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宮城県が水道民営化?その有用性と問題点を探る

 現代社会では、人口減少・少子高齢化が進む中で、多岐にわたる事業が民営化される風潮になっている。中曽根政権での国鉄分割民営化、小泉政権での郵政事業民営化など、その例は多く存在している。

 そんな中、近年何かと話題となるのが「水道民営化」だ。日本では現在、水道事業はほぼ自治体が担っているが、採算が取れず、公営から民営への転換を検討している自治体も多くある。

 今回は、7月に宮城県議会で可決された水道民営化を推進する「みやぎ型管理運営方式」に着目し、水道民営化の是非、制度について考えていきたい。

宮城県議会で水道民営化議案が可決

宮城県議会は5日、上下水道と工業用水の20年間の運営権を民間に売却する「みやぎ型管理運営方式」の関連議案を賛成多数で可決した。上水道を含めた3事業一括の民間委託は全国初で、県は2022年4月の事業開始を予定する。

毎日新聞より

 宮城県がついに、水道民営化に向けて大きく舵を切った。

 宮城県の村井喜浩知事は「人口が急激に減る中、水道料金が上がるのを抑えるためにはこの方式が一番いい。このモデルが全国に広がっていくと思う」と話し、水道民営化の有用性を改めて強調した。

みやぎ型管理運営方式とは?

 みやぎ型管理運営方式とは、水道事業全体を県がマネジメントしたうえで、民間業者の業務として設備点検・監視・水質検査などのオペレーション業務を委託し、それらに加え設備の修繕・更新業務を移譲するものである。

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 県は法に基づく水質検査や管路等の整備など、重要な事業は引き続き実施し、インフラの「所有権」自体は引き続き自治体に存在するが、運営権は民間に移譲するといったものだ。

 これらは「コンセッション方式」と呼ばれ、2011年6月のPFI(民間資金を活用した社会資本整備)法が成立したことで可能になった。

全国初の上水道民営化へ、宮城県が条例案 | 日経クロステック(xTECH)
宮城県資料

 民間に業務を委託することにより、20年間で約250億円ものコストが削減できるとされているが、その一方で問題点も存在する。

水道民営化の問題点

 水道民営化において第一の問題点として挙げられるのが「水質の安全性」である。民間委託においては、運営レベルが低下する可能性が考えられる。

 実際に、アメリカのアトランタ市では1998年に公設民営で民間企業への委託が行われたが、配水阻害・泥水の地上噴出・水道水への異物混入が起こり、2003年に市運営に切り替えられた。

 ただ、今回の宮城県のプランでは水質基準をより厳格にし、住民不安の払拭に努めるとしている。

 また、民営化により、本来の意図とは裏腹に料金が上昇してしまう可能性がある。民営化したとはいえ、水道には選択性や代替性が存在しない。つまり、市場競争は依然としてない状態になり、いくらでも水道料金をあげてしまうことが可能になる可能性もある。

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 フランスのパリでは、かつて公設民営で民営化を行ったものの、水道料金が高くなったことから、2010年に再公営化された。

 このように、値段が吊り上がり、一般国民の生活を脅かす可能性も十分に考えられるだろう。

結局、水道民営化とは。

 ここでは、水道民営化の有用性ならびに問題点について指摘してきた。民営化により、運営コストの削減が期待されるものの、水質問題や価格の不安定性など、懸念される要素も多い。これまで、外国では失敗例が多くあり、民営化は困難を極めている。果たして、「みやぎ型管理運営方式」はそれらをうまくカバーしたものになっているのだろうか。

 日本では初めてとなる水道民営化がこれから運営をしていく中で、より庶民の生活に寄り添ったものになることを切望するばかりである。

関連記事:新自由主義とは一体何か?(1)

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参考資料

宮城県、水道運営権を民間に売却へ 上下水道含めた委託は全国初|毎日新聞

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みやぎ型管理運営方式『Q&A』

 

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