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「真水48兆円」国民民主党のコロナ経済対策案は、合格点を超えた!

相当な規模の予算が必要

 内閣府は、11月27日、令和2(2020)年の7~9月期の需給ギャップ(GDPギャップ)が、マイナス6.2%であると発表した。需給ギャップとは、実際の需要と同じ値となるGDPと、潜在的な供給力との差を示すもので、景気の良しあしの判断材料になる。

 金額にすれば、年換算で34兆円ほどの需要不足である。この需要不足を解消するためには、かなり大規模な財政出動を年内に行わなければならない。第三次補正予算では、この30兆以上のギャップを埋めるために、真水40兆円規模の予算が求められる。

二度目の一律給付は非効率

 国民民主党と言えば、現金10万円の一律給付を最初に提案したことで有名だ。現金一律給付は、3月~4月時点の日本の状況に適合した政策であった。4月段階では、①コロナの脅威が未知数であり、国民全体の協力を得るため分断を起こさない必要があること、②本当に困っている人のため直ちに現金を届ける必要があること(所得制限を設けると給付までに時間がかかる)、③比較的高所得の医療従事者が受け取れないのは不公平感が残ること、等の理由から、10万円を一律に給付することとなった。最初に提案したのは国民民主党、ついで日本維新の会であるが、これが公明党を動かし、その公明党が与党全体を動かし、実現した。3月中ずっと現金一律給付に反対し、コロナそっちのけで「桜を見る会」問題ばかりを予算委員会で取り上げた立憲民主党は、4月になって一転賛成しだし、10万円給付が実現すると実績を国民民主党から横取りした。このことも重要なので、読者のみなさんには覚えていてほしい。

 しかし、現金一律給付を再度行うことは現実的ではない。なぜなら、今は経済全体がストップしている4~5月の状態とは異なり、仕事を求めれば非正規などの一時的な仕事で急場をしのぐことも可能であるからだ。また、現金給付を経済の回復すなわち消費の回復に直結させるためには、比較的消費性向の高い低所得者に重点的に配布した方が効果的であるからである。さらに、コロナの脅威についても全体像が明らかとなってきており、コロナが「未知の恐怖」であった4月とは状況が異なる。

 さて、国民民主党は、今回の経済対策に際して、現金一律給付を盛り込まなかった。成長にコミットできる予算とするために効果的に予算を配分しようと考えたからであろう。この決断については、前向きに捉えたい。まずは、国民民主党の3次補正予算案について、総評を述べた後、目玉となる政策を取り上げたい。

予算規模「真水48兆円」 規模の面では合格点を超えた!

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 まずは、全体像を確認したい。日本の年換算のGDPギャップ約35兆円をカバーする真水40兆円超の予算規模となっている。現在日銀が行っている量的緩和と協働して行えば、かなりの経済効果を期待できるだろう。

 項目別に見ると、家計支援に20兆円、雇用所得補償に3兆円と、まずは何よりもコロナで苦しんだ生活者・納税者に寄り添った内容である。また、学生支援に3兆円をかけており、若者向け政策を重視してきた旧国民民主の路線をしっかりと継承している。

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目玉① 消費減税5%(1年間の時限措置)

 旧国民民主党が作成した100兆円の財政出動提案にもあった、時限的消費減税が今回も残った形だ。

 コロナで落ち込んだ消費を上向かせるために、時限的に消費減税をする。そももそも、日本で「コロナ不況」が深刻化した背景には、令和元年(2019年)10月に行われた消費増税がある。消費増税で景気が冷え込んでいたさなかに、最悪のタイミングでコロナ禍に突入した。その結果、「コロナ不況」はリーマンショック級の事態となった。安倍前首相は、リーマンショック級のことがあれば、消費増税を延期すると何度も明言していた。そうだとすれば、増税後にリーマンショック級の事態が起こった今回の場合には、一旦減税するのは必然であると言える。

 また、消費税は低所得者ほど所得に対する負担割合が高くなる逆進性の強い税である。したがって、消費減税は、中低所得者やコロナで収入が落ち込んだ人を支える効果も期待できる。

 なお、国民民主党内には、財政再建の観点から、議員・支持者ともに恒久消費減税に慎重な意見が根強い。そのため今回は、時限的消費減税で党内の合意を取り付けたものである。もし、時限的減税が実現し、その効果が予想より大きかった場合には、恒久減税への理解も広がるかもしれない。

目玉② 給付付税額控除(所得税の還付10万円)

 消費減税に並ぶ最大の目玉政策が、10万円の減税策である。まずは、現役世代に一律で10万円所得税の還付を行う。10万円還付を受けるのは、10万円をもらえるのと同等の効果がある。所得が前年より大きく下がり、税負担が重くのしかかりやすい中で、実現すれば納税者にとってありがたい政策になるだろう。

 なお、実施方法は給付付税額控除の方法を取ることとなっている。これが実用化されれば、コロナ収束後も低所得者に対する消費税の負担軽減策として給付付税額控除を用いることができそうだ。

目玉③ 低所得者に20万円給付

 しかし、低所得者はそもそも所得税を10万円納めていない場合がある。また、低所得者は消費性向が高いため、給付したらその分消費に回ることが期待できる。したがって、国民民主党は低所得者に重点的に20万円の給付を行うことを考え出した。経済学的にもかなり理にかなった政策だ。

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 ここで、所得税還付と現金給付の関係を整理したい。まず、図の1階部分が、現役世代であれば誰でも対象となりうるのが、所得税還付10万円(給付付税額控除)である。しかし、これでは十分に低所得者が救われないため、2階部分として低所得者に限定して20万円を給付するというものだ。玉木代表の説明によれば、両者は重複して受け取れないというのが正しい理解となりそうだが、現役世代であれば、「10万円」か「20万円」のいずれかの恩恵を全員が受けられるということとなる。

まとめ

 これだけの規模の補正予算案を、野党第4党が比較的短期間でまとめあげたのは大きい。他には、維新の会が、より完成度を高めた消費減税法案を出しているが、国民民主・維新以外の野党からは目立った提案がない。むしろ、今国会は、コロナ不況で苦しむ国民を横目に、左派野党(立憲、共産、社民、以下同じ)が日本学術会議の任命拒否問題、「桜を見る会」問題で予算委員会の質問時間を浪費した。一方で、自民党も自ら増額を主張した予備費の使途を決めきれずにいるなど、経済対策を十分に行っているとは到底言えない状況である。

 確かに、時限的消費減税を行った後いきなり税率を元通り10%に戻すのか、10万円還付と20万円給付の関係等、政策そのものに粗っぽさがある面は否めない。しかし、予算規模と給付先を最も適切に示したという点で、国民民主党が今回出した対案は、素晴らしい。今後、政府与党に提案を重ねたり、野党間で賛同する政党を増やしたりすることで、今回の補正予算案を少しでも実現させてほしい。

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