混戦!?ドイツ総選挙結果を徹底分析

26日、ドイツでは第20回ドイツ連邦議会(Bundestag)を構成する議員を選出する為の選挙の投票が行われ、日本時間27日現在、開票が続けられている。2005年以降首相を務めてきたメルケル氏が引退する為、どの様な結果になろうと首相は交代する事が決まっている。これまで大連立を組んできた最大与党キリスト教民主同盟/キリスト教社会同盟(CSU/CSU)と社会民主党(SPD)が袂を分かれ、独自政権樹立を目指した選挙だが、出口調査や開票結果ベースではどの政党も単独政権を組む事は絶望的な状況となっている。

そこで本日はドイツの主要政党を説明していくと共に、今回の選挙結果がドイツにどの様な影響を与えるのかを説明していく。

ドイツの主要政党とは?

ドイツの選挙制度は日本に似ており、小選挙区比例代表並立制度となっている。しかし、ドイツには阻止条項があり、得票率5%を獲得できない政党は比例代表議席を持つ事ができない。そこで、本日取り上げる主要政党は今回の選挙で5%以上の得票率を得る事が確実とされる以下の政党を取り上げる。

  • キリスト教民主同盟/キリスト教社会同盟(CDU/CSU)
  • 社会民主党(SPD)
  • 同盟90/緑の党(Grüne)
  • 自由民主党(FDP)
  • ドイツのための選択肢(AfD)
  • 左翼党 (Linke)

各政党の立ち位置は大まかに以下の通りであり、左右、どちらも3政党ずつとなっている。


CDU/CSU(Christlich-Demokratische Union/Christlich-Soziale Union)

キリスト教民主同盟(CDU)/キリスト教社会同盟(CSU)(以降、CDU/CSUを「CDU」とみ表記)は中道右派政党連合であり、メルケル首相が所属している選挙前の最大与党である。CDUとCSUは地域別で棲み分けを行っており、CSUは南部バイエルン州のみで活動している。名前通り、両党はキリスト教系組織をバックとするが、近年キリスト教色は薄まりつつある。ほぼ立ち位置やマニフェストを共有する両党だが、地域柄若干CSUの方が保守色が強いとされている。

地盤はブランブルグ地方(ベルリンなど)や南部、地方となており、傾向としてキリスト教率が高い所からの支持が高い。

なお、欧米の中道右派政党としては比較的穏健とされており、特にアメリカの識者は「ほぼ中道」と表現する事も多く、メルケル氏に代表されるように実務重視型の政党とされる。(なお、経済政策に関しては日本の自民党より自由経済指向である。)一貫して反共の立場から、FDP(自由民主党)と連立を組む事が多い。

<スポンサー>

イデオロギー色を排した結果か、CDUは戦後ドイツ72年の内、52年間政権を握っており、ライバルSPDの二倍以上の期間、与党になっている。選挙後、首相を目指す党首はアルミン・ラシェット氏(60) イメージカラーは黒・オレンジ。

SPD(Sozialdemokratische Partei)

Flag of the Social Democratic Party of Germany.svg

社会民主党はCDUの対をなす中道左派勢力で、(色々な意味で)有名なシュレーダー首相の出身政党だ。歴史的にはブルーカラーを代表する政党で、労働組合を支持母体とし、英労働党とは兄弟政党の関係だ。主要政党の中では最古であり、1863年の結党以降、 社会的リベラリズムを掲げ続けてきた。経済政策は従来は名称通り、社会民主主義を掲げてきたが、シュレーダー首相以降は新自由主義・改革路線も掲げる。

主に工業が盛んな東部ライン=ルール地方で支持が強く、逆に東部や地方では支持が低い。2005年にメルケル氏が首相となって以降、その立ち位置の近さから3回大連立をCDUと共に樹立しているが、結果として左派の支持者は他党に流れつつある。

現在、議会での党首は現副首相・財務大臣のオーラフ・ショルツ氏(63)。イメージカラーは赤。

Grüne (Bündnis 90/Die Grünen)

Bündnis 90 - Die Grünen Logo.svg

同盟90/緑の党(Grüne)は左右の環境運動家が1979年に結党した比較的新しい政党だ。その後、東ドイツの民主活動家などが合流し、シュレーダー政権の時には連立与党にもなった。主に環境政策を重視する政党だが、他国の緑の党と比べ、比較的穏健で社会主義色が薄いとされている。結果的に、諸国の緑の党では議席獲得に一番成功している。

今回の選挙では更に現実主義路線を掲げ、NATO容認など、反戦色を封印して選挙に臨む。基本的にCDUともSPDとも連立を組む容易があると表明し、従来支持が強かった都心のみならず、郊外でも支持を伸ばしている。同じ左派政党であるSPDと比較して比較的若者の支持が強く、ブルーカラーでは無く、ホワイトカラーの支持が厚い。

党首はアンナレーナ・ベアボック氏(40)。イメージカラーはもちろん緑。

<スポンサー>

FDP(Freie Demokratische Partei)

Logo der Freien Demokraten.svg

自由民主党は1948年設立の政党では、リベラル政党である。個人の社会的、経済的自由を支持する立場で、基本的にCDUと共に「右派」と見做され、実際にCDUと連立を組む事も多いが、社会政策に関してはSPDよりもリベラルである。以前は、議会がCDU・SPD・FDPの三党のみで構成される事が多く、FDPは連立相手で与党を決定する事が多く、過去にはキングメーカーとも呼ばれていた。

減税と規制緩和を掲げているからか、主な支持層は都市部の高所得者ホワイトカラーとされている。更に、自営業者からの支持も強く、流動的なホワイトカラーとは違い、強固の支持ブロックとなっている。近年では支持者も男性に偏っているとの指摘もあり、支持拡大を目指す。

党首はクリスティアン・リントナー氏(42)。イメージカラーは黄色

AfD (Alternative für Deutschland)

Alternative-fuer-Deutschland-Logo-2013.svg

ドイツのための選択肢は近年の移民問題で支持が急増した右派政党だが、他国の右派政党と違い、医者や知識層などの支持も厚い事が有名だ。移民や難民受け入れの数を大幅に削減する事を公約に掲げており、イスラム教を批判する事から排外主義者と批判される事もある。特にドイツでは右派アレルギーが強く、全政党から連立を組む事を拒否されている。旧東ドイツで強固な支持を固める。

議会代表はアリス・ウィーデル(42)。イメージカラーは青

Die Linke

Logo

左翼党は旧東ドイツで独裁政権を敷いた民主社会党(ドイツ社会主義統一党)と、シュレーダー首相の中道路線に反発したSPDの最左派の合併によって2007年に組織された政党である。民主社会主義、反資本主義を掲げており、その歴史からドイツ当局から監視対象となっている。地盤は旧東ドイツであるが、近年都心部からの支持も増えている。

党首はディートマー・バーチ氏(63)とアミーラ・モハメッド・アリ氏(41)。イメージカラーは紫。

<スポンサー>

ドイツ社会主義統一党とは?
旧東ドイツの政党。ドイツ共産党の後身。1946年社会民主党を併合して改称,第2次大戦後の東ドイツの建設を一貫して指導。ウルブリヒト,次いでホーネッカーの指導下では,東欧の共産党中でも親ソ連の立場が強かったが,ソ連のゴルバチョフ体制によるペレストロイカの推進,ポーランド,ハンガリーの一連の民主化の動向のなかで,大量の出国者を出し,国内の民主化運動も高まったため,ホーネッカーは1989年10月書記長辞任を余儀なくされた。同年12月党名をドイツ民主共和国社会主義統一・民主社会主義党と改めた。1990年2月民主社会党と改称。

ドイツ社会主義統一党【ドイツしゃかいしゅぎとういつとう】ーコトンバンク

選挙結果

ドイツ議会の法定定数は598議席だが、比例代表獲得議席分以上に小選挙区議席を獲得した場合、超過議席が配分されるため、今回の選挙は730名程度が選出される模様だ。

日本時間午前9時現在の議会勢力予測図 
左から、赤=SPD 緑=Grüne 紫=Linke 青=AfD 黄=FDP 黒=CDU/CSU

情報元:https://www.dpa.com/de/ready-to-publish/electionslive#data-sources

 獲得議席得票率前回獲得議席数増減
CDU/CSU19424.1%246-52
SPD20525.8%153+52
Grüne11614.6%67+49
FDP9111.5%80+11
Afd8410.5%94-10
Linke394.6%69-30
その他1

暫定結果としてはCDU/CSUが52議席失い、最大政党の座をSPDに譲った形となった。SPD、 Grüne 、Linkeは289(41%)から306議席(42%)と、全体的に左派勢力が若干伸びた形となった。特に Grüne は前回結果の第6党から第3党まで伸び、躍進となった。逆に右派AfDは前回結果の第3党から第5党にまで落ち込む結果となった。

しかしながら、過半数である366議席を超える党・ブロックはなく、今回の明確な政権与党が輩出される結果ではなく、各党はこれから連立協議に入る事となる。

混迷する連立協議

ドイツでは選挙制度上、ほぼすべての政権が連立となる。しかし、これまでは日本と同様にCDUとFDPなど、連立相手には明確な勢力差があり、CDU/CSU若しくはSDPが容易に主導権と握れる形となっていた。前回2回の選挙の結果はCDUとSDPが大連立を組む異例の事態となったが、勢力は均衡する中、CDUに主導権を握られたSPDの中では不満が噴出していた。

しかし、今回の連立形成も困難となるだろう。基本的に全政党は排外主義的との批判もあるAfDとは連立と組まない事は明確にしており、唯一単純に過半数を超える「右派連合(CDU+FDP+AfD)」の連立になる事は無い。

同時に、SPDも旧東ドイツ共産政権の後継政党であるLinkeとの連立は否定している。しかしながら、Grüne の内部ではLinkeとの連立を容認する声もある。SDPとGrüneだけでは、過半数(321/366)に達しない為、Linkeが閣外協力などの形で加わる可能性は選挙前示唆されていたが、Linkeを加えても、過半数に達しない選挙結果となりつつあり、この可能性も消えたと言って良いだろう。

<スポンサー>

ここであり得る連立の可能性は3つである。

  • CDUーSPD大連立
  • CDUーGrüneーFDP連立(ジャマイカ連立)
  • SPDーGrüneーFDP連立 (交通信号連立)

しかしながら、これらの連立オプションは帳簿上辻褄が合っても、数々の問題を抱える。

(1)CDUーSPD大連立

現在、メルケル首相はCDUとSPD両党の信任によって成立している。しかしながら、両党ともにこの枠組みを維持するつもりは無く、他党との連立を前提として選挙戦を展開した。しかし、今回の選挙はCDUとFDPでは過半数に達さず、左派3党でも過半数に達しない事となった為、調整が難しい(2)と(3)の枠組みを各党が模索する事となる。

ただ、これらの交渉が破綻した場合、結局現状維持と言う形で大連立が維持される可能性はある。CDU、SPDの両党が望まない結果だが、あり得るオプションの一つだ。

(2)CDUーGrüneーFDP連立

この枠組みは一見すると、保守政党と左派政党が。しかしながら、他国の緑の党と違い、ドイツでは比較的穏健で現実指向である為、可能性として十分あり得る。実際にザールラント州では過去に実績があり、現在でもシュレースヴィヒ=ホルシュタイン州の連立政権でもある。各党のイメージカラーからジャマイカ連立とも呼ばれる枠組みだが、過去に連邦議会で樹立交渉が2回あったものの、FDPとGrüneの相違で毎回とん挫している。

前回の選挙でも、この連立交渉がなされたが、急進的な再エネ導入を求めたGrüneに対して、これに難色を示したことから交渉はとん挫、紆余曲折の末CDUーSPD大連立が樹立された。

(3)SPDーGrüneーFDP連立

この連立はCDUーGrüneーFDP 連立よりも数々のハードルを抱える。イメージカラーから信号連立とも言われる枠組みだが、イデオロギー対立が一番鮮明となる。SPDとGrüneの経済政策は比較的近く、富裕層への増税による歳出増などを主張している事から、FDPのスタンスからは相容れない所がある。(2)の連立パターンだと、妥協で中道的な経済政策が行われ、社会政策もCDU側が右派色を抑える事が必要となり、現状維持的な政権となる事により、FDPも大幅な路線修正は不要となる。しかしながら、SDPとGrüneの親和性とスタンス考えると、左派色が出てくるのは必然との言える。その部分をどれだけFDPが許容し、交渉で薄めれるかがこの連立の樹立に関しての焦点だ。この点に関してはFDPのリンダ―党首は財務大臣の座を要求すると推測され、SDPとGrüne側に経済政策では大幅な譲歩を要求するとみられている。

<スポンサー>

しかしながら、連立交渉が成功したとしても、もちろん政権樹立後何らかの相違で崩壊する可能性が一番高い枠組みであり、持続可能性に疑問が付く。

再選挙の可能性は?

前回選挙ではジャマイカ連立交渉がとん挫した後、象徴的な役職である大統領の介入で元々連立を組む気がなかったCDUとSPDが連立を樹立し、再選挙にはならなかったが、その後両党の支持率は低迷した。もし、今回も(2)と(3)の枠組みが破綻した場合、前回の経験から果たして大連立が樹立に両党が賛同するかどうかは未知数である。だが、再選挙を実施した場合GrüneやAfDなどの躍進が懸念材料としてCDUとSPD内にはあり、再選挙に反対する声を根強い。

この選挙後の連立協議が長期化する事だけは避けられないみたいだが、ドイツには欧州の盟主としての役割があり、政治的空白は許されない。ドイツ国民も早期の政権樹立を望んでいるのではないか?

関連記事:【次期衆院選 議席予想】自公は議席減も過半数維持、立憲・150議席をうかがう。維新は3倍増へ

 

フォロー・いいね・チャンネル登録での
ご支援よろしくお願いします!

おとな研の”今”を知ろう!

 

神谷ゆうた

投稿者プロフィール

ライターページ
オーストラリア国立大学、政治哲学経済学部(PPE)在籍の19歳。日本維新の会学生部広報課長

この著者の最新の記事

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

あなたへのおすすめ



ピックアップ記事

  1. 登録されている記事はございません。

スポンサー







Twitter・FaceBook

公式チャンネル

有料コンテンツサイト

スポンサー




スマホでもおとな研

スポンサー




ページ上部へ戻る