。

内閣は議会から選出できないので、内閣不信任案は存在しない。結果として議会は行政府を全くコントロール出来ない。唯一可能な解決策として違法行為を行ったと断定できる場合のみ、弾劾出来る事となる憲法改正が必要となる。しかしそれでも「議会の信任」と比べるとハードルが異常に高いのは明白だ。

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議員立法が全くない現状ではシンクタンク機能が集中している省庁が何事も決定できる事となるが、かと言って、立法府が予算等を編成する能力とインフラは無い訳である。結果としてリーダーシップが弱い首相が当選すると、今まで以上に官僚の言いなりとなる

改革を行うには

停滞する日本の現状を打破するには、改革を行う必要性がある。それには民意をバックにした強力なリーダーが必要ではある。しかし、議会で国民の支持を得ている政党が大規模な改革を行う事は議院内閣制でも例はある。ブレア政権や小泉政権はそのいい例である。問題は議院内閣制では無く、日本の政治家の「質」では無いか?しがらみや既得権まみれの政治家が公選制で選ばれても何も変わらないだろう。しかし、議員内閣制でしがらみの無い、既得権に囚われないリーダーが生まれれば大胆な改革が行われるだろう。既存の制度は完璧とは言えないが、政治体制の根本すら破壊しかねない首相公選制は慎重に議論する必要性がある。

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西豪州在住の高校三年生のアカウントです。主に経済や維新についての記事を掲載していきます。

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