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経済で読み解く:米中対立の行く末は?

冷戦の終結は、自由民主主義体制の勝利とも言われ、90年代は社会全体が国家間対立について、既に集結したものであり、楽観的な見方が支配的であり、一部の識者は「歴史の終わり」とまで言うほどであった。国家間対立の終局論は同時多発テロやテロとの戦いが過熱した2000年代でも信じられていた。しかしながら、近年の中国の経済成長と外交姿勢は国家間対立が果たして終焉したのか、大きな疑問を浮き出させた。

実際、現在の米中対立は近年ますます過熱してきているが、果たしてそれが紛争までに発展するのか、そして中国が米国を抜く日があるのか?今日はその可能性を検証していきたい。

中国のGDPは18兆ドルを超え、GDP約21兆の米国に迫る規模となっている。中国は莫大な資本投資と人口成長によってこれまで経済成長してきてていたが、その双方でこれから暗雲が差し掛かる。それは、「中進国の罠」だ。中進国の罠とは、絶対貧困から政府主導の資本投資による成長(開発独裁が多い)が一定進んだ後、産業の自由化や財産権の尊重、法の支配などの国家制度が完備されていない国の成長が一気に鈍化し、先進国との差が縮まらなくなる事である。(経済学的要因は筆者の前記事に書いてあるのでそれを読んでいただきたい。)

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厳密にどの点で成長が終わるかは国々によって異なるが、現時点で大体一人当たりGDP一万から一万二千米ドル程度の地点で訪れる。下にある諸国の一人当たりGDP推移をみて頂きたい。

出典:IMF

この図には複数タイプの国がある。先ず、一番成績が良いチリやトルコはショック無しに中進国トリガーが発動し、相対的な低迷が開始した。次はロシアと南アフリカで、リーマンショックや政治体制の急変など、ある種のトリガーとなり低迷が始まり、そこから抜け出せなくなった国家。そして最後にメキシコとブラジルはこの罠に数十年単位ではまっており、このグラフだけではいつ罠にはまったのか分からないのだ。

グラフの一番下に見える中国は2019年時点一人当たりGDPは約8500ドルであり、米国の約一割五分と言ったところだ。しかしながら、この成長は他国を見る通り、必ずしも継続し続けられるかどうかが不明だ。抜けられた国の多くは台湾や韓国など、一時期はまっていただが、先進国並みの貿易・規制・国有企業に対する経済自由化を行ったと同時に抜け出した国が多く、一党独裁体制を堅持する国では難しいだろう。更に第二次大戦後、人口5000万人以上の国家でこの罠にはまらなかったのは唯一日本である。大国であればあるほど自由化が難しいと言う側面があるのだろうか。

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中国は将来にわたる発展は約束されていない。これから果たしてどこまで成長し、米国に対抗し得るのか。この続きは来週「人口」の観点で見ていきたい。

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