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No cult! 「減税カルト」にご用心 —ゲストライター記事

※この記事は、ゲストライターによる寄稿記事です。寄稿の応募はコチラから誰でも可能です。

皆さんこんにちは!自称ラーメンジャーナリストのコミヤマ タケシ(@ramenkomiyama)です。ニンニク入れますか?

コロナ禍で、リモートワークやリモート授業が増えている方が多いと思います。私もリモートワークが始まってもう1年以上が経過し、体重が順調に増え続けています。

そんな中、昨今、リモートで孤立化した人たちを、SNSを使い言葉巧みに誘い出す「カルト」が流行しています。

【日経新聞】2021年3月20日 孤立する大学生、忍び寄るカルト コロナ下の勧誘、SNSに軸足

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO70167500Z10C21A3CR8000/

あなたはカルトに勧誘されていませんか?身の回りの人がカルトにハマってしまっていませんか?

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最近コミヤマは、Twitterで、「減税カルト」と呼ばれる人たちが、議員や識者、はたまた一般人に攻撃をしているのをよく見かけます。

今日は、カルトに騙されないように、今日はネットで時々見かける「減税カルト」について解説したいと思います。

※コミヤマは増税派ではありません。

※「減税カルト」は「減税派」とは異なります。

「減税カルト」とは

カルト【cult】 の解説

宗教的崇拝。転じて、ある集団が示す熱烈な支持。

※goo国語辞典より引用

つまり「減税カルト」とは、減税に対して宗教的崇拝をしている人または集団を指しています。

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おそらく彼らの運動手法は、アメリカのいわゆる『ティー・パーティー運動』を模倣していると思われます。実際はその比べ物にならない極めて少数のノイジーマイノリティの集まったサークルみたいなもの。

そのくせ自分たちこそが世界の真理であるように振る舞うところがカルト的な異常性を感じさせています

Twitterで突然「あなたは減税に賛成ですか?」と聞かれたことはありませんか?(これを「減税圧力」と呼ぶようです)

減税カルトたちの特徴として、彼らは、「日本の失われた30年(長期停滞)の原因は、増税と規制強化によるものだ」というデタラメを吹き込まれて、信じきってしまっている人が多い印象です。

彼らはただただ増税と規制強化が憎くて憎くてしょうがないのです。減税と規制緩和というメシアが自分たちを救ってくれるとでも思ってるんでしょうか。

確かにデフレ下での減税や潜在成長率を高める規制緩和が必要なのは当たり前ですが、デフレの原因を増税と規制強化だというのは、まるで骨折している人に対して、骨折を治療せずに食生活の改善を勧めるのと同じだと思います。

アメリカ共和党保守派は、減税と規制緩和によって経済は急成長するという空想的な考えを吹聴したために、専門家の間では「呪術(ブードゥー)経済学」と批判されていたのも有名な話です。まさに「カルト」っていうことですね。

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「失われた30年」に対して、エコノミストの村上尚己氏はインターネット番組で以下のように述べています。

村上尚己氏「(日本だけ名目GDPが拡大しないのは)デフレに対して無策だった政策当局者と政治家とそれを理解しなかった国民の責任だという風に思いますけど」

2021年4月12日

まさにその通り、「自業自得」ってやつですね。

経済学者の田中秀臣氏は「知的詐欺」と表現していましたが、減税カルトもまた「詐欺被害者」なのかもしれません。

「減税カルト」の行き過ぎた言論

減税カルトは、「減税圧力」を称して政治家や識者、一般人に攻撃をしかけています。

あるリフレ派(主流派)の経済学者であり大学教授であるT氏は、減税カルトを批判したがために、減税カルトが支持するインフルエンサーに、「御用学者」とレッテルを貼られ、「人生かけてFラン教授」などと、人生を否定する発言をされています。人の人生を否定し、その人が所属する大学を「Fラン」などと言っていいのでしょうか?レベルの低さはもちろん、カルトに反対した学生を子供扱いして馬鹿にしたり、まさに権威主義そのものですね(笑)本当にリバタリアンなのかしら?(笑)

コミヤマは、彼らの過激なやり方は、行き過ぎていると考えます。

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純粋に減税を望む人までもが彼らの同類だと思われてしまうのは、正直言って大変迷惑です。財政出動と言うとMMTerだと誤解されることと全く同じ状態になるでしょう。

あなたも減税カルトに絡まれたことはありませんか?

無論コミヤマもいたるところで彼らに悪口を言われています。コミヤマじゃなくてゴミヤマって呼ばれたり、豚のイラストにコミヤマの発言を書かれたり等、幼稚なやり方が目立ちます。

まあ、実際ゴミだしラーメンばっかり食べて豚なんでいいですけど(笑)

彼らにイジメられてもビビらないように、彼ら減税カルトが他人を攻撃するときによく使う言葉を覚えておきましょう。

減税カルト「この社会主義者が!!」

ノーベル賞を取った経済学者であるポール・クルーグマンは、『ゾンビとの論争:経済学、政治、よりよい未来のための戦い』(早川書房、2020年)の中で、減税と規制緩和のみを求めるアメリカ共和党保守派が支持する「経済学者」を「単なるプロパガンダ屋」、「詐欺師」、「ペテン師」、「インチキ野郎ども」と批判し、さらに以下のように指摘しています。

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「もちろん今日、大邸宅や召使いの群れやヨットは復活し、その規模は空前だーーそしてその富豪たちのスタイルを少しでも傷つけそうな政策を匂わせでもしたら、「社会主義」と糾弾される。」

まさにそっくりそのまま「減税カルト」と同じですね。

「減税カルト」の嘘

減税カルトは、減税をすれば歳入(税収)が減るので、政府は余分なものを削減せざるを得ない、その結果「小さな政府」が実現できると主張しています。

この「減税による財政赤字の創出が歳出削減の圧力を生むだろう」という考えは、一般的に、『野獣飢餓化仮説(Starve the Beast Hypothesis)』と呼ばれています。

さて、この仮説、本当なのでしょうか?「減税カルト」が彼らの運動の前提としている最も重要な部分であるかのように思えます。

●実際にアメリカではどうだったか

既にアメリカでは、レーガンや、パパブッシュ、子ブッシュの時代などに減税が行われています。

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その結果、小さな政府(歳出削減)は実現できたのでしょうか?

全米経済研究所のレポート『税制は野獣を飢えさせるか?税制の変更が政府支出に与える影響(DO TAX CUTS STARVE THE BEAST?THE EFFECT OF TAX CHANGES ON GOVERNMENT SPENDING)』では、実際にアメリカで行われた減税によって歳出削減が実現したかが検証されています。

以下に、本レポートの要旨(ABSTRUCT)を引用します。

減税によって政府支出が抑制されるという仮説は支持されず、むしろ減税によって支出が増加する可能性があることが点推定で示された。また、減税が政府予算に与える主な効果は、その後に立法される増税を誘発することであることも示された。

Christina D. Romer, David H. Romer ”DO TAX CUTS STARVE THE BEAST?THE EFFECT OF TAX CHANGES ON GOVERNMENT SPENDING”(University of California, Berkeley Revised, May 2009)

つまり、「減税をすれば小さな政府が実現する」という減税カルトの主張は嘘であると歴史が証明しています。

レーガン、パパブッシュ、子ブッシュの時代では、減税が行われましたが、いずれの時代においても、減税によって歳出が減るどころか、歳出はさらに増えてしまっているのが現実です。

また、その他多くの識者によって減税カルトの主張が誤っていることが指摘されています。

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●Bruce Bartlett, “Tax Cuts Don`t Starve the Beast’”(New York Times, April 4, 2006)

https://bartlett.blogs.nytimes.com/2006/04/04/tax-cuts-dont-starve-the-beast/

●Greg Mankiw, “Starve the Beast”(Greg Mankiw’s Blog, June 16, 2008)

http://gregmankiw.blogspot.com/2008/06/starve-beast.html

また、この野獣飢餓化仮説否定論を政局的な観点等から否定する主張がアメリカのリバタリアン系のシンクタンクなどからなされていることも承知してますが、残念ながら、減税をしても歳出削減ができず、財政赤字がもたらされ増税、という結果に至った事実は変えられません。

編集部注:ポール・クルーグマン

※画像は、Prolineserver (talk) – 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, による

ポール・クルーグマンは、『ゾンビとの論争:経済学、政治、よりよい未来のための戦い』(早川書房、2020年)の中で、以下のように説明しています。

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「共和党は野党になると財政赤字大反対を展開し、自分が減税出来る立場になったらそうした懸念をかなぐり捨てて、赤字を好きなだけ増やす。」

「2011年にカルフォルニア州とカンザス州は正反対の方向に動いた。カルフォルニア州は…増税し、カンザス州は…減税した。…カリフォルニア州では何も問題が起こらず、カンザス州は財政危機に陥り、共和党議員たちは多くの減税を取り消す羽目になった。」

減税カルトのデタラメはこればかりではありません。

2021年兵庫県知事選に出馬し「減税で兵庫を変える」と訴えている中川暢三氏が減税カルトたちに「彼こそが本物の減税派だ!」と崇められてます。

彼は「減税によって税収を増やす」と主張。

この「減税で経済活性化して税収増」という命題を、一般的に『ラッファー曲線命題』と呼びます。

ここで矛盾に気がついた方も少なくないと思います。減税によって税収を減らして、小さな政府を実現したい(野獣飢餓化仮説)のか、減税によって税収を増やしたい(ラッファー曲線命題)のか、一体どっちなんですか?

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思考停止しているカルトの人たちは、こんなことにも気がつけず「本物の減税派!」と興奮しているようですが、ギャグかと思いました(笑)

せいぜい中川候補を当選させでもしてくれれば認める気持ちにもなりますが、ノイジーマイノリティのギャグ集団なので難しいでしょう。

他にも減税カルトは以下のような主張をしているのが散見されます。

  • コロナ禍でも政府は何もするな。
  • 構造改革(規制緩和)が進まなかったのは金融政策でゾンビ企業が生き残ったからだ。
  • アベノミクス(金融政策)で雇用が伸びたのではなく、雇用が伸びたのは福祉系だけなので、雇用増は構造要因だ。

全くもってデタラメ

「減税」という甘いワードに釣られて異世界に連れて行かれてしまわぬように気をつけましょう。

そういえば、日本銀行の速水総裁(当時)は、ゼロ金利政策を否定するための説明として、2000年4月12日の記者会見で以下の主張をしていました。

日銀速水総裁記者会見要旨

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「(ゼロ金利政策が)…無理してリスクを伴う構造改革などに手を出さないでも何とか経営していけるんだという安心感から、今最も必要とする構造改革などを先延ばししていくというようなことになりはしないであろうか」

2000年4月12日

まさに減税カルトが使う金融政策否定論(ゾンビ企業ガー)と全く同じですね。

誰のせいで日本が「失われた30年」から抜け出せなかったのかよく思い出してみましょう。

「減税カルト」のしわ寄せ

では、仮に、減税カルトの主張通り、減税による歳出削減(野獣飢餓化仮説)が実現したらどうなるでしょうか?

経済学者の田中秀臣氏が、インターネット番組に出演した際に、以下のように主張する場面がありました。

田中秀臣氏「任期付きの自衛官をめちゃめちゃ減らしちゃった。サポートするような既得権団体が無いから。防衛費を減らせって時はそこが1番の減らすターゲットになっちゃった。」 

2012年10月6日

つまり、しわ寄せを受け、歳出削減の対象になるのは、票とカネが無いところです。それによって現役世代が割りを食うのは間違いありません。

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また、米経済メディア「ブルームバーグ」​コラムニストのノア・スミスは、コラム『削減すれば政府は効率的になるか?(Does cutting government make it more efficient?)』の中で、以下のようにも指摘しています。

グローバー・ノーキスト的な人がやってきて政府を無差別に削減すると決定したとしよう。どのタイプの部局が仕分けられるだろうか。寄生虫じゃないことは確かだ。彼らは深く根付きすぎている。仕分けられるのは役立たずかやり手のどちらかだ。やり手よりも役立たずが遥かに多いのであれば問題なし。でも役立たずよりもやり手のほうが多い場合にこれは問題となる。そしてどの場合においても、政府の仕分けは最悪な寄生虫の割合を増やし、したがって彼らの政府内での相対的な権力も増大することになる。

●Noah Smiths, “Does cutting government make it more efficient?“(Noahpinion, February 10, 2014)

つまり、無差別に歳出削減をしたとしても、政府に深く根付いた「最悪な寄生虫」が減ることは無く、かつ、その政府内での相対的な権力を強めることになると指摘されています。

本当にその「減税圧力」は正しいのでしょうか?

それでいいんですか?

甚だ疑問です。

マインドコントロールの手法

どうして人は「減税カルト」にハマってしまうんでしょうか?

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減税にハマるまでは人の話をよく聞いて互いに意見を交換していたあの人が、カルト化してしまったのはなぜでしょうか?

岡田尊司(精神科医・医学博士)の著書『マインドコントロール』(文藝春秋、2006年)に興味深い記述がありました。

※以下デンサン男(@ankotobukit20)氏のツイートより引用

イスラエルの心理学者であるアリエル・メラリ氏は普通の人間がテロリストになる過程において共通するプロセスを「トンネル」に例えている。

トンネルは外部から遮断されている上に、入ったら出口まで光は無い。

そこには「外部の世界からの遮断」「視野を小さな一点に集中させる」という要素がある。

即ち外部から遮断された小さな世界で1つの目的に向けて視野狭窄に陥る言う事。

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トンネルに入ったら小集団の排他的な関係がまず用意される。

そして外部からの情報等も遮断され、そこでの活動が全ての基準となっていく。

そして小さな集団を支配している価値観やルールに、いつの間にか支配される様になる。

そして小さな集団の仲間達の「思考と行動」が自身の意思決定に大きく左右される。

集団がトンネル効果(視野を狭め、他の選択肢を思考から潰していく効果)を発揮し、トンネルの中が世界の全て、一般常識の様に思い込む。

結果、自分達がトンネル(閉鎖的で狭い世界)の中に居ることすら気づかなくなる。

これ、どこかで見たことありませんか?

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どうして「減税カルト」が、ほぼ一切の議論をせず、あえて相手をすぐにブロックをするようにしているかも理解できたかと思います。

議論をすると論理破綻していることがバレてしまうからということもあると思いますが(笑)

減税圧力、その結果

減税カルトによる減税圧力によって、歳出削減(「小さな政府」)を実現できないことは、ここまでで説明しましたが、この減税圧力は、アメリカにおいて、財政赤字と増税を引き起こしただけではなく、ある大きな弊害をもたらしました。

エコノミストのエリオット・アイゼンバーグが自身のコラムで以下の通り指摘しています。

「その後数十年にわたり、この教義(サプライサイド経済学)は米国経済に大きなダメージを与え、税に関する意味のある議論をほとんど避けさせてしまいました。」

●Elliot Eisenberg, “MMT is Just More Voodoo Economics “(GraphsandLaughs, LLC, June 1, 2019)

つまり、全ての税に反対し、議論を封殺することで、税に関する有益な議論ができなかったという事態がもたされたわけです。

先日、日本維新の会が、政権構想である『日本大改革プラン』を発表しましたが、そのコンセンプトのひとつである「フロー課税(所得課税)からストック課税(資産課税)」という税制の改革に対して、思考停止で反対する減税カルトを見ていると、つくづくと有害だなと思うばかりです。

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維新の掲げる金融資産課税(現在はプランからは除外されました)って、年収1億円以上の超富裕層以外はネット減税なんですが、一体誰の味方してるかわかってるんですか?

おとな研究所の2021年6月20日掲載記事『徹底精査!日本大改革プランの実現可能性② ー維新版BIにおける金融資産課税の必要性を徹底議論!ー』に大変興味深い記述がありました。

「金融資産課税はとても重要です。今の日本の政治は、地方の有力者が自民党を通して自分の都合のいい規制を作るというもので、結果彼らは大きな資産を築きました。」

「(金融資産課税は)第三に自民党を支えてきた地方の豪族(有力者)の既得権益を打破し、不合理な格差を是正する為に必要な税制だと考えています。」

関連記事:徹底精査!日本大改革プランの実現可能性② ー維新版BIにおける金融資産課税の必要性を徹底議論!ー

カルトは「減税」という甘いワードで言葉巧みにあなたを騙そうと近づいてきます。

彼らは決して皆さん庶民の味方ではありません。

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皆さんは「減税カルト」を見ても近づかないようにしましょう。

以上、ラーメンジャーナリスト コミヤマ タケシによる寄稿でした。長文駄文失礼しました。

ライター:コミヤマ タケシ Twitter:@ramenkomiyama 自己紹介:会社員。

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