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国民民主党は民主党の亡霊なのか?政策を比較する。

19日、衆議院選挙が告示され、選挙戦が本格的な開幕を迎えた。各政党は31日投開票に向けて動き出しているが、その中の要と言えるのが「マニフェスト」だ。各政党の政権構想であるマニフェストは告示前に発表され、有権者の判断基準の一つとなっている。

各政党がマニフェストを出す中、特に政策を全面に押し出しているのが国民民主党だ。「政策がある」と言うスローガンを掲げ、積極的に提案を行っている。しかしながら、国民民主党のマニフェストを精査すると一つの事実が浮かび上がる。

「民主党政権交代マニフェスト」と極めて似ている点だ。

2009年の衆議院総選挙ではその大胆さから世間の脚光を浴び、民主党の選挙大勝に大きく貢献した。しかしながら、政権交代後はその大甘な設計や前提が響き、その大半が「実現不可能」となり、撤回され、消えていった。結果的に世論の失望と反感を呼び、民主党は政権の座から転落、維新や希望の党などの「第三極」政党との競争に見舞われ、解党されるまでに至った。

今では旧民主党の議員は自民党、や維新にまで散らばっているが、主な後継政党は2つある。野党第一党の「立憲民主党」と野党第四党の「国民民主党」だ。立憲民主党は設立の経緯から旧民主党よりも左派路線で、日本共産党とも連携している。だが、国民民主党はそれに対する後継政党として中道路線を追求している。

旧民主党は保守から極左までが混在し、マニフェストや政策など、党のスタンス自体は中道に近い部分があった。結果的に、国民民主党は立憲民主党と比較して旧民主党と近い立ち位置にはいる。

関連項目:徹底分析!国民民主党衆院選公約 「動け、日本」スローガンに込められた決意を読み解く①

ガソリン値下げ隊!?

民主党は2009年に目玉公約の一つとして「ガソリン暫定税率廃止」を掲げた。一リットル当たり25円の引き下げを主張し、候補者の一部は「ガソリン値下げ隊」まで結成する程の重点政策となっていた。この政策は都市部に偏重していた民主党の支持を地方にも拡大させい、政権交代に貢献した。しかしながら、同時に掲げていてた地球温暖化対策としての温室効果ガス25%削減との整合性もあり、撤回せざる得なくなった。

国民民主党は衆院選の公約として「ガソリン課税停止措置」を掲げている。玉木党首は2009年と同様、一リットルあたり25円分の減税を主張している。地方での比例票発掘を目的としているのだろうが、いかにも2009年を彷彿させる政策となった。しかし、国民民主党は公約として2050年カーボンニュートラルを掲げている。2009年よりも積極的な温室効果ガス削減目標なのにもかかわらず、トリガー条項とは言え同じガソリン税減税を主張する事は反省してない様に見えてくる。少なくとも、国際的な反応を考えた場合、2021年で世界をリードする筈の先進国日本が地球温暖化を促進させる税制を導入する事で国際社会から猛烈な批判にさらされる事は見えている話だ。

高速道路料金削減?

今こそ、導入すべきダイナミックプライシング | コジデンで働く代表取締役歯科医師のブログ

民主党との相違点はそこだけでは終わらない。民主党のもう一つの地方向け目玉政策であった高速道路無償化が復活している。経済対策の一環として社会実験まで行われたが、結局は2011年に撤回された。なのにも拘らず、後継政党である国民民主党は「上限設定」と「定額制」と言う事実上の値下げ政策を主張している。

高速道路無償化は10年以上前にとん挫している政策だが、今は地球温暖化対策としてもモビリティ革命が求められている時代だ。これ以上自動車利用を促進する事は時代錯誤としか言えない。ダイナミックプライシングなど、需要の集中の回避策が真剣に議論されている中、それの真っ反対である定額制の導入を主張する利点も見えてこない。

個別保障制度

2009年に民主党が都市部だけでなく、地方、特に農村部で大きな支持を得た理由が「農家の個別保障制度」導入だ。政府によって設定された生産量によって生じる赤字分(生産費と全国価格の差額)の補填を行う制度だが、結果として農業の生産性向上と集約を妨げる存在となっている。費用対効果の観点から順序廃止された政策だが、国民民主党は復活を主張している。

そもそも政策の一つとして「生産性向上」を主張している政党がその真逆の結果を生み出す個別保障制度の導入する事を主張する事自体が不可解だが、やはり民主党回帰の風潮が透けて見える。2009年には1兆円以上の費用がかかるとされ、自由貿易時代に果たしてそれが適切な支出なのかが見えてこない。

「新しい答え」を 

立ち位置自体が似ている事は全く悪くはない。しかしながら、政権交代から10年以上たった今、進歩を遂げていないのであればそれは学習能力がないと言われても仕方がないだろう。スローガンやキャッチコピーが変わっていても、中身が同じであれば、何故前の政権で実現不能だった事を今回も主張するのか?本気で政策を実行する気が無いのか?このような疑問が浮かび上がってくる。

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旧民主党と国民民主党はこれだけ政策が似ていてても、支持率には雲梯の差がある。もちろん、候補者擁立状況が桁違いな事もあるが、2009年には政権交代確実であった情勢は今では比例ゼロ議席もあり得る予想がメディア各社から出ている。政策の本質は変わっていないのに、有権者は離れてしまった。有権者は時代と共に先を進んだが、国民民主党
は過去の成功体験に囚われているのではないか?

関連項目:2021衆院選 政党相性診断

関連項目:衆院解散、総選挙へ— 各党の公約と政策を分析(①与党編 自民党・公明党)

参考文献:国民民主党マニフェスト

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