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KOKKAI-204 #3 追及優先の立共、政策提案優先の国民維新 予算委集中審議

 予算審議も大詰めである。予算委員会の集中審議が、3月1日午前中から行われた。開会直前に違法接待疑惑が取りざたされる山田真貴子内閣広報官が突然辞任したことが判明し、混乱の中30分遅れで開会。予算委員会集中審議は、直接NHK中継される上にメディアからも注目されるため、各党がどのような問題意識を抱えているのかが判明してくる。今回は、再度各党の時間配分を分析しつつ、集中審議における全野党の質問の概要を速報する。

立憲 コロナ対策を「やっている感」を出そうとするも…

 立憲民主党は、大部分の時間をコロナ感染対策に用いるなど、緊急事態宣言が今なお続いていることを意識した時間配分をとった。その一方で、違法接待疑惑問題に約3割の時間を費やし、感染対策や夫婦別姓に関する話題でも「総理!」と連呼して首相の姿勢に疑問を投げかけるなど、従来通り追及重視の姿勢が続く。

 野党全体のトップバッターを担ったのは、枝野幸男代表であった。枝野代表の質問は、東日本大震災、コロナ対策、違法接待疑惑など、幅広い問題を扱った。昨年の予算委員会で、共産党とともに学術会議問題ばかりを扱い、コロナ対策を軽視したことに対する批判を意識したのか、枝野代表自身はコロナ対策に最も時間を使った。

 しかし、実現可能性が疑問視される持ち前の「zeroコロナ」政策には、与党席からヤジも飛んだ。人口密度が高く、電車や職場などで密になることが多い日本では、ニュージーランドや台湾のような「ほぼ感染者0」の封じ込めは、実現可能性が低いからだ。実際に枝野代表からは、どのように「zeroコロナ」を実行するかについて具体的な提案を聞くことができなかった。このような実現可能性の低い提案をしても、提案路線と評価されないだろう。

 枝野代表の質問で唯一評価できる点は、帰国者の感染対策として、国際空港周辺のホテル療養を強く要請するという提案である。成田付近のホテルを国が借り上げ、国の負担で、帰国者を一定期間隔離し検査を複数回行うことによって、水際対策を徹底するという提案は、とても具体的で実現可能性の高いものであった。前向きに評価したい。

 なお、次に質問を行った山井和則議員が違法接待疑惑への追及に時間をほぼ全振りした。そのために、党全体としては違法接待疑惑に全体の3割もの時間を使ったこととなった。その割には、山井議員は、菅首相に謝罪を要求したばかりで大した答弁を引き出すことができず、共産党ほど同疑惑で成果を挙げたとは言い難い。

 質問全体を通じ、「立憲民主党は反対ばかり・追及ばかり」という批判を払拭することに、完全に失敗したと評価すべきである。

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 それだけではない。集中審議における立憲民主党の最大の問題点は、ほとんど経済政策を扱っていないことである。枝野代表の従来の発言通り、政権交代を目指すのであれば、責任ある経済政策の策定が求められる。立憲民主党の今日の質問の姿勢では、経済政策軽視と言われても仕方あるまい。政権担当能力に大きな疑問符がつく。

共産 接待疑惑追及に集中し、一定の成果を挙げる

 グラフの通り、共産党の塩川鉄也議員は時間のすべてを疑惑の追及に使った。しかし、菅首相に感情的に謝罪を求めるなど印象操作に終止した立憲民主党山井議員の質問と異なり、塩川議員の質問は終始冷静に行われ、十分に行政監視の役割を果たした質問であった。

塩川議員は、東北新社が「衛星放送の未来像に関するワーキンググループ」」事務方経験者ばかりと会食接待を行っている事実を、答弁を通じて引き出した。その上で、行政が歪められていないか、政府を質した。

維新 国会改革に言及、提案中心の質問

 維新の会を代表した遠藤敬国対委員長は、冒頭にテレビ中継の機会について問題提起した。今日の質問は、山田真貴子内閣広報官の辞任に伴う混乱で、予算委員会開会が30分程度遅れた。それに伴い、与党と立憲民主党の議員の質問はNHKでテレビ中継される一方で、共産党の塩川議員、維新の遠藤国対委員長、国民民主の玉木雄一郎代表の質問が、テレビ中継がされなかった。少数野党にとってテレビ中継は党の政策を知ってもらうために必要不可欠な機会であるにもかかわらず、国会日程の遅れで中継ができなくなるのは不平等である。遠藤議員の指摘は真っ当であると言えよう。

 その後、遠藤議員は道徳心とコロナ経済危機対策について一般論を確認したあと、教員の子どもに対する性犯罪問題について最も時間を使った。子どもに対し性犯罪をした教員を現場から排除することは必要ではあるが、釈放後10年が経過するなど、刑が消滅した後もそのような制限を設けることが可能か否かなど、深い議論を行った。

国民民主 コロナ感染・経済対策に的を絞る玉木代表

 国民民主党は、玉木雄一郎代表が質問を担当した。

 感染対策として、まず玉木代表は、抗原検査を低価格で行えるようにすることによる、感染封じ込めと経済の回復を提案した。立憲・枝野代表の「zeroコロナ」と異なり、玉木代表の「コロナ第4波封じ込め」策は、検査の手法を提案している分、実現可能性を一定程度期待できるほど具体的であると言える。

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 さらに玉木代表は、休業要請、時短要請の補償案として、「家賃+従業員数×10万円」という形で、事業規模に応じた金額を給付するよう提案した。

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 最後に、現金給付への10万円一律給付を再度提案したが、菅首相は再度、再給付を否定した。菅首相は「緊急小口資金」に言及したが、先が見通せない中で「金を借りろ」と言わんばかりの答弁は暴論である。玉木代表の提案通り、現金一律給付を再度実施するべきである。

 玉木代表の質問で最も特徴的だったのは、全野党の中で、唯一積極財政と金融緩和の継続を訴えた点である。「雇用と産業を支えるため、金融・財政政策を含むあらゆる手段を動員する」とするG7の声明を引用しつつ、玉木代表は政府の中途半端な財政政策に対する姿勢を質した。危機の中で正しい経済政策を対案として提案する野党は、貴重な存在である。

 

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