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多すぎる日本の経済対策ー諸外国との比較

一年前、中国武漢市発症の新型コロナウイルス(COVID-19)は世界中の都市で、経済活動を中止に追い込み、多大なる損失を生み出した。これに対応する形で世界各国の政府は数々の財政措置を通じ、経済の安定化を試みた。本日の記事では、各国の経済対策を比較するとともに、感染状況と経済への影響も考えていきたいと思う。

主要国のコロナ経済対応

米国


米国はコロナ感染者数が2000万人を超え、大変深刻な感染状況となっている。結果的に海岸部の都市を中心にロックダウンが行われ、それに伴い2度にわたる補正予算が編成された。

一回目の補正予算はCARES法案と呼ばれ、総額2兆ドル(208兆円)の規模となった。内容としては、1200ドル(12.5万円)の定額給付金(収入約1000万円の所得制限付き)や、週600ドルの失業追加給付、中小企業向け賃金用ローン(PPPプログラム)に約6700億ドル(約70兆円)、州に対する交付金約3000億ドル(31兆円)、そして企業向けに最大2億円の融資などを盛り込んだ。

二度目の補正予算は更に600ドルの定額給付金、300ドルの失業使給付、そして接客業に対する150億ドル(約1.6兆円)の給付金、そしてPPPプログラムの継続費用、医療関係に対する約200億ドル(2.2兆円)の予算などを含み、総額0.9兆ドル(約94兆円)規模となり、2度の補正予算合計でGDPの約12%もの経済対策を実行した。

日本

読者の多くがご存知の通り、日本では現在米国と同じ2回の補正予算が執行されており、3回目も政府によって計画されている。

内容としては10万円の定額給付金、雇用調整助成金の増額(1日当たり8333円→1500円)や、2兆円の追加交付金、最大600万円の家賃支援などが盛り込まれた。結果的に真水約61兆円、事業規模200兆円越えの経済対策が実行された。

英国

英国もロックダウンが複数回実施されるなど大変厳しい感染状況下にあり、結果として政府は数々の経済対策を打ち出している。真水分としては約1840億ポンド(26兆円)が支出され、主に雇用確保に530億ポンド(約7.5兆円)と医療体制の確保に約319億ポンド(約4.5兆円)に振り分けられる。更に440億ポンド(62兆円)の税猶予と340億ポンド(約48兆円)の財政投融資が含まれる

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主要国の財政出動規模の比較

コロナ感染拡大による経済活動の低迷により、各国は財政出動を行う事態となっている。G20内での真水支出の平均はGDP比約5.7%で、それ以外の措置(猶予・財投債等)の平均はGDP比約9.4%となっている。

経済対策全ての平均はGDP比約15%だが、主に日独伊が突出した30%越えの支出で平均を釣り上げている状態である。

経済対策と感染者数との比較

上の図を見て頂くと分かる様に、基本的なトレンドとしては各国の真水支出は感染者数と正の関係がある事がわかる。ただし例外は日豪加の三か国で、比較的感染者数が少なくても真水の財政支出が多い事がわかる。この理由としてはこの3か国は比較的良好な感染状況でありながら非常事態宣言やロックダウン措置を行った事により、賃金保障などの費用がかさんだ事が要因とみられる。

これらの3か国を除いた比較(下記)を見て頂くと、コロナ感染者数が多い国ほど財政出動規模が大きくなる関係性が確認できる。これは上記の通り、事業保障などの費用が感染者数に直接関係性があるからとみられる。

真水以外の経済対策、事業規模を感染状況と比較した場合、似たような結果が見られる。下の図の通り、感染状況と事業規模は正の相関が見られ、感染状況が悪化すればするほど経済対策の事業規模が増加する傾向にある。ただし、日独伊の三か国は感染状況が比較的良好なのに巨大な事業規模の経済対策を講じている。逆に米国は真水分の支出は多いものの、税猶予や財投措置などはほぼ皆無である為、事業規模は感染状況と比べ小さな規模となっている。

経済成長率との比較

コロナ経済対策の目的は勿論、経済の下支えである筈だ。しかしながら、日本の場合、本当にこれ程の経済対策を実施しているのに、他国と比べ効果に薄いのではないか?

経済対策自体は景気悪化と一定食い止める事は新興国であるトルコ・中国以外のデータを載せた図で見えてくる事だ。しかし、日独伊の様に、財政出動を拡大すればするほど景気が良くなる訳では無く、一定の限界効用がある様に見える。

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特に感染状況が最悪の米国が日独伊より遥かに少ない事業規模でより好調な景気なのは覚えておく点であろう。これは日本が米国と比べ、雇用の流動性が低いが故の問題と推測できる。

更に日本の経済対策は独伊と比べ、規模こそは似ているものの、内容は大きく異なる形となっている。独伊は主に税猶予や債券保障をGDP比30%程度で実行しているのに対し、日本は国際的に”Quasi Fiscal Operations”(疑似財政出動)と呼ばれる対策を同規模で実施している。これは政府系金融機関を通じて、民間企業に資金を与えながら政府の監督の下、経済活動を行う事である。これは戦時中から日本の官僚組織の「お家芸」である訳だが、非常に国家社会主義的な政策で市場を歪みかねない。

この様な政策は国策で特定の産業が振興されたり、無駄な支出が多く出てくる事から日本経済の生産性を下げていると言える。将来の潜在成長を毀損させない為にも、経済対策は自由経済を大前提として、減税や税猶予に徹底すべきだ。

ここ一年、経済が低迷するにつれ、れいわ新選組や山本太郎、国民民主党などが「日本の経済対策は少ない」など不安を煽り立てていたが、感染状況と比較した場合、むしろ多すぎである事がわかる。逆に経済がこれ程低迷しているのは,不要な「自粛要請」により経済活動の停滞が理由だ。

既に肥大化している日本の経済対策の内容自体も非常に統制経済に似たものとなりつつある。コロナ後もこの様な経済システムが固定されないように国民は政府による行動をしっかり監視すべきだろう。必要な経済対策には反対しないが、ただただお金を刷ってばら撒くのが景気に良いという幼稚な考えは捨てるべきだ。

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