自民党山田宏議員が予備校の教育内容に介入 表現の自由侵害は許されない

駿台予備学校の使用テキストが「偏向」しているとし政治家が介入

 駿河台学園が運営する大手予備校「駿台予備学校」の日本史の授業で、使用しているテキストが偏っていると話題になった。問題になったのは、竹島問題に関する記述と、南京事件に関する記述である。

 歴史認識問題は、とてもデリケートな話題であり、論争の対象となっている事件を取り扱う際は、細心の注意が必要であることは言うまでもない。駿台のテキストが、あまりに中韓に寄った見解を記載してしまったのは事実である。それゆえに、今回、保守派に目をつけられてしまった格好である。

 一般の受験生などから抗議が出ただけであれば、単なる予備校の一事件で済んだ問題であった。しかし、あろうことか、国会議員がこの問題に介入してしまったのだ。保守系のTwitterユーザーが8月30日、竹島問題に関する駿台テキストの記述について問題視する投稿をしたところ、自民党の山田宏参議院議員が、「事実確認の上、対応します」と投稿した。翌日には、同じテキストの南京事件に関する部分も問題視され、山田議員が同様に対処する旨投稿した。

参考:山田議員のツイート①(竹島問題の記述に関するもの)

参考:山田議員のツイート②(南京事件に関するもの)

 山田議員は、即日駿台に申し入れを行い、「駿台予備校の日本史資料における『竹島』記述について、駿河台学園より下記の内容の回答がありました。 ・Twitterで批判が出ていることは承知している。 ▪︎ご指摘の箇所が適切ではないことを確認し、訂正する。 とのこと。今後、訂正内容等が決まれば確認したいと思います」「駿河台学園より連絡があり、『南京』についても『竹島』と同様確認がとれ、国の考え方に沿って訂正・削除を行うとのことです」と報告した。

 山田議員は、駿台予備校側に直接「申し入れ」を行うことにより圧力をかけ、駿台予備校側の教育内容に介入してしまったのだ。

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竹島問題に関する記述について

 さて、一旦山田議員の介入の妥当性から離れて、問題となった記載内容そのものについて検証していきたい。まずは竹島問題に関してである。駿台のテキストでは、「1905年日露戦争中に日本は独島を領土に編入して既成事実化して竹島と命名した」と書いてある。

 これについて、外務省は、以下のように言及している。

 我が国が古くから竹島の存在を認識していたことは,多くの古い資料や地図により明らかになっています。17世紀初めには,日本人が政府(江戸幕府)公認の下,鬱陵島に渡る際,竹島を航行の目標として,また船がかり(停泊地)として利用するとともに,あしかやあわびなどの漁猟にも利用していました。遅くとも17世紀半ばには,我が国の竹島に対する領有権は確立していたと考えられます。
 1900年代初期,島根県の隠岐島民から,本格化したあしか猟事業の安定化を求める声が高まっていました。こうした中,我が国は1905(明治38)年1月の閣議決定により竹島を島根県に編入し,領有意思を再確認するとともに,その後官有地台帳への登録,あしか猟の許可,国有地使用料の徴収などを通じた主権の行使を他国の抗議を受けることなく平穏かつ継続して行いました。

竹島問題の概要(外務省)

 すなわち、日露戦争と日本の竹島の島根県編入はたまたま重なっただけであり、日本はどの国よりも早く竹島の存在を認識し、主権の行使を行ってきたというものである。駿台側の記述は、韓国側の虚偽に基づく見解に立った恣意的なものであって、不当である。

南京事件に関する記述について

 また、駿台の日本史テキストは、南京問題について、以下のように記述している。

・日本軍による大虐殺
・南京における日本軍の組織的な掠奪・強姦・虐殺・放火
・占領後2ヶ月間にわたる虐殺
・中国民衆・投降兵・捕虜の虐殺は十数万以上
 中国側は30万人以上と考えている

興国さんのツイートより

 南京事件について、虐殺があったことは否めず、日本史上最大級の汚点とされている。外務省も、南京で「虐殺」があったこと自体は認めている。しかし、人数については、具体的に特定することが困難であるのが外務省の立場である。

日本政府としては、日本軍の南京入城(1937年)後、非戦闘員の殺害や略奪行為等があったことは否定できないと考えています。しかしながら、被害者の具体的な人数については諸説あり、政府としてどれが正しい数かを認定することは困難であると考えています。

歴史問題Q&A(外務省)

 したがって、駿台の記述で問題となる点は、犠牲者の数である。日本の歴史学者の一部は、秦郁彦元日本大学教授のように、「3.8~4.2万人程度」であると主張している。この説と、十数万程度という説や、20万程度という説などが対立している。他方で、中国側が主張する30万人虐殺説は、当時の南京市の人口が30万人に満たなかったことを考えれば、さすがに無理があろう。

 南京で虐殺があったことは史実であるが、犠牲者の数について説を両論的に併記せず、一方の側に寄ったという点で、駿台のテキストには印象操作があると言える。

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それでも政治家が介入することは許されない

 ここまでを見れば、駿台テキストの記載内容は、擁護できるものではないだろう。そして、そのような内容のテキストを世に出してしまった以上、受講生を含む一般人から批判されるのは当然のことである。竹島問題で史実に基づかない偏った見解を記載したという点に関しては、駿台側にも猛省を促したい。

 ただし、駿台や担当講師にも、表現の自由(憲法21条1項)が保障されている。表現の自由は、政府から特定の表現を禁止されることのないという権利である。したがって、いかなる内容であれ、公共の福祉に反するほど反社会的でない限りは、一旦は自由として保障されるべきである。

 そうすると、山田宏議員のように、与党の国会議員が問い合わせという形で駿台に圧力をかけてしまうことは、憲法上違憲の疑いがあると言わざるを得ない。確かに、駿台は専門学校・各種学校の一種であるため、学校教育法上の認可を経ている学校ではあるが、専門学校・各種学校には学習指導要領などの明確な基準はない。そのような基準がない以上は、政府や国会議員が、内容に干渉すべきではない。

 「表現の自由」は、あいちトリエンナーレでも問題になったが、今回の方がより干渉が許されない事案である。あいちトリエンナーレは、公金により開催されるイベントであり、首長がイベントの主催者であるため、首長が内容に介入しても違憲の問題が生じる可能性は極めて低い。また、「あいちトリエンナーレ」で公開が不可能であっても、芸術作品自体は他所で公開可能である。しかし、駿台の授業は、ほとんどが受講生の受講料で賄われているため、純粋に授業を行う自由が表現の自由として保障されている。したがって、駿台の授業に政府や国会議員が干渉すべきではない。

 今回のような干渉が相次ぐと、現場の講師が委縮してしまう危険性もある。国会議員には、自らの影響力を自覚の上、節度ある対応を求めて行きたい。山田議員の対応は、あまりマスコミで問題となっていないが、表現の自由の恩恵を受けているマスコミこそ、今回の件を報道すべきである。

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