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コロナとパチンコ店 必要な対応は何か

4月28日、東京都の小池都知事は、新型コロナウイルス感染症蔓延に伴う自粛要請によって都内で営業を続けるパチンコ店が0になったと公表した。

東京「全店休業」と小池知事 パチンコ、一部店舗で営業継続も

https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2020042801001751.html

今月中旬から下旬にかけて大阪府を筆頭に、自粛要請に応じないパチンコ店の店名を公表するなどの様々な対応を取ってきた行政のパチンコ対策だが、先日はついに国もその規制に言及した。

休業しないパチンコ店に罰則も 政府、特措法改正を示唆

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200427-00000192-kyodonews-pol

記者会見で西村経済再生担当大臣が、新型インフルエンザ等対策特別措置法の罰則規定を盛り込んだ法改正を行うことを示唆したのだ。日程や基準などの具体的な内容には触れなかったものの、担当閣僚の踏み込んだ発言は波紋を広げている。

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特措法については、筆者がすでに取り上げた此方の記事を参照してほしい。

この法律は、その内容に対象の個人または法人または行政機関が従わなかった場合の罰則規定が一切ない。当然それはパチンコ店も同様なのだが、大臣が業種を名指しして「罰則規定」に言及することは異例だ。そもそもこの法律を新型コロナウイルスに適用する法改正が国会で行われた際、わざわざ「国民生活への影響は最小限とする」旨の付帯決議までされていた、

http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_rchome.nsf/html/rchome/Futai/naikakuECB0F1A58E87DC0C49258529003CB3D6.htm

この大臣発言の布石としてだろうか。25日に経済産業省によって資金繰り対策の対象事業者拡大が行われている。

https://www.meti.go.jp/press/2020/04/20200424008/20200424008.html?fbclid=IwAR0ab_xd_WvvSQtyJEeStA8p8gZ9p4l-wFiY_KQjzScxNY1GCN31ParyNu0

これによってパチンコを含む複数業種がセーフティネット保障に加えられた。

そもそもパチンコ店がなかなか一斉休業できなかった理由について、制度アナリストの宇佐見典也氏は以下の三点に整理している。

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  • セーフティネット保証の対象外で、融資が受けにくく、つなぎ資金に不安がある
  • 他の店が休んでいる中、自分の店だけが営業すれば客が集中して繁盛する
  • そもそもパチンコ業界が長期不況で、閉店時期を模索している事業者は怖いものがなくなっている

セーフティネット保証とは、経営の安定に支障をきたしている中小企業が市町村の認定を受けることで信用保証協会から通常時の枠とは別枠で2.8億円まで保証をしてもらえる制度で、今回の感染症によってほとんどの業種がこの対象になる中、パチンコ業などの風営法業種は指定の対象外になっていた。

これはパチンコ業界に言わせれば「我々は職業差別を受けている。今回休業要請に応じられないのはその問題が背景にある」ということになるわけです…(以下略)

『宇佐見典也のブログ』http://usami-noriya.blog.jp/archives/40500318.html

このタイミングでの政府によるセーフティネット保障拡大方針提示は、休業による資金繰りに必要な融資を可能とする代わりに、営業休止を促すものだろう。その結果として28日に都内の営業店舗が0になったのだから、この永田町・霞が関総動員で展開した作戦は功を奏したともいえる。

パチンコは法律上「賭博」ではない

この問題に伴って、パチンコ業界そのものが抱える問題についても、各界で盛んに議論されるようになった。

簡単に説明していく。

そもそも我が国では、刑法185条に「賭博罪」の規定があり、当事者双方がリスクを負って賭博をすることが禁じられている。当然パチンコ業はこれに当たらないという法解釈がされているわけで、その営業は「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(通称:風営法)」によって、業種が分類されたうえで個別に規制されている。パチンコ業はこのうち「風俗第四号営業」という分類をされていて、国家公安委員会規則では賞品の提供方法まで定められており、現在の業態を実質容認する法整備がなされている。

https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=323AC0000000122&openerCode=1

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通常の賭博というのは、賭け事の商品は当然現金だ。だがパチンコは「特殊景品」と呼ばれる賞品を提供し、これを換金する、というシステムを利用して「遊技業」という建前を守っている。いわゆる「三店方式」と呼ばれるものだ。

遊技業である以上、賭博として取り締まれないうえ、その他の風俗業と共に緊急事態における対応が不十分となってしまう。

また近年、パチンコスロット慣れしたコアユーザーのいわゆる「パチプロ」と呼ばれる人が減少し、「ただ打っている人」が増えたことも営業継続をする店舗が存在する理由だ、という見方もある。つまり、当たりを狙って遊技する人が減ったことにより、店から見れば「カモ」ととられる人が増えた、というのである。

今、パチンコ店に行くのはギャンブル弱者の“カモ”ばかり…元パチプロが明かす勝てない理由

https://biz-journal.jp/2020/04/post_154299.html

このような特殊な事情を持つ業種だからこそ、今回のように法改正を必要としない「業界との駆け引き」的な対応では、一時的な休業はできても、中長期的な観点での解決は厳しい。

また西村大臣の発言も解釈を拡大すれば、「自粛要請に応じない業種への罰則」ということにもなりかねない。いずれにしても、最初の法改正時の付帯決議と矛盾する可能性が出ることは確実だ。

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現在の状況下で最も重要なことは「感染拡大を食い止める」ということである。そのためには、各業種の「アフターコロナ」不安払しょくをし、少しでも休業による損失を小さくしなければならない。パチンコ規制はもちろん重要な議論ではあるが、なにが主眼なのかを意識した柔軟な法整備が必要になる。

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