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KOKKAI-204 #1 日程と目玉法案

いよいよ1週間後の1月18日、第204回国会(通常国会)が開会される。

新型コロナウイルスの蔓延により日本の政治、経済、そして何より国民生活が大きな変化を迫られた2020年だったが、2021年はより大きな困難も待ち受けているだろう。様々な課題が山積している。

また、衆議院の解散総選挙をはじめ、各種補欠選挙や地方選挙も多い今年。通常以上に緊張感の高い国会となることは間違いない。

今回より、おとな研究所ではシリーズ「KOKKAI-204」を開始し、通常国会で取り扱われるテーマやトピックを記事として投稿していく。ぜひご注目頂ければ幸いだ。

現在明らかになっている日程

既に述べたように、通常国会は1月18日に召集される。会期は6月16日までの150日間だ。今月7日に開かれた衆参両院の議院運営委員会では、今年度の第3次補正予算案と新年度予算案をその日中に提出することが官房長官によって伝達されている。この2つの予算案の詳細については次回取り扱うが、補正予算について政府与党は早ければ1月中の成立を目指している。

また18日には、菅総理の施政方針演説など、政府4演説を行うことで与野党が合意しており、これに対する各党の代表質問を20日から21日に行うことで調整が行われている。

細かな審議日程は決まっていないが、4月25日には吉川貴盛元農水大臣の議員辞職に伴う衆議院北海道第2区と、羽田雄一郎氏の急死に伴う参議院長野県選挙区の二か所で補欠選挙が行われる。

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一部ではこのタイミングに合わせた解散総選挙の噂もされているが、そうでなくても7月には東京都議会議員選挙や東京オリンピックを控えており会期延長される確率は非常に低く、きわめて窮屈な日程の国会となることは間違えないだろう。

審議予定の注目法案

ここからは、66本程度といわれる政府提出予定の法案のうち、注目法案の内容と論点を簡単にまとめていく。

新型インフルエンザ等特別措置法

現在1都3県に発令しており、新たに関西など5府県への発令が明日13日に行われる緊急事態宣言などについて定めている法律で、行政のコロナ対策の中核を担う法律だ。

3月にこの法律が新型コロナウイルスに適用されて以来、幾度となく改正の議論はあったものの、ここにきてようやく改正の議論が始まる形である。

昨年の時点でこの法律の改正審議が補正予算案と同時に審議されることを与野党で確認していたことから、政府与党は月内の成立を目指しているものと考えられる。

内容については、大まかに以下の2点が焦点だ。

  • 緊急事態宣言下における営業時間要請に応じない店舗への罰則
  • 緊急事態宣言下における営業時間要請に応じた店舗への補償

罰則や補償については12月の時点で、与野党がそれぞれ独自の立場を表明するなど早くからの議論があった。

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出典:https://news.yahoo.co.jp/articles/aa30cac664248e640894d5ea2c8ba7e69cd1dfd4

自民公明の与党は罰則については大部分で足並みをそろえているが、共産社民はすべての罰則に反対していて、立憲民主も消極的だ。一方国民民主党は刑事罰を含めた独自の法案を出しているほか、日本維新の会も行政罰には賛成している。

特に国民民主党はGoogleフォームを利用した意見募集を行うなど、緊急事態宣言や特措法に関する政策の取りまとめを内外に発信している。

また、補償についても議論が起こっている。政府は今日12日、宣言下で都道府県知事からの営業時間短縮要請に応じた飲食店への協力金を1日当たり一律6万円とする方針を示したが、立憲民主党など野党は、従業員数や店舗面積など事業規模に応じた補償を求めている。確かにイギリスなど海外の事例を見ても、休業の補償は各店舗に柔軟な対応ができるような基準を設けて行っているところが多く、国会での議論が注目される。

そして緊急事態宣言とは別の新たな枠組みも提示された。今日政府は自民党の対策本部に改正案の概要を示し、その中で緊急事態宣言の前段階である「予防的措置(仮称)」を新設することを明らかにした。

概要では、緊急事態宣言を出さずともこの「予防的措置」によって、首相が措置の期間や都道府県単位の区域を指定し、対象となった都道府県の知事が事業者に営業時間の変更を「要請」でき、正当な理由なく従わなければ「命令」に切り替えて違反した場合の過料も導入するという。

宣言を発令せずに私権を制限することができる可能性があることから、野党の反発は必至だ。

特措法改正で「予防的措置」新設 首相、知事への指示権限―政府方針 時事ドットコム

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感染症法

特措法と同様、コロナ対策の中核となる法律で、感染症の分類などを行う感染症法の改正も取りざたされている。

具体的には、新型コロナウイルス感染症の分類を現在の「指定感染症」から、最も実施できる措置の多い「新型インフルエンザ等感染症」に分類しなおすというもの。入院勧告や就業制限、建物の封鎖といった現状と同等の幅広い対策が当面維持される。

特に建物の封鎖については、実際にこれを広範囲に行った場合に事実上ロックダウンすることができるという法解釈も存在し、これについても議論が行われる。

コロナ、新型インフルと同分類へ 政府、感染症法の改正を検討 東京新聞

国民投票法

2018年6月に、自民公明の与党と維新・希望(当時)の4党が提出した法案だ。

  • 「選挙人名簿の閲覧制度」への一本化
  • 「出国時申請制度」の創設
  • 「共通投票所制度」の創設
  • 「期日前投票」の事由追加・弾力化
  • 「洋上投票」の対象拡大
  • 「繰延投票」の期日の告示期限見直し
  • 投票所へ入場可能な子供の範囲拡大

などが内容となっているが、野党が反発しているのは「テレビCM規制」が無いことだ。簡単に言えば、広告費の多寡による広報能力の差が顕在化することが問題になるわけだが、野党の本当の狙いはやはり9条を含む憲法改正論議が進むことを恐れてのことだろう。

前政権である安倍政権が退陣しても、自民党をはじめとした改憲に前向きな政党は粘り強く憲法改正の議論を推進しようとしてきた。

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現在では国民民主党も国民投票法の採決そのものには反対しない立場をとっており、採決をめぐる各党の攻防が予想される。

国民投票法改正案の問題点を解説 今後、与野党に求められる議論とは? wezzy

デジタル関連5法

支持率が不支持率を下回るなど、厳しい政権運営を迫られている菅政権が看板政策として掲げているのがデジタル改革だ。

政府は通常国会で、以下の5法案を提出する見通しである。

  • デジタル庁設置法案
  • デジタル社会形成基本法案
  • デジタル社会形成関係整備法案
  • 預貯金口座登録法案
  • 預貯金口座管理法案

これらの中核をなす「デジタル庁設置法案」は、先月発表された基本方針の中で「9月1日に500人規模で発足する」ことが決まったデジタル庁の設置が定められている。首相がトップを務め、担当閣僚として「デジタル相」を置く。行政デジタル化の「指令塔」として、各府省への勧告権など「強力な総合調整機能」を付与するものだ。

またデジタル社会形成基本法案は2000年に制定されたIT基本法を全面的に見直すもので、デジタル化推進の基本理念を明記している。国・自治体・事業者の責務や、行政サービス向上などの目標・達成時期を定めた重点計画の作成を盛り込んでいるものだ。

個人情報保護制度の抜本的な見直しを目指すデジタル社会形成関係整備法案、マイナンバーと口座情報を任意で登録してもらい、災害など緊急時に給付金の迅速な支給を目指す預貯金口座登録法案と預貯金口座管理法案も提出する。

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政府・与党、デジタル5法案を一括審議 看板政策、早期成立図る―通常国会 時事ドットコム

安保上の土地調査関連法案、災害対策基本法改正案

これらはいずれも小此木八郎内閣府特命担当大臣の所管で、いずれも今月8日に明らかにした。

1点目は領土問題担当大臣としての法案。外国の資本によって安全保障上重要な土地が買収されている問題は長年懸案とされており、こうした問題について政府は具体的な方策をとることができていなかった。

法案では、安全保障上重要な防衛施設、原子力発電所やその周辺、さらに国境離島などの土地の所有者や利用実態について調査し、一元的に管理する体制を整えるための事項が盛り込まれるという。

2点目は防災担当大臣としての法案。地方自治体が出す避難情報について、避難勧告を廃止し、避難指示に一本化することなどを柱とするものだ。

安保上重要な土地調査法案 通常国会提出へ 小此木担当相 避難指示一本化も 産経新聞

このほかにも、数多くの課題が山積している。

参議院では通常国会で、参院選の「1票の格差」是正などを議論する参院改革協議会を設置する。2019年の参院選では1票の格差が最大3.00倍になり、最高裁は「国会の格差是正の取り組みが大きな進展を見せているとはいえない」としている。早急な対応が求められるだろう。

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参院選挙制度 抜本改革見通せず 与野党に溝、足並みそろわず 毎日新聞

また萩生田文部科学大臣は先月17日、2021年度から5年かけて公立小学校の学級編成を35人に引き下げると発表。約1万4,000人の教職員定数の改善のため、関連法案の提出など法整備を行うとしている。少人数学級の促進に伴い、ICTの積極的な導入も喫緊の課題であり、通常国会でどのような対応がされるのかに注目が集まっている。

小学校、今後5年で35人学級へ…通常国会で法整備 リセマム

また厚生労働省は、男性の育児休業取得を促進するため、子の出生後8週間以内に休みを取りやすくする男性版産休の制度案をまとめており、政府・与党は関連法案を通常国会で成立させ、2022年度からの実施を目指す。企業に対象社員への個別の働きかけを義務付けることなどが特徴だ。

男性の育休の取りづらさは近年取り上げられることが増えている。働き方、子育ての仕方の多様化は、より柔軟な社会構造の基礎でもあり、政府国会としても早急な対応が求められる。

出生後8週以内に男親の育休取得を 2022年度実施を目指す厚労省案 東京新聞

もちろん、本稿で紹介しきれなかった法案なども多い。条例案も約10本ほど存在する。

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第204回国会は、中身のない批判やそれに対する応酬などではなく、差し迫った危機や山積した課題にしっかりと対処できるような実りある議論が行われることを願ってやまない。

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