【主張】政党学生部に所属する大学生と著名人の応酬に、政治家が介入する余地はあるのか。

 「おとなを研究する」ことをコンセプトとして掲げ、活動する私達おとな研究所として、決して看過できない発信を目にした。本稿はあくまでSNS上で起きたトラブルをベースに、事実関係を検証可能なものとすることを目的に執筆するものである。

 普段よりおとな研究所の記事を読んでくださっている皆さんの知的好奇心を満たすものには到底ならず、あまりに程度の低い誹謗中傷について淡々と述べることとなってしまうのは、筆者としても慚愧に堪えない。しかし、こうした知性とは程遠い言論に対してより厳しい態度で望むことも、健全な議論の空間を維持する上で重要だと考える。しばしお付き合い願いたい。

事の始まりは1つの引用RT (リツイート)

-私は都内の中心部に実際に住んでいます。ほとんどの飲食店は時短営業に悩まされているのです。なぜ一部のケースで日本を貶めるのですか?あなたにはジャーナリストとしての資格がありません。

 外国人ジャーナリスト・Michelle Ye Hee Lee氏のツイートに上のようなリプライを送っているのは、早稲田大学公共政策研究所 招聘研究員で政治アナリストの渡瀬裕哉氏だ。Michelle氏はツイートの中で、東京において20時を過ぎても営業を続けている店舗内の写真とともに、「客の殆どが五輪サッカーの準々決勝を見ている」と付記しているのである。これに渡瀬氏は「一部のケースだ」と断じた上で「ジャーナリストとしての資格がない」と言い切っているのである。

 このツイートに対して噛み付いた以下のツイートが、一連の事態の発端となった。

-「ジャーナリストとしての資格があるかないか」ということは、”Tea Party”の専門家が決めることではないという強い確信があります。

 これは、国政政党「日本維新の会」傘下の学生団体「日本維新の会学生部」広報課長の肩書を持つ大学生によるツイートである。「ジャーナリストとしての資格の有無」について渡瀬氏が決めることではない、と言っているわけだ。いわば渡瀬氏に「絡んだ」わけである。

 「Tea Party」とは、2009年からアメリカで盛り上がりを見せた保守ポピュリズム運動「ティーパーティー運動」のことで、渡瀬氏は2011年頃こうした活動に積極的に参加し、自ら「Tokyo Tea Party(東京茶会)」を設立するなどしていた。そのためここで言及しているわけである。

 これに、渡瀬氏が反応する。

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 神谷氏が「国政政党の学生部」であることを指摘。「外国人記者の側についた」と認定した。

 ここで注意するべきなのが、神谷氏は別に「記者の側」にも「渡瀬氏の側」にも立っていないということである。あくまで渡瀬氏の「ジャーナリストとしての資格」云々の表現を指摘したに過ぎないからだ。先程神谷氏のRTを「絡んだ」と評したが、明らかに異なる認識を持ったツイートに対して異議を唱える引用を行うことは、ツイッターの使用方法として何ら問題はなく、むしろそれを問題視するのは表現規制になりかねないのではないだろうか。

やり取りはヒートアップ。議論は本質から外れて…

 神谷氏は記者の資格云々を問題視している点を指摘する。

 しかし、渡瀬氏はこれには反応せず、「若いうちは選挙区の個々訪問を」「飲食店の人の声」といった全く無関係の話を始める。ここで問題になっているのは「ジャーナリストの資格」云々であり、元の記者によるツイートの内容ではない。これにも神谷氏は反応。自らも「この感染者数での規制強化は反対」であることを付言する。

 すると、なぜか渡瀬氏は「話は聞いてあげます」といった上から目線で、にわかにいきり立ち始める。

 これに神谷氏が「やったことある」と反論。末尾に「(爆笑)」と入れていることは明らかに悪意があるだろう。

渡瀬氏は我慢ならなかったらしい。あろうことか「勘違いしたガキ」と言い放ったのである。

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渡瀬氏が神谷氏をブロック。これで落ち着くかと思われたが…

 ここまでのやり取りを見てきて、渡瀬氏が神谷氏の提示していた論点について全く触れようともせず、「個々訪問」「飲食店の声」といった無関係の話でしきりにまくし立て、挙句の果てに「勘違いしたガキ」と言い放ったという経緯はご理解いただけただろう。

 このツイートに続ける形で、渡瀬氏は以下のようにも述べた。

 「勘違いしたガキ」の次は「頭悪いガキ」だ。このような言葉は、学問や教育と全く無縁の人間が発した言葉ではない。渡瀬氏は現職の早稲田大学公共政策研究所 招聘研究員。仮にも学生と肩を並べて研究する立場の人間だ。学生に対する発言として、認められるのだろうか。

 この醜い罵倒は、8月1日の夜に結局渡瀬氏が神谷氏をブロックしたことで、ひとまず終りを迎えた。はずだった。

再燃した理由は守島正・大阪市議の「謝罪」

 翌朝、事態は思わぬ方向に動く。

 神谷氏が所属する「維新学生部」の上部組織・日本維新の会の衆議院選挙区支部長であり、現職の大阪市会議員・守島正氏が、渡瀬氏のツイートを引用して「当方学生部の非礼な投稿をお詫び申し上げます」と謝罪したのだ。

 加えて、神谷氏のツイートが党の見解でないことも記している。これはその通りだろう。そもそも下部組織である「学生部」が党の見解をそのまま反映する組織ではないことは明らかである。一方で神谷氏には肩書が存在するため、学生部としての発信と取られる可能性もまた多いにあった。

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  渡瀬氏は、「貴党の看板があった」として政党の見解と解釈したと返信している。

 一学生部の役員のツイートを持って、国政政党との「お付き合いを見直す」というのは筋違いも甚だしいのではないか。そもそもこうしたやり取りはなにもTwitterで行う必要はない。明らかに何処かへ向けてプレッシャーを与えている。

 そして筆者が何よりも問題視しているのは、守島氏が謝罪を行ったことで、「神谷氏の非礼な態度」を党として認めたという形が成立したということである。

「政党学生部」の言論の自由が問われている

 繰り返すが、神谷氏が先に渡瀬氏に「絡んだ」ことは間違いがない。「(爆笑)」という明らかに不適切な表現があったことも事実だろう。しかしそもそも神谷氏の主張は全くの見当違いに基づく中傷ではなく、名のある著名人へのれっきとした「批判」である。これに対して「勘違いしたガキ」「頭の悪いガキ」などと中傷を重ねたのはむしろ渡瀬氏の方だ。

 しかも、党の役職にある人間がそれを「ツイート」という衆目が集まる場で認め謝罪したのである。すでにTwitter上では、維新支持者を含め多くの人間が神谷氏を批判し、さらには神谷氏への処分を要求するなどしたことで、内外の立場ある人間が謝罪するなどに追い込まれている。

 筆者はこれを陰湿な言論封殺だと考える。神谷氏とトラブルを起こしている相手が、仮に本名アカウントだとしても、さほど影響力がない場合、果たして現職市議がツイートで謝罪を行っただろうか。

 「ツイート」は一方通行ではない。拡散である。そこには明らかにギャラリーの視線への意識が存在する。「市議が渡瀬氏へ謝罪した」という事実はすでに出来上がった。それを突きつけられる神谷氏。守島氏の「謝罪」は何に対する謝罪だろう。神谷氏が批判したことだろうか。自らの意見を述べたことだろうか。

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 ぜんたい、政党学生部とはこのような組織なのだろうか。一方がブロックして終わっていれば、もう一方が著名人であろうがなかろうが、ただのツイート喧嘩である。しかし、政党政治家が反応することは全く異なる意味を持つ。どちらかが悪くてどちらが悪くないか、という個々の主観をより決定的にする。

 事実関係を経過として見た時、渡瀬氏と神谷氏の主張はそもそもから噛み合っていない。後半は明らかな人格攻撃だ。にもかかわらず、なぜ「神谷氏が悪い」ことで決着をつけようとしたのだろうか。政党学生部が自由な発信を認められないというのなら、市会議員どころか国会議員すらも行っているツイートでの応酬は咎められないのか。

 決して「Twitterでのやり取り」を咎めるべきだと言っているわけではない。人格攻撃さえ行わなければむしろより自由であるべきであり、そこに「所属団体の上部組織の政治家」は介入する余地はないのである。

 「言葉」には重みがある。責任がある。渡瀬氏も、神谷氏も、その認識はいささか不足していただろう。

 時として「言葉」よりも力を持つのは「権力」だ。各々のレトリックや感情を、跡形もなく、木っ端微塵に打ち砕く。今、「政治家」と「政党学生部」が問われている。

 

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Akiおとな研究所 編集長

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おとな研究所 編集長
趣味は短歌、動画編集。不登校経験あり。

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