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【都民ファーストの会大健闘・自民党苦戦】東京都議選の結果分析とこれからの政局の展望は

東京都議会議員選挙は4日、日曜日に投開票が行われた。当初、自民党公明党が圧勝し都議会過半数を伺う勢いであるとされていた予想を大きく覆し、小池百合子知事が率いる都民ファーストの会が大健闘。結果としてどこの政党も過半数を獲得できなかった「勝者なき都議選」となってしまった。

選挙予測専門家・マスコミ泣かせの都議選結果

告示後、都議選情勢調査によると、自民党が都議会第1党を獲得し選挙協力を共にする公明党と合わせて都議会過半数を獲得する情勢であると各社軒並み報じていた。また、告示前後に業界関係者等に流出した「自民党調査」と題する都議選情勢調査でも似たような傾向が見られ、自民党が議席を大きく伸ばすことに加え、都民ファーストの会が最悪議席が1桁台に沈む可能性があると指摘されていた。自民党情勢調査結果は以下の画像より。

(選挙終わりましたので、添付させても問題ないと判断しましたので記事に掲載させて頂きます)(この後告示後にも調査が行われ、自民50議席台、都民10議席前半等のデータが出ましたが、詳細は所有していない為に添付できません、申し訳ないです)

また選挙予想で定評のある大濱崎さんもこの自民調査とほぼ同じ議席予想を公表しており、ライターの私も似通った予想をインターネット上で公表していた。

序盤・中盤戦と途中情勢調査や出口調査ではこのような予想通りの展開となっており、無風のまま選挙戦が終盤まで持ち込まれると思われていたが情勢は終盤となり一変した。

選挙期間中、疲労で療養していたとされる小池知事が公務に復帰。記者会見にも臨みその席でもまだ体調不良の様子が伺えた。そして最終日。急遽、小池知事は接戦区で都民ファ候補への応援入りを表明。党代表の荒木氏(中野区)や側近の尾島氏(練馬区)などでマイクを握り支持を呼びかけ。結果として追い風となり、当初予想を大きく覆し都民F善戦という結果へと導いた。もちろん、都民Fが終盤戦となり勢いづいた理由はいくつか考えることができるが、一番は小池知事の戦略が功をなしたともいえよう。

自民党支持層の離反も

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小池氏の巧な戦術によるものも大きいが、一方、出口調査によると自民党支持層の離反が都民F大健闘という結果に結びついたと考えられる。読売新聞が実施した都議選出口調査(母数約23000)によると、政党支持率は自民党が最多の33%、立憲民主党11%、都民ファーストの会6%などと続いた。しかし、自民党支持層の約2割が都民ファーストの会候補者へ投票、無党派層の3割も投票した。また、選挙アナリストの大濱崎氏が指摘していた(記事は先に添付済み)通り、小池知事は女性からの支持が高いことに加え、それらの層は投票先を決めるのが比較的遅い立場にあることが都民ファの終盤追い込みを特徴づけたのではないかと考えられる。また、都民ファは選挙戦中盤より「五輪無観客」を主張しはじめた。(街頭でも無観客と書かれた緑色の登り旗を各都民F陣営が掲げていたことが印象的であった)この戦略がオリンピック反対・中止or延期派を都民ファ候補への投票に一定結びつけることに成功したとも思われる。そのために、立憲民主や共産党が想定より議席を伸ばすことができなかったのではないか。

次に、政党別にて都議選の結果と分析を見てみる。(一部政党は上記文と重複するために省略させていただく)

政党別の結果分析

都民ファーストの会

当初議席1桁台とも言われてきた都民ファーストの会は31議席を獲得し、選挙前よりも議席を減らしたものの「健闘」した。終盤及び当日投票で都民ファは勢いづいたと考えられ、要因は先ほど述べた通りであると考えられる。

自民党・公明党

自民党は都議会第1党を4年ぶりに奪還したものの、議席を想定より伸ばすことができなかった、特に1人区では千代田区などで惜敗し2〜3人区そして4人区でも自民候補が敗退した。大田区など複数区でも自民党候補が共倒れするケースが多く見られた。こうした背景には自民党支持層が都民Fへ流れたことに加え、積極的な候補者擁立(3人区に2人擁立など)が失敗したことなどが挙げられる。

各メディアなどは自民党への逆風と捉え、総選挙で敗退するのではないかと論じる場合も少なくないが、国政選挙では自民党に代わる保守層の受け皿が現時点ではない(強いて言えば日本維新の会や国民民主党くらいか)為に、直ちにこの都議選結果が衆院選に直結するのかといえばそこには疑問符が生じる。

公明党は擁立した23人全員当選を果たした。候補者全員当選はこれで8回目となり、組織政党としての底力を見せた。当初、コロナ禍において支持母体の創価学会が十分に動けないことなどが懸念材料とされ、中野区など一部の選挙区では議席を失うのではないかと見られていた。しかし終盤戦では追い込み特に目黒区では約600票差で当選を果たした。

立憲民主党・共産党

立憲民主党と共産党は選挙前より議席を伸ばしたものの、共に20議席代に届かず伸び悩んだ模様だ。ただ、立憲民主と共産党は一部選挙区では事実上の棲み分け作業を行い、文京区や渋谷区では一定の成果が現れた。また、特に共産党は「オリンピク反対票」を手堅く取りまとめたことが議席増加に貢献したと考えられよう。

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両党は次期衆院選でも共闘を加速させたい考えではあるが、立憲民主党の支持母体の連合などが共産党との協力に否定的な考えを示しており、調整は難航すると考えられる。

日本維新の会

日本維新の会は13人を擁立したものの、当選者は1人(大田区)に留まった。維新は告示直後より1議席から数議席上積みできるかどうかという厳しい戦いであった為に大まか予想通りの結果であったとも言えるが、それでも都民F旋風が吹き苦戦を強いられた4年前と同じ数字であった為に党としては結果に物足りなさを感じていたのではないか。選挙戦最終盤には松井代表・吉村副代表が上京し重点区候補者に応援演説を行なったものの、追い上げには時間が足りなかったのも事実である。本来維新に流れるべき第三極票が終盤になり都民ファに吸収されてしまったものも一つの要因ではないか。

また、1議席に留まったのは(維新側の人間として選挙結果を分析すると)いくつか理由があると分析する。当選又は当落ラインギリギリで落選したのは4選挙区(大田、北、練馬、世田谷)で、これらの選挙区の共通点は「公認発表・活動期間が他の候補者と比べて早かった」ことであろう。(大田・北の候補者は一年前の補選にも出馬しており、練馬・世田谷は都議候補としては一次公認という位置付けで昨年12月に発表されていた。)いくら性質が国政選挙に似通っていると言われる東京都議選であれ、都議選は地方選挙の一種であることには変わりがない。得票率ベースなどデータで解析する限りは都内で維新が獲得できる選挙区は複数存在するものの、やはり地元活動の活動期間により差が出てしまったことは否めない。

他にも維新が都議選で議席を伸ばすことができなかった理由はいくつかあげることができるが、公開の場で論じるのはこれだけにしておこう。いづれにせよ、(党にも事情があるはずなので無責任ないいようになってしまうとは承知の上だが)維新が次の統一戦そして4年後の都議選で勝利するには候補者決定をいち早く行い地元に根ざした活動を地道にやっていくことが不可欠ではないか。

実際に私自身も都内で活動をさせて頂いたが、1年前よりも東京都内で維新に対する反応は断然よくなっていると思う。中立の立場で記事書きの仕事をしている上ではあまりこういう記述はしたくないが、全ては維新の候補者議員の皆様の活動の成果そして大阪の吉村知事・松井市長の実績そして評価があるからであると思う。東京都内でも維新は確実に進歩していると感じた選挙戦であった。

国民民主党

公認候補者4人を擁立した国民民主党が議席を獲得することができなかった。東京都内をはじめ全国的に国民民主党の支持率が低迷していることに加え、山尾志桜里氏のスキャンダルや衆院選に出馬予定の者が万引きの疑いで逮捕されたことが報道されるなど、悪く言うと「悪目立ち」したことがどう作用するかも注目していたが、選挙結果は多くの選挙分析の専門家やマスコミなどが予想する「0議席」であった。一部の候補者は支持母体の連合から推薦を得たが、立憲民主や都民ファーストの会と競合したこともあり、独自色を発揮できず埋没した。先の提示した自民党情勢調査でも、告示前より国民民主党の候補者は一部の選挙区では「NHK党」とほぼ変わらない数値であった。選挙戦を通じて多少は支持を伸ばしたとも取れるが、この結果は今年中に行われる衆院選では厳しい結果になることを暗示しているのではないかとも取れる。

れいわ新選組

世田谷区などを中心に3名の候補者を擁立したものの、全員落選と厳しい結果になったのがれいわ新選組である。比較的支持が高いとも言われていた世田谷区でも厳しい戦いとなった。れいわが擁立した選挙区では生活者ネットワークなどいわゆる左派政党が乱立した結果であるとも分析することができる。

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余談であるが、得票ベースでも検討すると、もう一つ新たな結果を検討することが可能となった。

19年の参院選全国比例や20年都知事選の結果より東京都内で一定数の支持が固いと言われていたが、そのれいわ票の半数は「山本太郎氏の個人票」であり、それはれいわ支持に必ずしも直結しないということである。今回、れいわ候補が得た得票は19年参院東京選挙区で野原候補(れいわ公認)の票に近くなっており、これがれいわ基礎票であると証明されたとも言える。

つまり、れいわ新選組の持つ基礎票というものは19年参院選全国比例のれいわ票から山本太郎個人票をマイナスしたものであるということだ。(全国的には100万票程度、東京都内は20万票〜30万票)

この結果より、山本太郎氏の個人商店から脱却できていないことを指摘することができ、れいわのお膝元である都内での勢力拡大へ向けた課題が見えてきたのではないか。衆院選での戦略にも注目だ。

嵐の党

諸派党構想の一環として傘下の政治団体から候補者を擁立したが、結果は惨敗に終わった。(といっても嵐の党は元々当選を目的としていない)得票率も各候補1%前後となり党としては厳しい選挙戦となったのではないか。(ただ、葛飾区などでは嵐の党と支持層が被る候補者が乱立したために直ちに国政選挙での結果を占うものになるとは言い難い)注目された、100日後に議員をやめることのみを公約とする「議席を減らします党」なども想定より得票数を稼ぐことができなかった。

また、選挙中に「古い政党から国民を守る党」から「嵐の党」に突然党名変更がなされたことも衝撃であった。

嵐の党は次期衆院選に向けて各政治団体と連携を強化する方針であるが、嵐の党が掲げる「諸派党構想」がどこまで一般の有権者に浸透するのかが課題である。

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参考 諸派党構想について→ NHK党が「古い政党から国民を守る党」に変更へ。 党名から【NHK】がついに消滅 選挙への影響は?

今後の政局展開は

今後の政局展開で注目されるのが、やはり都民ファーストの会と小池知事が次期衆院選に向けてどのように動くのかである。国政復帰が噂される小池氏は、度々自民党の二階幹事長と連絡を取り合っていることで知られ、「東京1区」や「東京9区」で次期衆院選に出馬するのではないかとも言われている。特に9区は小池氏が衆議院議員時代地盤としていた練馬区が含まれさらに、現在自民党の現職議員及び候補予定者が不在である。(あの菅原氏の地盤)

しかし、当初自民党公明党の顔色を伺い都議選中は全く動かないのではとの予想を覆し最終盤になり「小池劇場」を展開。都民ファ候補者への追い風となり、自民党の多くの候補者(特に2〜4人区)が涙を飲んだ。

2度小池氏に痛い目に遭わされた自民党(特に東京都連)は流石に小池氏復党を許さないだろう。そして今回の都議選で小池氏独自でも戦う力があると証明されたとも評価することができ、また衆院選では何かしら”女帝”は仕掛けてくるのではないかと思われる。希望の党の再来、、とも予言する者もいるがそれはないだろう。ただ、奇想天外な戦略で有権者の注目を一気に浴びせ勝利へと誘導する魔の力の持ち主が小池知事であり、「小池劇場」なのである。彼女は次は何を仕掛けてくるのであろうか。再び目が離せなくなってきた。

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