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【都議会議員選挙 各党公約解説】②公明党・国民民主党 —中道政党の生存戦略

6月25日に告示、7月4日に投開票される東京都議会議員選挙が始まりました。コロナ禍では、昨年夏の都知事選では小池百合子東京都知事が再選を決めたものの、同日に行われた都議会議員補欠選挙で知事が特別顧問を務める都民ファーストの会が不振。一方前回都議選で大敗を喫した自民党は補選が行われた全選挙区を制するなど、明暗分かれる結果となりました。

今回の都議会議員選挙で主要な争点となっているのは、やはり新型コロナウイルス対策。ワクチン接種の規模が徐々に拡大しているものの、感染状況そのものも予断を許さない状況であることも事実です。またこれによる東京オリンピック・パラリンピックの開催是非や観客の有無などを論点にしている人もいます。

候補者を擁立する主要政党・政治団体は既に、これらを含む様々な政策案を打ち出しています。このシリーズでは、候補者を擁立している政党・政治団体ごとの政策を2党ずつ解説していきます。

第2回目となる今回は、都民ファーストの会との連携を解消し、自民党との選挙協力に動いた公明党と、都民ファーストとの連携を模索する国民民主党の都議選公約を解説していきます。

前回記事はコチラ:【都議会議員選挙 各党公約解説】①都民ファ・自民 —問われる小池都政

「元」知事与党の公明党は、福祉中心。選挙では自民党と政策協定。

4年前の都議会議員選挙では、都民ファーストの会との選挙協力が功を奏して全員当選を果たした公明党。1993年以来、すべての都議選で全員当選という快挙を成し遂げてきました。

しかし今回の都議会議員選挙では、4年間の間に溜まった都民ファースト・公明両会派の対立により、もともとの連携相手である自民党と「復縁」。候補者数は選挙前と変わらない23人ですが、前回とは打って変わって逆風の厳しい選挙戦を強いられており、全員当選は難しいのではないかという予測も出ているようです。

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自民党とは16項目に及ぶ「政策協定」を結びました。内容については公表されていないものの、「新型コロナ対策」「コロナ後を見据えた経済対策」「2020東京大会の開催」「災害対策」などが並んでいるということです。

参考:公明党が都議選で「大量落選」の危機 逆転のカギを握るのは“宿敵”の共産党? 〈dot.〉

では、具体的な政策を見ていきましょう。

公明党は他党のように、詳細な政策集を制作するのではなく、8つの主要公約を公表する形を取っています。これらを「チャレンジ8」と呼び、YouTubeチャンネルで動画を使った解説を行うなど、広報にも力を入れています。

1つ目に掲げたのが、「第2子の保育料無償化」。2019年10月に第3子の保育料無償化と第2子の半額化を実現した実績をアピールし、次は第2子の無償化を掲げ、「公約の顔」としています。

2番目に掲げたのが、高校3年生までの医療費無償化。所得制限を設けたうえで、子ども医療費を高校3年生まで無償にすることを掲げました。国の制度を突き上げる目的もあるということです。

3つ目に掲げたのが、肺炎球菌ワクチンの無償化。接種費用への2500円助成を実現した実績をアピールし、高齢化社会に備えて無償化を実現することを掲げています。

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4つ目に掲げたのが、重粒子線治療の導入。作用が少ない「重粒子線治療」を都内で初めて都立病院に導入することでよりがん医療を高度化し、患者負担を軽減することを目指しています。

5つ目に掲げたのが、駅のホームドアの整備拡大。これはバリアフリー推進の一環としての政策で、利用者10万人以下で視覚障がい者の利用が多い駅へ、ホームドアを優先的に整備するものです。障がい者や高齢者、子供でも利用しやすい駅を目指しています。

6つ目に掲げたのが、高速道の渋滞緩和推進。具体的には、渋滞の要因としてたびたび指摘されている都内の高速道路上の料金所7カ所(永福、三鷹、錦糸町など)を撤廃するとしています。またETCの有効活用を促進することも盛り込んでいるようです。

7つ目に掲げたのが、「東京都動物愛護センター」を新たに設置すること。動物との共生が進む時代の変化に合わせ、「殺処分のための施設」ではなく、「保護し、引き取り手を探す」施設としての愛護施設新設を目指し、高齢者や一人暮らしの若年層の精神的な支えとなるという視点もあると言います。

8つ目に掲げたのが、調節池の増設。豪雨災害に備え、環状七号線の地下に国内最大級の地下調節池を設置するとともに、都内9カ所に調節池などを新設するものです。

なお、動画ではこれらの他に、議員報酬2割カット・政務活動費の公開、減額・費用弁償廃止などの身を切る改革や、都議会の役割などの解説も行っています。

全体としては都議会公明党のこれまでの実績をアピールしたうえで、福祉政策を前面に出して「公明党の伝統的な政策」を掲げた形と言えます。

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一方で、災害対策など一部を除いた政策については自民党と棲み分けており、とりわけコロナ対策などについての具体的な政策はありませんでした。また各党が挙って政策に盛り込んでいるオリパラ関連も、都議会会派の東村幹事長が「五輪憲章で五輪の政治利用は禁止されており、書き込むと憲章に引っかかってしまう」と述べるなど、距離を置いているようです。

「改革提案型」の国民民主党は、「コロナ」と「SDGs」

都民ファーストの生みの親である小池百合子東京都知事が作った国政政党「希望の党」に参加した民進党議員と、民進党が合流してできた政党が「国民民主党」です。昨年、この政党の所属議員の多くは立憲民主党と合流しますが、一部は新たに結成した「国民民主党」に残り活動を続けています。

しかし支持率の伸び悩みから、次期衆院選では非常に厳しい戦いを強いられることとなります。比例東京ブロックにも候補を擁立することから、今回の都議選については元都議ら4名の候補者を擁立。川合都連会長も「今回の都議選で結果を出すことができなければ、総選挙で戦える態勢につながらない」と危機感を募らせています。

都議選にあたっては「東京政策2021」と題し、8つの政策を掲げました。

個別政策を見ていきましょう。

1つ目に掲げたのが、医療支援策です。病院の機能に応じた役割分担と相互の連携や経営支援による安定した病床確保、各家庭に対する定期的な簡易抗原検査キットの無料配布と自宅で検査ができるホームテストの拡充、ワクチンや検査陰性に対するデジタル健康証明など、具体的な部分まで踏み込んだ政策です。

これらを実現することによって、経済を止めない仕組みを確立するということです。

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2つ目に掲げたのが事業者支援。各種支援策においてデジタル申請を充実させ、審査過程をよりわかりやすく、スピード感を重視した支援を実現するとしました。

3つ目に掲げたのが、「誰一人孤立しない、させない東京の実現」。これは具体政策ではなく、1人1人が個人として尊重される社会の実現を目指す、という理念目標と見ていいでしょう。

4つ目が子育て支援策。コロナ禍での家計支援として、公共交通機関や公共施設の利用料金を、子供・保護者ともに無料とするものです。

5つ目に掲げたのが「EdTech」推進による教育負担の軽減。いわゆる教育のデジタル化です。学校、民間、行政等が連携し、教育デジタルコンテンツの無料配信・学校のサポート環境を充実させることによって家庭の負担軽減を目指しています。

6つ目に掲げたのが「世界で一番働きやすい・住みやすい東京の実現」。これも理念目標で、差別撤廃や職場環境の改善などを想定したものです。

7つ目が、インフラ整備によるカーボンニュートラルの実現。民間の技術支援と雇用の適正移行によって集合住宅・商業施設・民間駐車場・公道等における駐車スペースへの電気自動車充電器・水素スタンドなどの設置を推進し、脱炭素社会の実現を目指すものです。

8つ目が、「デジタル社会・電子都庁」。無料Wi-Fiスポット設置を充実させることや、マイナンバーと口座を紐づけることで支援が必要な人に素早く公正な給付を可能にすることなど、行政手続きのデジタル化を推進するものです。

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全体として、理念目標と具体的な政策のバランスが取れたものとなっており、偏重の無い政策案であると言えます。特にデジタル政策などでは自民党の政策と一致するものもあるなど、とても興味深いものとなっています。

国民民主党は都議選で都民ファーストの会との相互推薦や選挙協力を目指しましたが、最終的には国民民主党が候補を擁立した4選挙区全てで競合することとなりました。一方で立憲民主党とは2人区・3人区では候補擁立を棲み分けており、各得票数は連合などの支援団体の重要な指標となっていることが予想されます。

「自民vs都ファvs野党」の構図で、中道政党はどこまで戦えるか

今回紹介した2党はいずれも国政で「中道政党」を標榜しています。両党とも今回の都議選ではとても厳しい戦いとなるため政策案が重要になりますが、各党に比べるとコンパクトでわかりやすい展開を行っています。

今回の都議会議員選挙は、中道政党が今後も東京都や日本の政界で存在感を維持することができるのかどうかの分かれ目ともいえる選挙になりそうです。

投票日は7月4日です。