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須藤元気議員は、議員辞職すべきなのか?

須藤元気議員は、議員辞職すべきなのか?

突然の離党表明と「号泣会見」

 須藤元気参議院議員(全国比例)が、令和2年6月17日、立憲民主党を離党する意思を表明した。

 離党のきっかけとなったのは、同月15日に、都知事選で宇都宮氏を推薦するという党方針に背いて、須藤氏が山本太郎氏を応援すると表明したことだ。記者会見の際に、須藤議員は、目に涙を浮かべながら、元所属政党の立憲との経済政策の食い違いを強調した。立憲が消費減税を主張しない一方で、須藤議員は、個人として従来から消費減税を主張していた。その背景には、須藤議員の同世代は、平成不況とこれに伴う就職氷河期の影響を大きく受け、多くの人々が経済苦に苦しんでいる世代だ。この世代は、「ロスト・ジェネレーション」と呼ばれるほどである。須藤氏は、消費減税をはじめとする積極財政政策によって、消費増税とコロナ禍に苦しむロスジェネ世代を救いたかったのだろう。

 もっとも、須藤議員の突然の離党表明と、上記の「号泣会見」は、多くの議論をもたらした。とりわけ多くの人が批判していることは、須藤議員が、比例代表選出の議員であるにもかかわらず、党の方針に背いて都知事選で山本太郎氏を応援するとともに、都知事選で応援する候補の食い違いを原因として離党表明したことだ。ツイッターをはじめとするSNSでも、「須藤議員は比例選出なのだから、離党するのであれば、所属政党に議席を返せ」という趣旨の批判が数多くなされた。ここでは、代表的なものを引用して紹介したい。

現行法上、須藤氏は失職しない

 そもそも、上記のような批判が現れる理由は、比例選出議員が自発的に離党した場合も失職しないからである。国会法109条の2と公職選挙法99条の2は、比例選出議員が離党して、当選時の選挙に候補を出した他政党に移籍した場合に限り自動失職する。したがって、単に立憲民主党を離党しただけの須藤議員は失職しない。もちろん、須藤議員に辞職すべき法的義務も存在しない。
 しかし、比例選出議員は、政党の力によって当選している面が大きい。そのため、自発的離党は、所属政党(とその背後にいる有権者)に対する裏切りだとして、非難されることが多い。では、国会法や公職選挙法を改正し、比例選出議員が自発的に離党した時点で自動失職するようにできないか。

離党に伴う自動失職規定は、違憲の疑いあり

 国会議員は、憲法上「全国民」の「代表」であると定められている(憲法43条1項)。「代表」とは、代理とは異なり、代表者たる議員の自由な意思決定という契機が不可欠のものとして含まれると考えられる。したがって、日本の国会議員には、選挙人の訓令に拘束されず表決の自由を有するという「自由委任の原則」が当てはまる。自由委任の対になる語として、命令委任がある。命令委任とは、議席は選挙人と議員の委任関係に基づくものであり、選挙人の意向に従って議員は行動すべきという考え方である。日本では自由委任があてはまるため、当選した議員には自分の考えに基づいて自由に行動することが認められ、その行動の是非は次の選挙で審判されるべきという制度になっている。

 上記のような自由委任という考えに基づけば、議員が議席を喪失することについて政党が最終的な権限を握るような制度は憲法上認められない。したがって、除名された比例選出議員を自動的に失職させるような制度は明白に違憲である。他方、現行の制度は、比例選出議員が他政党に移った場合に限り自動失職するものであり、議員の自由な意思が失職に介在している。それゆえ、現行制度は合憲と考えられている。

 問題となるのは、両者の中間にあたる、「比例選出議員が自発的に離党した場合に自動失職する」という規定の合憲性だ。これも、離党という議員自身の自由意思が介在しているため、合憲という見解もある。しかし、以下の理由により、違憲と考える見解も有力だ。すなわち、政党が選挙時から政策を変更したり、公約を順守しなかったりした場合もあり、これらのような場合にまで離党が認められないのであれば、選挙民の議員に対する拘束が強くなりすぎであり、実質的に命令委任となるからである。私は、後者の考えに賛成する。

 以上のように、離党した比例選出議員を自動失職させる法律の規定を設けた場合、違憲の疑いがある。

「辞職しないのは妥当」だという見方も十分ありうる

 上記の理由から、須藤氏は法的に議員辞職する義務はないだろう。さらに踏み込むと、上記の私が支持する憲法論のロジックに照らせば、実質的に、須藤議員が辞職しないことが妥当であるという見方も成り立ちうる。

 立憲民主党は、昨年の参院選で消費増税反対を公約として掲げ、安倍政権との対立軸のひとつとした。そうすると、立憲民主党は増税阻止のためにできる限りの策を尽くすべきであったし、増税がなされた今となっては、税率を元に戻すよう主張するのが筋である。しかし、6月22日現在、立憲民主党が公式に消費減税を主張したことはない。このような状況では、立憲民主党が「増税反対」の公約に違反したと批判されてもやむを得ないだろう。まさに、上記のような「所属政党が公約を順守しない場合」に当てはまるのではないか。

 これに対して、須藤議員は、参院選の「増税反対」という公約を順守すべく減税を主張し、そのために山本太郎氏を応援したり離党を宣言したりしているという見ることもできる。このように考えた場合、須藤議員に辞職を求めるのは妥当とは言えないだろう。

 読者のみなさんにも、「比例選出議員の自発的離党は悪」という一般論が、いかなる場合にもあてはまるか、ぜひ再考していただきたい。

※アイキャッチ画像は下記サイトより引用https://news.livedoor.com/article/image_detail/18449793/?img_id=25517320

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