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日本維新の会は、『統治機構改革』を一丁目一番地に掲げる政党として知られている。
実際に、日本維新の会のオフィシャルHPにも掲載の『綱領・基本方針』では、基本方針の一番目に『統治機構改革』を掲げている。
1.統治機構改革
憲法を改正し、首相公選制、一院制(衆参統合)、憲法裁判所を実現する。地方課題については地方自治体が国家の意思決定に関与できる新しい仕組みを創設する。
綱領・基本方針|日本維新の会について|日本維新の会
日本維新の会の「統治機構改革」の基本理念は、「権限と責任の明確化」であり、例えば「大阪都構想」は、広域行政の権限と責任を明確化し、二重行政の解消することを目指す改革であった。
今、ある「事件」をきっかけに、統治機構改革(Governance system reforms)を掲げる、日本維新の会自体の「ガバナンス」に、疑問が呈されている。
守島正市会議員の謝罪対応の経緯
先日、ツイッター上で「とある事件」が発生した。
きっかけは、日本維新の会学生部員と、政治アナリストとして知られる渡瀬裕哉氏のツイッター上でのいざこざから始まった。
今回は以下に簡単に経緯をまとめた。
- 渡瀬氏がワシントンポスト記者のツイートを「あなたはジャーナリストとは言えない」と批判
- 学生部員が渡瀬氏の批判に「ティーパーティーの専門家が決めることではない」と反論
- 渡瀬氏が、学生部員が、ワシントンポストとティーパーティー(渡瀬氏が支持する政治団体)との政治的対立を知っていて、政治的に喧嘩を売ってきたと誤解し、暴言に近い反論
- 学生部員がその誤解を知らず渡瀬氏の反論に皮肉を込めて反論
- 渡瀬氏が学生部員に暴言(「勘違いしたガキ」等)で攻撃
- 渡瀬氏が学生部員をブロック
- 守島正大阪市会議員(大阪維新の会政調会長・次期衆院選候補)が渡瀬氏に謝罪
※ここまでの経緯詳細は以下Togetterまとめに詳しいので後ほどご参照頂きたい。(まとめに組み込んでいる第三者の一般人の投稿の選定には筆者の主観が含まれている点はご了承下さい)
【参考】ワタセユウヤ氏と維新学生部員のやりとりに介入した守島正市議(大阪維新の会政調会長) – Togetter
この守島氏の謝罪対応は、予想以上の波紋を呼び、本おとな研究所にもすでに三件の記事が掲載され、国会議員の音喜多駿議員までもがブログで記事を掲載するほどまでになった。
その後、渦中の守島氏は、翌日ツイッターで自身の謝罪について以下の通り弁明した。
想定以上の反応なので一言。
学生だからとか、相手がどうとかではなく、組織内の人と取引先が揉めれば、先方に謝るのが普通。一般企業も然り。
謝るべきが誰という話はあるが、先方からクレームを受けた立場として対応することも普通。
身内庇って関係切るとかはなく、身内のことを考えてもそうすべき.
2021年8月4日21:50
取引をやめるべきか否かは、それこそもっと上位判断であり、僕の範疇でもないが、先方がその判断レベルに達している以上、現場でできることは事を納めることだけ。
それは、揉めた身内のためにもそうすべきであったと思ってます。
2021年8月4日22:00
本ツイートは、日本維新の会支持者などからも多くの批判が集まり、ツイートの数時間後に削除された。
現時点で、守島氏からは、ツイートを削除をした理由の説明や、改めての見解の表明は、一切なされていない。
守島正市会議員の謝罪は適切だったか
ここで注目したい問題は、本当に今回の守島氏の謝罪は適切だったのだろうかという点である。
筆者は、単なる「議員の介入」や「言論の自由」に議論は留まらないと考えている。
本記事では次の二点について疑問を呈したい。
①謝罪をするのは守島正市会議員であったか
②謝罪の方法(プロセス)は適切であったか
※謝罪すべきかどうかの是非は他記事に譲る。
①謝罪をするのは守島正市会議員であったか
筆者は、今回渡瀬裕哉氏に謝罪をする主体は、守島氏ではなく、藤田あきら学生局長であったと考えている。
当該学生部員が所属している日本維新の会学生部は、日本維新の会学生局内の組織であり、学生局は、学生局長の藤田あきら大阪市会議を始め、他十数名の協力議員が、監督している組織である。
学生部への監督責任は、学生局長の藤田あきら市会議員にある。
日本維新の会学生部(ISHIN STUDENTS)とは | 日本維新の会 学生部
実は、今回、渡瀬裕哉氏に謝罪をした守島氏は、学生局長でもなければ、学生局員でもない。
また、日本維新の会の音喜多駿参議院議員(学生局員)は、自身のブログで本件について、議員が介入する事態であると評価している。
学生の自由と大人の責任。政党学生部の発言・活動に議員が介入するのは、言論封殺や圧力なのか問題 | 音喜多駿 公式サイト
音喜多駿議員が説明する通り、党として、介入すべきと判断される案件であれば、なおさら、本来本件の対応は、藤田あきら学生局長を始めとする学生局の監督議員がするのが妥当でないだろうか。
※現時点で、藤田あきら学生局長は、本件について守島氏には謝罪をしているが、渡瀬氏には謝罪を表明していない。
当論点は、守島氏が自身のツイートで以下の通り弁明している。
謝るべきが誰という話はあるが、先方からクレームを受けた立場として対応することも普通。
守島氏の主張をそのまま読めば、守島氏が渡瀬裕哉氏から(クローズドな手段で)直接クレームを受けたから自分が対応したということである。
しかし、党としてオフィシャルな対応をするのであれば、責任者にエスカレーションするのが当然であり、仮にクレームを受けた当事者である守島氏が謝罪をするように渡瀬氏から要求があったのであれば、事前に学生局等の関係組織との調整を踏まえて対応すべきである。
仮にそれがなされていないのであれば、守島氏の対応は、守島氏の権限を超えた行為であると言わざるを得ない。
守島氏の独断で一方的に渡瀬氏を被害者だと決めつけ、学生部員を断罪して良いわけがない。
②謝罪の方法は適切だったか
今回の一件がこのような大きな波紋を呼んだ原因は、ひとえに守島氏の謝罪方法にあったと考える。
守島氏は、渡瀬氏からクレームを受けた後、朝6時半頃に謝罪のツイートを投稿しているが、この間、当該学生部員に状況の確認をしていたのだろうか。
学生部員と渡瀬氏が揉めたのが23時頃で、守島氏が謝罪をしたのが翌朝の6時半頃であること、当該学生は海外在住で日本とは時差があることを考えれば、守島氏は、渡瀬氏への謝罪の前に当該学生とは事前の会話をしていないと推察される。
ここで、守島氏は「一般企業」を引き合いに出して自身の謝罪を正当化する主張をしたが、仮に一般企業において、自分よりも立場の低い社員が取引先から罵倒されたとして、当該社員から事情も聞かずに、いきなり取引先に一方的な謝罪をするなんていうことは常識的にあり得るだろうか?
そんなことをしてしまったら最後、その社員(守島氏にあたる)は二度と信頼されないどころか、それが原因で飛び越された社員(学生部員にあたる)は退職しかねないのではないか。
通販等におけるリスクマネジメントのコンサルティングを行っているHAZS株式会社の東弘樹氏は、当社HPに掲載のコラムで、クレーム対応の方法について以下のように説明している。
「謝れ」に反射的に謝ってはいけない
苦情・クレームがあった時、まずは自社に非があるかないのかを確認する必要があります。 自社に非がない場合のモンスタークレーマーからの要求には「ゼロ回答」。不当な要求には一切応じないという姿勢を、スタッフ全員で徹底するべきです。
謝罪も同じです。まだ状況がわからないにも関わらず、相手からの謝罪の要求に対して「申し訳ございません」と安易に謝罪すれば非を認めたことになり、モンスタークレーマーが付け入る隙を見せることになります。
『クレーム対応でよくある5大表現への対処法「上司・責任者を出せ」「誠意を見せろ」』2014年6月3日
まずは、謝罪をする前に、状況を確認することがリスクマネジメント上は当然のはずだ。
守島氏は自身の以下ツイートで、「揉めれば謝るのが普通」と弁明しているが、反射的に謝罪をする前に、まずは学生部員と会話をするべきだったのではないだろうか。
学生だからとか、相手がどうとかではなく、組織内の人と取引先が揉めれば、先方に謝るのが普通。一般企業も然り。
守島氏は「一般の企業」を持ち出して自身の謝罪を正当化しようとしているが、おおよそガバナンスの取れた一般企業ではこのような対応はしない。
加えて、揉めたら謝るのが普通という人に国政の舵取りを任せられるだろうか?
外交では、各国のタフネゴシエーターと、様々な政治的な駆け引きを行うことがあるだろうが、いわゆる「土下座外交」をしてしまいかねない不安すら感じてしまう。
そういえば、2019年7月頃、守島氏が百田尚樹氏と揉めた際に「何か責任を取らないといけないんですか?」と強気で反発し「勝手に裁いてください!」と言い放っていたのは記憶に久しくない。
守島氏が言う通り、「取引先と揉めたら謝る」のであれば、守島氏も百田氏(当時『維新でナイト』に出演する等していた)と揉めた時に、即座に謝罪をすべきではなかっただろうか。
これは、ダブルスタンダードだと言われても仕方がないだろう。
また、守島氏がしゃしゃり出て火に油を注いだという点でも、今回の守島氏の対応は、百田氏との件と重なると感じる人は少なくないだろう。
守島正は襟を正せ
当該学生は、守島氏の一連の対応により、本件について謝罪も何も言い出せなくなってしまっただろう。心から同情する。
大人の責任や組織論を語るのであれば、まずは守島氏が本件の総括と反省を行い、襟を「正す」べきではないだろうか。
こういった些細な出来事から、政党の組織運営やガバナンスに疑問が向けられる。
維新の創設者である橋下徹氏は、以前GOTOキャンペーンの評価について述べる際、以下のように主張していた。
政策はそれを実行する仕組み(組織体制)を整えることとワンセット。今回「も」国と地方の関係、役割分担、権限と責任の所在という国家としての組織体制が不備なままだったので、結局GOTOキャンペーンの政策が円滑に実行できなくなっている。
小党である自分の党のガバナンスすら機能させられていない維新の会が、道州制をはじめとする統治機構の大改革を実行できるだろうか、又できたとしてそれを正しく運営することができるのだろうか。
守島氏は、統治機構改革を一丁目一番地に謳う日本維新の会の次期衆院選候補者なだけに、大変残念極まりない出来事だった。
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ライター:コミヤマ タケシ Twitter:@ramenkomiyama 自己紹介:会社員。
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