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れいわ・山本代表 東京8区より出馬報道 -因縁の選挙区で野党共闘なるか

次期衆院選に向けた動きの極地となるのだろうか。

れいわ新選組の山本太郎代表が次期衆院選で、東京8区から出馬する意向を固めたことが分かった。

関係者によると、同選挙区では立憲民主、共産両党が候補者擁立の準備を進めてきたが、各党で調整し、山本氏が野党統一候補になる見通し。

同選挙区では、自民党の石原伸晃元幹事長が8期連続当選している。

【独自】山本太郎氏、東京8区で出馬へ 石原伸晃元自民幹事長と対決 野党共闘の象徴目指す│東京新聞

投開票の公示が10月19日に迫る中で、与野党ともに解散政局は目まぐるしい。れいわ新選組は本日の18時より新宿駅前で、「選挙区発表街宣」を行う予定だ。

東京新聞によるフライング報道と思われるが、党側によるこのタイミングでの発表であることに変わりはない。

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本稿では東京8区をめぐる野党の戦いと、今後の展望を解説する。

「自民常勝」の選挙区

東京8区。高円寺や荻窪、阿佐ヶ谷、高井戸などを擁する杉並区の一等地で、有権者数は48万人にのぼる。

1994年に選挙法が改正され、衆議院選挙は小選挙区・比例代表制に移行した。その最初の選挙である1996年の第41回総選挙以来8回連続、東京8区で他候補の比例復活を許さない圧勝を決めてきたのは、自由民主党の石原伸晃氏である。石原伸晃氏の父は、運輸大臣や東京都知事を務めた作家の石原慎太郎氏。叔父は俳優の石原裕次郎氏で、弟にも政治家やタレントを持つ。言わば「政治家一家のプリンス」だ。

初当選の1990年は、無所属ながら旧東京4区で2位当選。負け知らずの与党候補だが、その選挙歴は「幸運」に助けられたこともしばしばある。

1996年には、当時新進党に在籍していた山田宏氏に7000票差まで詰められ、辛勝。この時は民主党の候補も出馬していた。新進・民主の合計票は石原氏の票よりも3万票多い。以降は民主党の新人候補との激戦を繰り広げるが、いずれも大差で勝利。だが2009年にはそうはいかないはずだった。民主党政権交代の選挙である。

この時は民主党と社民党が政権交代に向けて選挙協力を行った。それまで石原氏と戦っていた民主党の鈴木盛夫氏は出馬せず、東京6区から鞍替えした社民党の保坂展人氏(現世田谷区長)が鞍替え出馬。民主党・国民新党・生活者ネットワークが推薦したものの、地盤のない選挙区での戦いは政権交代旋風が吹いていたとは言え厳しく、石原氏に3万票差まで迫るものの、惨敗。

もはや、石原氏は無双状態に近かった。この後、石原氏は自民党幹事長に就任する。

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2012年衆院選は、自民党にとって最も戦いやすい選挙だっただろう。民主党への失望感は大きく、同党は8区に2010年参院選で落選した円より子氏を擁立するが、議席獲得は望むべくもなかった。

この無風区となると思われていた東京8区に新人として出馬したのが、当時「新党今はひとり」の代表を務めていた山本太郎氏だった。彼は「脱原発」を主要政策として掲げ、保坂氏の所属政党である社民党や日本未来の党の推薦を受けて東京8区から出馬する。石原氏には6万票差で惨敗するものの、円氏との合計票では石原氏に1万票差以内に迫り、政権交代直後の選挙とは思えない戦いぶりを見せたのである。

なお山本氏は翌年の参院選に東京選挙区から無所属で出馬。今度は見事当選した。当選後しばらくは無所属で活動するものの、のちに小沢一郎氏らと共に「生活の党と山本太郎となかまたち(自由党)」を結党。同党が解党したのちは、自ら「れいわ新選組」を結党し、2019年に政党要件を獲得(山本氏は落選)。時期衆院選への出馬を模索していた。

一方東京8区では2014年衆院選で再び円氏が石原氏に4万票差で敗北する。再び石原氏が落選の危機に追い込まれるのは、2017年衆院選の時だった。

この時は、前年都知事に就任していた小池百合子氏が結党した「希望の党」、及びこれに反発するリベラル系新党「立憲民主党」が国民の人気を集めていた。立憲民主党は共産党・社民党と選挙協力を行っており、完全な野党共闘が実現した場合、石原氏には落選の危険性もあったのである。

にもかかわらず、この選挙には石原氏の他に立憲民主党新人の吉田晴美氏、希望の党鞍替え前職の木内孝胤氏、共産党新人の長内史子氏が出馬し、さらにこれまでも東京8区を戦ってきた円氏が無所属で出馬。野党票は完全に分割された。これらの票を単純計算で足せば、石原氏の獲得票(99,863票)を15万票以上上回る。

もちろん、希望の党と共産党の選挙協力は不可だし、円氏の無所属での出馬を回避することも難しかっただろう。だがこの時の状況から言って、少なくとも「立憲民主党」と「共産党」は共闘が可能だった。この2党の合計票は98,682票で、石原氏との票差は僅か1000票余り。当選可能性はまだあるし、少なくとも高い惜敗率での比例復活はできたはずだった。「自民常勝」に黒星をつけることができたのである。

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野党共闘の行方

この東京8区は、以上の経緯から野党各党、そして山本太郎氏本人にとって「因縁」の選挙区なのである。にも関わらず、これまでに東京8区では、前述の立憲民主党新人・吉田晴美氏、共産党新人の上保匡勇氏、れいわ新選組新人の辻村ちひろ氏が出馬を表明している。このままではこれまで同様に、石原氏が勝利してしまうという危機感が存在した。

野党各党は今年9月に、市民連合を仲介して「野党共通政策」に署名している。参加政党は立憲、共産、社民、れいわの4党。事実この合意の結果、小選挙区での候補者調整は加速した。東京8区も早期の候補者調整を行なってほしいというのは、市民連合はじめ野党支持者の悲願だったのである。

一方山本太郎氏の衆院選出馬はれいわ新選組として既に決定事項であり、出馬選挙区についても繰り返し検討がなされていた。2020年に住民投票が行われた大阪都構想では反対の急先鋒に立っていたこともあり、日本維新の会の党幹部が現職を務める大阪府内の選挙区なども噂されていた。

圧倒的な知名度を誇る山本氏が出馬する以上は、「野党共闘のシンボル」として出馬することの方が重要と見られたと思われる。その上で、野党にとっても山本氏にとっても決して無視できない選挙区、それが東京8区ということだった、と言ったところか。

同選挙区で出馬予定の野党候補は、れいわの辻村氏も含めて出馬取り下げの意思は明確ではない。特に立憲の吉田氏は、山本氏の選挙区発表が行われる10月8日の前日にも区内で政治活動を行なっている。

選挙期間中の立憲党幹部による応援も既に発表済みで、本当に8区で山本氏を主軸とした野党共闘が実現できるのかという点は(東京新聞の報道も含めて)不透明である。

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8区では他に日本維新の会新人の笠谷圭司氏も出馬を表明しているほか、小池百合子都知事が特別顧問を務める「都民ファーストの会」を母体とする「ファーストの会」の国政進出など、選挙戦をめぐる不確定要素が少なくない。

れいわ新選組の広報担当者は、東京新聞の取材に対して「街頭演説まで言えない」としているという。本当にこの選挙区で野党共闘が成立するのか、本当にこの選挙区で山本氏は出馬するのか。引き続き注目だ。

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