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町田市で小6女児自死 -GIGAスクール構想の問題点を放置したことが最悪の事態を招いた

 決してあってはならない出来事というのが世の中には存在する。未来への希望が握りつぶされること、もう二度と取り返しがつかないことである。

東京都町田市立小学校6年だった女児=当時(12)=が昨年11月、同級生からのいじめを訴える遺書を残して自殺していたことが分かった。両親と代理人弁護士が13日、文部科学省で記者会見して明らかにした。

小6女児、いじめ自殺か 遺族「タブレットで悪口」―東京・町田:時事ドットコム

 わずか12歳の子供が、同級生からのいじめが原因で自死に追い込まれたのだ。今年3月に北海道・旭川市で女子中学生がいじめの被害に遭い凍死に追い込まれた事件は記憶に新しいが、繰り返される罪は終わりがないのだろうか。しかも今回は被害者が小学生である。亡くなった方に心からお悔みを申し上げるとともに、二度とこのような事態が起きないことを祈りたい。

 この事件に関する問題点については、複数の論点からの指摘を要すると筆者は考えている。本稿ではそれらについて説明するとともに、個別の背景について解説していきたい。

※内容については以下を参照した。詳細についてはプレジデントオンラインの連載をご確認いただきたい。

「小6女子は「一人一台端末」に殺された」の記事一覧 | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)

悪質ないじめの実態

 町田市の小学校に通う6年生の被害女児は、2020年11月30日(月)の0時半頃に自室で首をつって亡くなっているのが発見された。部屋には、日記形式で書かれた遺書が見つかり、「いじめられている」「こいつらのために自分は死ぬ」「もうラクになりたい」「おまえらのおもちゃじゃない」などと書かれていたという。後述するが、いじめの内容はその殆どが家族やマスコミの調査によって発覚した。

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 被害女児が在籍していた町田市の小学校では、今年度から始まったいわゆる「GIGAスクール構想」の運用が始まる以前から、ICT教育に力を入れていた。同校校長は文科省PTなどの委員も務めるほどで、児童1人1人にタブレット端末を配布する「一人一台端末」も2019年には実現していたそうで、GIGAスクール構想運用後はその先進事例として位置づけられていたという。

 にもかかわらず、この配布された端末はいじめに利用された。主犯格と見られる女子児童2名が「〇〇(被害女児の名前)、ウザイ」「まじで死んでほしい」などと、Googleのサービスであるハングアウトでやり取りをしていたことが調査でわかっている。これを別の女子児童2名に相談したが、後にこの2人にも疎まれていじめられることになった。

 いじめはタブレット外の「リアル」でも起きる。「絶縁」や「自殺」などの嘘を付く「ドッキリ」と称した悪質な悪戯を繰り返し、前述の相談した女子児童2名にクラス全員の前で「絶交宣言」をされるなどしていた。

 加害者・被害者双方とも女子小学生であるため身体的ないじめは挙げられていないものの、いずれも悪質で常軌を逸しており、明らかに許されない行為ばかりである。

問題の隠ぺいを図った学校側

 これまでに起きた多くの類似事件と同様である。この事件に関しても、当初学校側が事態を公にしようとせず隠ぺいを図ったことがすでに分かっている。

 家族は、自死までいじめの存在を知らなかったという。亡くなった翌朝、すぐさま学校に問い合わせたところ「自殺の事実は子供に言わないで欲しい」と言われた。

 さらに、自死以前に行われたいじめなどの実態調査を目的としたアンケートで「友達関係に悩みがある」と書いていたことや、それを女児自身が「加害者児童に言わないで欲しい」と言っていたにもかかわらず、後日3人で話し合いの場を設けたという。しかも遺書はこの話し合いの日よりも後に書き始められたというのだから、完全にコレが事態を悪化させたとしか言いようがない。その後学校側は「9月の時点でいじめは解決した」と主張するようになった。同級生ら児童への口止めも相変わらず。

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 こうしたことで学校に不信感を持った両親は独自に調査を開始した。上述のようないじめの実態が明るみになった。だが学校は「チャットのやり取りが自殺の原因ではない」などと説明するようになったのである。この「配布されたタブレットでのいじめ」が大きな問題になっていたのは確かなのだ。

GIGAスクール構想の課題を放置した結果

 タブレットを使用しての悪口は勿論あってはならないが、遺族やマスコミの調査によって、こうしたメッセージが事後に削除されていることがわかっている。

12月中旬に、弘美さん(被害女児の母)はチャットの履歴を見せてほしいと学校に依頼する。

すると12月24日にA校長から電話がかかってきて「チャットで悪口が書かれていたのは事実でした。でも、私たちも不思議なんですが、履歴が消えています。書き込んだと認めたA子さんも、『あれ、ない?』と戸惑っていました。誰が消したかわからない、ハッキングにあったかもしれません」と報告があった。

※()内筆者注

「小6女子いじめ自殺」校長はいじめを否定し、両親は”お騒がせしてすみません”と頭を下げた 「学校が混乱するので、来ないで」 (2ページ目) | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)

 削除したのが誰7日は不明だが、配布されたタブレットのアカウントについては、IDが学年クラスや出席番号から類推できるもので、パスワードが全生徒一律で「123456789」だったという。このため、他生徒のアカウントにログインすることは極めて容易だったということだ。これについては文部科学省も「不適切な対応だった」とコメントを出している。

 またこのいじめ案件とは直接関係はないものの、配布されたタブレットに時間制限などがなく、管理が各家庭に丸投げになっていたこともわかっている。「ICT先進校」とされた小学校の実態である。

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 実は「1人1台タブレット配布」を含む文部科学省の「GIGAスクール構想」については、おとな研究所で昨年度末に記事が上がっている。

端末上で他人と気軽にやり取りすることは可能だが、やはり対人コミュニケーション能力は必要になってくる。特に、低年齢ではこれが肝要であるから、そのあたりの配慮がなされるべきだ。

教育のデジタル化―GIGAスクール構想の本質に迫る

 今回の件が1人の少女の命を奪ったばかりでなく、教育のデジタル化のにあたっての重大な欠陥を明らかにしたことは紛れもない事実だ。教育評論家の尾木ママこと尾木直樹氏は、自信のブログで以下のように述べている。

全てに優先させてもタブレットいじめだけは

直ぐに防止しないといじめやトラブルに繋がりツールを配布したのは

国と各学校なんですからーー

責任は重大です!!

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これまでのように家庭の責任ではありません

せっかくの文科省のガイドラインは活用しましょう!

尾木直樹(尾木ママ)オフィシャルブログ「オギ♡ブロ」Powered by Ameba

 「教育の利便性向上」を目的に配布されたタブレットが、いじめや自死につながるツールとして使われたことは、全く予想できなかったことではないはずだ。本件を持って文部科学省や各地域の教育委員会は速やかに全校の実態を把握し、再発防止策を直ちに講じるべきである。

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