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政策議論の国民民主・維新、学術会議の立共 野党の予算委員会質疑に明暗

早くも各党の方向性が判明

 11月4日の予算委員会は、立憲・共産・国民民主の代表がそろい踏みし、維新も浦野靖人議員1人が40分以上質問を担当した。したがって、たった1日の予算委員会ではあるが、早くも各党の方向性が判明してきている。

 以下が、各政党党首(維新は浦野議員)の質問時間割合である(敬称略)。後にも各政党党首の質問時間割合を円グラフにして掲載するつもりではあるが、政党間の比較のために棒グラフで掲載する。

(各党党首の敬称は省略・以下すべてのグラフにて同じ)

「学術会議」批判ばっかりの左派野党

 日本学術会議の任命拒否問題は、メディアが盛り上げようと必死だ。しかし、コロナ下で厳しさを増す経済情勢の中で、学術会議のような既得権集団が国民に理解されるはずもない。それに、国民生活とは全くと言っていいほど関係が無いのだから、国民の関心は全くと言っていいほど高まっていない。現に、菅内閣は、ご祝儀相場から少し下がったものの、高い内閣支持率を維持している。なお、学術会議問題については、私が先月記事を書いているので、参照してほしい。

 前置きが長くなったが、立憲民主・共産の左派野党2党の党首は、日本学術会議の問題に半分以上の時間を消費した。国民から与えられた質問時間を、国民生活とは無縁の問題に浪費したのである。共産は、全ての時間を学術会議の問題に割いたので、グラフは割愛させていただく。

「野党は反対ばかり」「野党は批判一辺倒」「野党は政策の議論をしない」というイメージを作ったのは立憲・共産の左派野党なのである。中谷一馬衆議院議員(立憲民主党)が、「野党は反対ばかり」論に反発していたが、客観的なデータよりもイメージが重要なので、いくら法案賛成率などを示しても何の意味もないと言っておく。

https://news.yahoo.co.jp/articles/6274b649b6f60c9e95d8f7150661081d39778438

なぜ立憲民主党は反対・批判ばかり行うのか

 今日の予算委員会で、立憲をはじめとする左派野党がなぜ反対ばかり行っていたのか理解しがたい人もいるかもしれない。しかし、これにはしっかりとした理由があるのだ。

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https://www2.nhk.or.jp/hensei/program/index.cgi?area=001&f=top

 上のリンク先を見てほしい。NHKの番組表である。本日の予算委員会は、テレビ中継有の予算委員会である。テレビ入りの予算委員会は、普段の委員会質問よりも有権者の注目を集めやすい。また、支持母体等にも見られている場合が多い。そのため、左派野党の議員は、支持者ウケを狙って疑惑の追及などのような、政策以外のテーマに安易に走るのである。確かに、旧総評系の労働組合のような左派色の強い支持母体や、選挙ボランティアとして働いてくれる地元の熱心な支持者にはウケるのかもしれない。しかし、一般国民にとっては、今はコロナ対策・経済政策が最も大事なはずであり、経済政策を扱わず、学術会議問題をメインとして扱う左派野党に対して、国民は心底呆れるに違いない。

 立憲民主党は、国民生活のことをどうでも良いと考えているのだろう。

 なお、立憲民主党・枝野幸男代表が、本日の予算委員会で国民生活に直結した質問を行ったのは、たったの6分間である。その内容はひとり親家庭への経済支援に関するものであり、取り上げたことは前向きに評価したい。しかし、なぜ6分間だけなのか、ひとり親家庭以外にはノータッチで良いのかについて、大きな疑問が残る。

かみ合った政策の議論を行う国民民主・維新

 左派野党とは対照的に、国民民主党・玉木雄一郎代表と日本維新の会・浦野靖人議員は、それぞれの党の問題意識をもとに、政府与党とかみ合った政策の議論を展開した。そもそも、政策の議論をしただけで評価されるのはおかしなことである。しかし、政策の議論すら満足に行えない野党第一党がある中で、少数野党が奮闘している点は、前向きに取り上げたい。

生活者目線の国民民主・玉木雄一郎代表

 政権とは違った視点から、政権の政策に切り込んでいたのが、玉木雄一郎国民民主党代表である。玉木代表が「生活者の立場に立った改革中道政党」と自称する通り、生活に密接したテーマを中心に、多彩なテーマに切り込んだ。

 不妊治療助成の拡充、EV自動車支援などの新しいテーマを取り扱った後、玉木代表は、コロナ不況対策としての経済対策を重点的に取り扱った。「日本のコロナ感染対策は比較的うまくいっている」と、政府のコロナ対策のうち評価できる部分は評価したうえで、GDPの回復が他国よりも遅くなると予想されていることを指摘した。そして、経済の回復が遅くなることは将来の税収にもつながるのだから今は積極財政を行うべきだと、菅政権の経済対策を質した。

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 玉木代表と国民民主党は、3月9日に最も早く一律10万円の現金給付を提案し、最終的に政府を翻意させて実現させたという実績がある。現金給付には消費を喚起する効果があったという立場の玉木代表の質問と、現金給付の消費喚起効果は薄いと言う立場の麻生太郎財務大臣の答弁は、非常にかみ合った議論となっていた。

 他にも、憲法議論では自民党の改憲4項目を撤回するように求めたり、皇位の安定継承に関する議論を促すなど、あくまで政府与党を質す野党としての立場で質問を行った。

政権よりもスピード感ある改革を求める維新・浦野靖人政調会長

 大阪都構想の住民投票で惜しくも否決となった日本維新の会は、「大阪維新の会」立ち上げメンバーの浦野靖人国会議員団政調会長が、担当した。浦野政調会長は、菅政権の施策の方向性は認めているものの、改革をより前に進めるべきだという立場を取った。

 まず、はんこ廃止、マイナンバー、データ管理など、国民生活とも関連した行政改革について、政府の取り組みが甘いと指摘したうえで、よりスピード感を持って進めるように菅政権に求めた。例えば、マイナンバーカード発行に本人の受け取りが必要であることがマイナンバーカード普及の妨げになっているとして、子どものマイナンバーカードは親が受け取れるようにすべきだと主張した。

 また、立憲民主党が触れることのなかった新型コロナ感染対策にも、一定の時間をかけて質問を行っている。

 他には、1日の住民投票の結果をうけ、大阪都構想に関する質問を行ったり、尖閣諸島問題・外国人の土地所有などの安全保障問題について政府の姿勢を質したりするなど、他の野党と一線を画した立場から、多くのテーマを取り扱った。

まとめ

 学術会議問題に大部分の時間を割いてしまった立憲・共産と、学術会議問題に全く触れず、国民生活と関係のあるテーマを扱った国民民主・維新の対応が大きく分かれた。各党代表の質問だけしか集計ができなかったものの、代表の行う質問は、その政党の持つ問題意識の現れであると言える。政策の議論をする意思のある野党と、政策の議論をする意思の無い野党で、くっきりと明暗が分かれたと評価できる。

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 皆さんには、「野党は反対・批判ばかりではない」という言葉を真の意味で理解してほしい。確かに、「左派野党は反対・批判ばっかり」であり、この記事でそのことを批判した。しかし、「政府と異なる価値観から政府の政策のチェック・独自の政策提案をできる真の野党」が、この国には既にあるのだ。

 日本維新の会は、「与党の補完勢力」だとよく言われる。しかし、野党の印象を悪くし、結果的に与党を利するような質疑をしているのは、立憲・共産ではないのか。学術会議を扱わずに貴重な質問時間を政策討論に集中させた維新の会・国民民主党は、このコロナ下において「国民の補完勢力」足りえる。

 立憲民主党を批判するのは良い。しかし、立憲民主党や共産党を見て「野党はダメだ」と思わず、政策の議論をする意思のある国民民主党・維新の会に期待の目を向けて、両党を育ててほしい