UGCへの配慮が不足:デジプラ法ガイドラインの課題 −ゲストライター記事

ライター|國武悠人:NPO法人バーチャルライツ理事長。VR/メタバースに関連する政策分析などに従事。Twitter 記事一覧

※この記事は、ゲストライターによる寄稿記事です。おとな研究所編集部や所属ライターが作成した記事ではありません。なお、寄稿の応募はコチラから誰でも可能です。


4月22日、消費者庁が「取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律(以下、デジプラ法)」の『販売業者等』に係るガイドライン(案)に関する意見募集の結果を公示した。

同法は取引DPF提供者の努力義務や販売業者等情報開示請求について定めたものであり、2022年度からの施行が予定されている。

デジプラ法の懸念点と制定過程については過去記事を確認してもらいたい。

関連記事:開示請求制度が新設:クリエイターの匿名性に懸念 −ゲストライター記事

意見募集の概要

 「『販売業者等』に係るガイドライン(案)」の意見募集は、2022年2月24日から3月25日にかけて行われ、54件の意見が寄せられている。このガイドラインには販売業者等該当性に係る考え方が記載されており、例えば、「使用されていない、いわゆる『新品』や『新古品』等の商品を相当数販売している場合、『販売業者等』への該当性を推認させる事情になり得ると考えられる。」といった具体的な考慮要素が例示されている。

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「取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律における『販売業者等』に係るガイドライン(案)」に関する意見募集の結果について|e-gov

懸念の所在

 同法ガイドラインに対する主たる懸念は、UGC(User Generated Content)に係る個人クリエイターが販売業者等と判断されてしまうのではないかという点にある。販売業者等と判断されてしまえば、雅号(ネットネーム等)で活動している覆面クリエイターも販売業者等情報開示請求の対象になりかねない。

 ガイドラインにはある程度の柔軟性が必要なことについては理解を示せるが、あまりにも曖昧なガイドラインではいわゆる「身バレ」のリスクから創作活動が萎縮してしまうことが考えられる。世界に誇る日本のコンテンツ文化が多くの個人クリエイターに支えられている中で、創作者に「身バレ」のリスクを追わせることは国益にもかなわないだろう。

具体的な懸念条項と消費者庁の見解

 具体的な懸念条項については、NPO法人バーチャルライツが3月23日に公開した「送付意見」を参考にされたい。当記事では、送付意見に対する消費者庁の回答を紹介し、筆者の個人的見解を述べる。

NPO法人バーチャルライツ提出意見①

近年、デジタル分野における CtoC 取引の発展はめざましく、雅号で活動す るアーティストが 3D モデルやデジタルイラストを取引 DPF 上で販売するケ ースは珍しくありません。これらのダウンロード型デジタルデータは在庫が 不要であるため、売り上げの数量や金額等の調整が困難であるという特性が 存在します。ガイドライン案ではいわゆる情報商材等への言及があるものの、 一般的なデジタルデータ取引には一切言及が無い情況にあるため、いわゆる UGC(User Generated Contents)であるデジタルデータ(デジタル同人誌、音声 データ、3D データ、デジタルイラスト等、以下同じ)については、販売者が売 上数量や利益等を事前に調整するのが困難であるから、単に相当数の販売(ダ ウンロード)数がある事実のみをもって「販売業者等」への該当性を推認させ る事情にはならないことを確認したい。

消費者庁見解①

御指摘のデジタルデータの販売者が実際の個別の事案において「販売業者等」に該当するか否かは、本ガイドライン(案)に記載されている考慮要素に該当する事情を始め、当該事案における個別具体的な事情を総合的に考慮して判断されることが適当であると考えております。

NPO法人バーチャルライツ提出意見②③④

3.(1)の②の『「新品」等の商品』について、特性上「中古」が存在しえないデジタルデータは、基本的にはガイドラインに定められる『いわゆる「新品」や「新古品」等の商品』としての扱いにならないことを確認したい。

3.(2)の①の『同一商品の複数出品』について、同一のデジタルデータを複数人が購入できるようなプラットフォームにてデジタルデータを販売している場合は、ガイドラインで定められる「メーカー、型番等が全く同一の商品を複数出品している場合」に該当せず、通常その事実のみをもって「販売業者等」への該当性を推認させる事情にはならないことを確認したい。

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3.(1)の③の『特定の商品等のカテゴリー』について、「チケット」が 「特定商取引に関する法律施行令(昭和 51 年政令第 295 号)別表第1第 1号及び第2号に定めるようなもの」とされており、別表第1第2号には「映 画、演劇、音楽、スポーツ、写真又は絵画、彫刻その他の美術工芸品を鑑賞 し、又は観覧する権利」との規定が存在するが、いわゆるサブスクリプショ ン等での「購読」「支援」者に限定してデジタルデータを公開する行為を行っ ている場合には、通常その事実のみをもって「販売業者等」への該当性を推 認させる事情にはならないと考えられることを確認したい

消費者庁見解②③④

実際の個別の事案において「販売業者等」に該当するか否かは、本ガイドライン(案)に記載されている考慮要素に該当する事情を始め、当該事案における個別具体的な事情を総合的に考慮して判断されることが適当であると考えております。

NPO法人バーチャルライツ提出意見⑤

3.(2)の③の『評価やレビュー等のいわゆる「口コミ」と称されるもの』について、ガイドライン上で定められる『いわゆる「口コミ」』には、販売プラットフォーム以外の場(会員制交流サイト等)での口コミが基本的には含まれず、販売プラットフォーム以外の場にていわゆる口コミが多く投稿されている場合には、通常その事実のみをもって「販売業者等」への該当性を推認させる事情にはならないことを確認したい。

消費者庁見解⑤

本ガイドライン(案)の3(2)③は、商品を購入した者等から一定期間に相当数の「口コミ」があれば「反復継続性」を推認させ得るという観点から記載しているものであり、基本的には商品を購入した取引デジタルプラットフォーム上に記載される「口コミ」を想定しておりますが、当該取引デジタルプラットフォーム以外の場に記載される「口コミ」については、当該「口コミ」から「反復継続性」が推認されるのか、個別具体的な事情に基づいて判断されることが適当であると考えております。

NPO法人バーチャルライツ提出意見⑥

雅号で活動することが前提となっているデジタルデータの取引 DPF につい ては、ガイドラインにて物理取引が前提の取引 DPF とは別の基準を制定する ことが求められます。ガイドラインについて、取引 DPF の特性や状況の変化 を踏まえつつ検討を行っていく必要については国会審議で政府参考人が「考 え方を検討するに当たっては、当時からの状況の変化や取引デジタルプラッ トフォームの特性を踏まえつつ、しっかりとした検討を行ってまいりたいと いうふうに思っております。」と回答している通りです。取引 DPF 法には、雅 号で活動するアーティストの実名が販売業者等情報開示請求によって明らか になってしまうのではないか、といった懸念が存在し、プライバシー等への 配慮が多くのクリエイターから強く求められているため、『アーティスト等が 雅号で商品を販売することの多い取引デジタルプラットフォームにおいて は、「販売業者等」への該当性を推認するにあたって、プライバシー等に十分考慮することが求められる。』と追記するように求めます。

消費者庁見解⑥

本法の対象は、「販売業者等」となっていることから、原案のとおりとさせてい ただきます。また、御指摘の販売業者等情報の開示請求の手続については、Q&A等を 作成し、円滑な運用に努めてまいります。 なお、本ガイドライン(案)の「1. はじめに」において今後、取引デジタル プラットフォーム上の取引の実態を踏まえ、必要に応じて、具体例、業態・業種別 の考慮要素等の追加を行うこととしており、今後、必要に応じて、御指摘のような 場合も含め具体例等の追加を図ってまいります。

上記の通り、UGCに対するガイドラインの適用については具体的な言及を避け、当該事案における個別具体的な事情を総合的に考慮して判断されることが適当だと繰り返し述べられている。これでは個人クリエイターは安心して創作物を販売することができないのではないだろうか。また、FANBOX等を始めとした「購読」「支援」についても販売業者等への該当性を推認させる事情にならないことはない、という状況にある。これらはBOOTHやSkeb等についても同様である。

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デジタルデータの場合、1夜で500ダウンロードされた、といったことは容易に起こり得るほか、作品自体は売れていなくともSNSにおいていわゆる「バズり」が発生し相当数の口コミが投稿されることも当然考えられるため、実は、かなりの人たちが販売業者に認定されて、情報を開示しなければならない者になるのではないかという疑念を容易に捨てることはできないだろう。

今後の展望

 「口コミ」の詳細や「必要に応じて、御指摘のような 場合も含め具体例等の追加を図ってまいります。」という回答をNPO法人バーチャルライツが引き出していることについては一定の成果と言えるが、今後は実際の運用について注視していく必要があるだろう。また、各プラットフォームの対応についても注視していく必要がある。

※当記事は所属組織の意見を代表するものでありません。また、ご自身が現実に遭遇した消費者問題等については行政機関または法曹にご相談ください。

参考文献


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